彼女の誕生日に浮気されました。でも強く生きなきゃ
水都suito5656
第1話 突然のNTR
今日は僕の彼女の18歳の誕生日。
「ねえみんな聞いて! 今日は僕のとっても可愛い恋人の生まれた日なんだよ!」
ぐふふ・・・いけない。
口元が緩んでおかしな笑い声が出そうになる。
自重自重っと。
誕生日のプレゼントは、彼女によく似合うイヤリング。それにワンピースに、コート。
清楚な彼女にはぴったりだ。
結構高い買い物だったけど、来年は大学生になるんだ。それに見合うものだと当然値が張る。
「悠のセンスって、ちょっと変よね。まあ、あたしは好きだよ」
前にプレゼントしたのは、緑のスニーカー。
ブランド品というわけじゃないけど、彼女の足型を取って特注した一品の品だ。
「うん!この感じだよ。ありがとう、大事に飾っとくね!」
「いや使って!履かないで神棚に飾るのはやめて!」
あれ以来、プレゼントはリクエストから選んでもらうことにしている。
彼女は可愛い物がとにかく大好きだ。
緑色のスニーカーのどこに惹かれてのかわからない。
僕はただ彼女の笑顔が見たかった。
・・・まあ、結果変な物が多かったけど。
そんな、プレゼント満載の今回の誕生日会。
多少地味かもしれなかったけど、リクエスト通り可愛いイヤリングも用意した。
追加でクリスマスプレゼントに、シャツワンピとコートも。
彼女が驚く顔を想像しながら、僕は休み無く働き続けた。
「ううっ・・やっぱりぼくも参加したかった」
そろそろパーティーが始まる時刻になる。
*
誕生日兼クリスマスパーティー。
クラスの仲の良い子たちがお祝いしてくれると、彼女は楽しそうに話していた、
この時の彼女は、年齢よりもだいぶ幼く見えた。
もちろんそういう所が大好き
高3の彼女だけど、こんな時はまるで同級生のように感じた。
そういえば店長さん、少しは具合良くなったかな。
過労で倒れたのが昨夜で、そのため急遽僕が出勤することにしたんだけど。
*
「お店なら休んでも良いんだよ」
店長はそう言ってくれたけど。
「出ますよ。みんなこの日を待っているんです!」
僕もそのひとりだ。だから彼らの気持ちは僕の気持ちだ。
何としても、お店を開けたかった。
「彼女だって理由を話せば、きっと判ってくれると思います。だから開けましょう」
「わかった。それじゃあ頼むよ」
「はい!任せて下さい!」
僕のバイトは10時まで。だから急げば彼女の誕生会に間にあう予定だった。
つくづく僕は考えが甘いと思う。
今朝その事を彼女に伝えたら、笑顔から一変無表情になった。
「そう。わかった」
「11時前頃には行けると思うから」
「良いよ無理しないでも」
怒ってる。当然だ。誕生日なんだ。
どうしよう。今から電話してやっぱり休みますって連絡するか。
そんな事出来るはずないけど。
「遅くなってもかならず行くから!」
遠ざかる彼女に向かって叫んだけど、振り返りもしなかった。
明日会おうって伝えよう
そして気持ちをしっかりと伝えよう
*
バイトの休憩中、僕は何度も彼女に連絡した。
パーティーが楽しいのか、彼女に連絡はつかなかった。
しょうがないので通話した。・・・出ない・・あ
10コールでようやく繋がった。
「なに? 今から来てくれるの?違うよね。・・・うん、もういいよ。君ってあたしよりバイトの方が大事なんだ」
「ごめん」
「・・じゃあ、もう切るね」
不安な気持ちでバイト続けた。
たくさんのカップルを見る度に、彼女のことを思い出した。
それでも僕は頑張った。
そして10時になり、ようやくバイトが終了した。
*
「お疲れさまでした!」
そう叫び、お店を後にした。
同僚たちが頑張れーっと応援してくれる。
僕は電車を乗り継ぎ、彼女の住む街へ向かう。
ここから1時間以上かかるけど、僕はどうしても今日中に会いたかった。
会って伝えたい。
優先しなくてごめんって
大好きだって。
*
「嘘だろ」僕は車内アナウンスを聞いて、愕然とした。
大雨のため最寄り駅で待機。
「電車が遅延なんて・・もう間に合わない」
1時間後にようやく雨は峠を過ぎたけど、
電車はまだ動く気配はなかった。
僕はぼんやりとスマホに目を落とす。
『11時30分かぁ・・・』
約束した時間はとっくに過ぎていた。
*
電車が駅に到着した。
雨で滑る中、僕はひたすら走った。
息が苦しい、足がもつれそうになる。
「それでも走らなきゃ!謝ろう!たくさん」
一方、頭の中は冷静だった。
まだそんな甘いことを考えているのか
あれだけ怒らせたんだ、今頃男友達と遊びに行ってるって
「違う!彼女はそんな事しない!」
不安が嫌な想像を掻き立てる。
息が苦しい。足が重い。
不安をかき消すように、僕はただ走り続けた。
*
12時10分。
ようやく彼女の住むマンションに到着した。
「なんとか間に合った・・いやアウトか」日付はとっくに変わってた。
僕は息を整えながら、彼女の部屋に向かう。
鞄の中を開けて、プレゼントを確認。よし!
