殺人鬼は微笑む
こた神さま
第一章 私の恋人は殺人鬼
私の名前は、真優(まゆ)。
24歳OL。
私には、学生時代から付き合っている優人(ゆうと)という恋人がいる。
優人は、名前の通り優しくて、背も高くて、とても良い人だ。
学生時代に目立たなかった私と付き合っているのが不思議なぐらい、モテそうなタイプである。
私の勤めている会社は、残業が多い。
その分、給料やボーナスがいいから、我慢しているけれど。
今日も残業で帰りが遅くなった。
夜の10時過ぎ、道を歩く人の姿も少ない。
大通りでは、車が走っていたり、街灯が明るくともっているので、それほどでもないけれど、大通りの脇道を入った裏通りは、街灯も少なく、人もいない。
昼間でも、人通りの少ない寂しい場所だ。
そうと分かってはいるけれど、私の住むマンションは、この裏通りを通った方が早い。
少しでも早く帰りたかった私は、裏通りに向かう道を進んだ。
街灯も薄暗くチカチカしていて、こんな時間に、この道を歩く人もいない。
しばらく歩くと、公園があるのだが、その公園がまた怖いのだ。
全体的に暗いというのもあるが実は、この公園では、殺人事件が3件も起こっている。
被害者は、みんな女性。
次第に公園へと近付き、私の歩みが早くなる。
周りをキョロキョロとしながら早足で歩いていると、公園の入口から人影が飛び出してきた。
私は、思わず大きな声を上げて、顔を隠した。
「真優?」
名前を呼ばれ、その声に、私はソッと、その相手を見た。
薄暗い街灯の下、立っていたのは優人だった。
「優人……どうして、ここに?」
私が尋ねると、優人は優しく微笑み、こう言った。
「真優のマンションに行ったんだけど、まだ帰ってなかったから、残業かな?と思って、ここで待ってたんだ。」
「そう……なの?」
まだ震えの止まらない私の肩に、優しく手を回し、優人は、にっこりと笑った。
「ごめんね、驚かせちゃって。マンションまで送るよ。」
私も、軽く笑って頷いた。
次の日の朝。テレビを観ていたら、ニュースが流れ、昨夜、あの公園で若い女性が殺されていたとあった。
女性の死亡推定時刻は、夜の10時半頃。
ちょうど、私が公園の近くに来た頃だ。
私は、ゾクッとなり、しばらく呆然とテレビを観ていた。
部屋のインターフォンが鳴り、私はビクッと身体を震わせる。
モニターのスイッチを入れると、そこには優人の姿があった。
玄関に向かい、ドアを開けると、優人がにっこりと微笑み立っていた。
「今日は、仕事、休みでしょ?俺も休みなんだ。何処かへ出掛けない?」
優しく微笑む優人の手を掴み、私は中に入れると鍵を閉め、奥の部屋へ優人を引っ張った。
「どうしたの?」
驚いた顔で見つめる優人に、私は、ニュースの事を話した。
「ちょうど、私達があの公園にいた時間よ。怖い……。」
私の話を聞いて、優人は、いつもと変わらない微笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ。真優は、殺されたりしないよ。」
「えっ……?何で?」
眉を寄せ尋ねる私に、優人は、微笑みながら、こう言った。
「だって真優は…………最後のお楽しみだから。」
ー第一章 私の恋人は殺人鬼【完】ー
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