私の彼女

今日も12時間労働を終えた…。本当に疲れた。夜の帰り道,職場から早足で歩いて彼女の待つ私の部屋へと向かう。はやく帰らねば。


私は毎日過酷な労働をしているがそれもこれも愛する彼女の為。

身を粉にして働いてお金を彼女の為だけに稼ぎ彼女へ差し出すのだ。

全ては彼女のために。それこそが私の愛の形だ。

社畜であり不器用な私にできる愛の示し方。


だからどうか…。私を見捨てないでくれ…。

私の愛する人よ。


今日もまた彼女の為に何ができるかを考えつつアパートの階段を登る。

あれを買ってあげたら喜ぶだろうかこうしてあげたら彼女は微笑んでくれるだろうか…。喜ぶ彼女を思い浮かべるだけでいつも固い私の口角は自然と上がる。

階段は長いようで短くも感じる。


そうしてようやく部屋へ着く。302号室だ。

服を整えつつ息を落ち着かせて部屋のドアを開く。


「ただいま。」


私は一言声をかけて部屋へ入っていく。

彼女に喜んで貰うために誂えた部屋だ。部屋の奥いつもの場所ソファーに彼女が静かに座っている。


彼女の美しい顔を見つつ彼女の前に その白く美しい手に口づけをする。

しかし彼女の表情は固く変わらない。私は薄く微笑みつつスーツから着替える。


私が服を脱いでる間も彼女は微動だにしない。愛しい彼女の為にアロマキャンドルや部屋の空調を着ける。


部屋の電気もロマンチックなものにしてある。そうして彼女の表情を覗くが何一つ変わらない彼女の美しい顔がそこにあった。


私の愛しい彼女は体温を持たない。

私の愛する彼女は永遠に変化することのない完璧な女性だ。

私が愛を捧げる彼女は普通の人間と違う。究極美しい女性だ。


そう…私の愛してやまない彼女は人形なのだ…。


 

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