そうしてインターホンを押そうと伸ばした手が止まる。
もう寝てるかも。
ひょっとしたら、友達と遊びに出かけ留守かもしれない。
ドアの前で悩んでたら、さっき開いた鞄の中から赤いリボンが見えた。
「・・・そういえばこれがあったんだ」
赤いリボンの先に彼女の部屋の合鍵が結ばれていた。
*
何ヶ月前だろう
「あたしさ寝起きものすごく悪いの!インターフォン連打したくらいじゃ絶対起きないよ」
そんなにすごいのか。
「だからね、これ持ってて!」
そうして手渡されたのが、この合鍵だった。
結局一度も使う機会もなく、いつか返そうと思ってた。
*
ううっ、緊張してきた。
インターフォンは鳴らさない。
そっとプレゼントだけ置いてすぐに帰る。
よし、それくらいなら許されるだろう。
そしてドアを開けた。
室内は明るかった。見える範囲で彼女はいない。
この時気がつけばよかった。玄関には彼女以外の靴があったということに。
緊張でそれどころじゃなかった。
そっと靴箱の上にプレゼントを置いた。
後は帰るだけだ。
そう思って安心した時気がついた。
あれ彼女の声が聞こえる。
右奥に彼女の寝室へとつながるドアがあって、そこが少しだけ開いていた。
だから聞こえたんだ・・・でもこの声ってあれだよね
ひとりでやっているときの声だ。
僕は彼女の尊厳を守るため、ここは聞かなかった事にした。
だからすぐ帰るつもりだった。
でもその時小さな違和感を感じた。
別の声が聞こえた。
あの部屋の中に、彼女以外の別の誰かいるということ
僕の動悸は激しくなる。
そして本能が警告する。
ここにいては駄目だ。早く立ち去れと
でも僕は、引き寄せられるようにドアに近づく。
誘蛾灯に引き寄せられる蛾のように
自ら死に近づいた
あ・・
そして見た。
彼女が誰かとベットにいた。
さっきと同じ声を上げて
どうして・・・
*
気がついたらマンションの外にいた。
手には赤いリボンが握られていた。
プレゼント渡せてよかった。
うん、目的は達成したんだ。何も問題はない。
一生懸命バイトして買ったんだ。きっと喜んでくれるよね。
でも、もう二度と会えないかな。
*
「・・・おしりが冷たい」
マンション近くの公園のベンチに座っていた。
さっきの大雨で濡れて、気持ち悪い。
単純なことだ。
彼女の誕生日にまでバイトをして、その結果僕は振られたんだ。
衝撃的だったけど、どこかで納得するしかなかった。
最初から釣り合ってなかった。
彼女は他校でも知られるほどの美少女で、有名私大の推薦も決まってる。
僕はまだ15歳。誕生日は来年の3月まで待たねばならない。
2個も年上の彼女からすれば、僕は子供だったんだ。
『僕なりに一生懸命頑張たんだけどなぁ』
最初から間違ってたんだ。
僕は彼女が時折見せる退屈そうな表情に胸が痛くなり、
いつか飽きて捨てられる事に怯えていた。
こんなの全然彼氏じゃない
来なければ知ることもなかった。
今更それは出来ない。
僕は来てしまったのだ。
プレゼントを置いてきてしまったのだから。
*
寒いなあ。
夜中の公園はとても静かだった。
「バイトしなかったら、彼女は浮気しなかったのかな」
そんな事ばかり考えていた。
覚悟は出来ていたのに、涙が止まらない。
*
結局、その日は公園で夜を明かした。
ベンチで丸まって眠った。
