第5話   ある朝のひとコマ

少しだけ戻ります。


*


寒い・・・

雨はいつの間にか白い物へと変わり、僕を覆い隠してゆく。



通行人が気になったのか、僕に声をかける。


ありがとうございます。

お陰で凍死せずに済みました。


濡れた衣服はカチカチになって、ほんとよく死ななかったと思う。

流石にこのままでは生命の危機なので、一旦帰宅した。


「おかえり」


下の姉が僕の格好を見てぽかんと口を開けて・・・「何があったの」と呟いた。

「何も無いです」


何も無い

僕には何も


*


姉に浴槽に連行され、湯船に沈められる。

しばらくしたら姉が入ってきた。


「あのう・・・入浴中ですよ」


「緊急事態よ」

はぁ・・・そうなんですか


反論する暇もなく、体を洗われて行く。


「何があったのか聞いて欲しい?」


そう姉が言ったので、


「あと半月ほどお待ちください」と答えた。


それまでには何とかなるでしょう。


*


今日はクリスマス。

授業も今日まで。


「休んじゃいなよ」というお姉様に、


「お昼になったら行きますよ」と答えた。


スマホには不思議な事に、彼女からの連絡が来てた。


どうして今更僕に構うのでしょうか。

僕には理解出来なかった。


*


「行ってきます」


「何かあったらすぐ連絡するのよ」


了解です。

行かなくちゃ

ぼくの場所へ


そして、勇気を出して彼女を追い詰めなくちゃ。


『僕の事は遊びだったの』って。




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