親には友達の家に泊まったと連絡だけはしておいた。
*
「もう朝・・・学校いかないと」
スマホを見ると、彼女からの連絡が数件入ってた。
電源を落として鞄にしまう。
身体が痛いな
*
一度帰宅して、お昼にようやく登校できた。
「どうしたの。具合悪そうだけど」
「はい、体調不良なんです」
遅い登校だったけど、普段から教師から信頼されている僕は、軽く注意されるだけで済んだ。真面目にやってきてよかった。
「じゃあ席について」
「はい・・うっ!」
「きゃあああああああ!」
担任の側を歩いた時。
僕は強烈な吐き気に襲われてしまい、思いっきり彼女に向かって吐いた。
「ちょっと、やめてよおお」
先生のお気に入りの淡い色のスーツは、僕が吐いたものをまともに浴び、不思議な模様を描いた。
「・・・すみません、先生の大切なスーツが」
「ううん、いいのよ。生徒のことが大事なんだから」
そう言いながらも、先生は涙を流し続けた。
それどころか、掃除までしてくれた。
・・・先生ほんといい人。
*
僕はその後も吐きまくり、とうとう先生は切れた。
「もう、もういいから保健室行って寝てなさい!」
「すみません。行ってきます」
先生が一緒に行こうかと言われたので、僕は丁寧に断った。
先生やっぱりいい人。
*
保健室に着くと、僕はあっさり意識を手放した。
そして深い眠りにつく。
そういえば、今日はまだ彼女に会ってない。
いつもは僕が彼女の教室に行って、そこで挨拶していたんだ。
今日は行けなかったな
ひどい裏切りをされているのに、彼女の事が気になるのは何でだろう。
僕の生活の一部になっていたから?
わからない
彼女の声が聞きたいのに、
二度と聞きたくなかった。
*
誰だろう
誰かが僕の頭を撫でている。
その手は何度も僕の頭を撫でる。
まるで大切な物のように
優しく そっと撫で続けた。
・・・忘れて眠りなさい
そんな声が聞こえた気がした
*
「ふあああ・・良く寝た」
ようやく目が覚めた。
何だか幸せな夢を見ていた。
ぼんやりしていたら声をかけられた。
「どうやら治ったようだね」
「うわ最悪!」
僕がいるベットの隣から誰かが覗いていた。
何ニヤニヤしているんだよ。
それよりも 不意に気になった。
あれこの声
何となくだけど
彼女の部屋で聞いた声に似ている。
「そんなに見つめたら照れるじゃない」
いや、そんな玉じゃないだろ。
微笑んで僕を見つめる。
外見だけなら完璧な王子様。
ただ保健室のベットに寝てるだけで絵になった。
でも僕は決して信用しない。
何度も好きな人を取られているから。
今回もそうなのかもしれない。
「なあ、本気で彼女の事が好きなの?」
「うん、女の子は誰でも好きだよ!」
やっぱりそうか。
僕は今までに3回彼女を奪われている。
最初は初恋の人
次が中学の時、
そして高校入ってすぐ。
いい加減頭にくる。
「僕に恨みでもあるの?」
「恨みか。無いといえば嘘かな」
うそ・・・本当に恨まれていたのか。
「それじゃあ教えてくれよ、何であんな事するのか」
僕は隣のベットに移ると、寝ていた奴に掴みかかる。
奴は慌てることもなく、シーツの中から手を伸ばし逆に僕の手を捉えた。
「おっと、失礼」
その瞬間、掛かっていたシーツがずれ全裸が現れた。
「なんで服着てないの!」
「着ていないほうが好きでしょ?」
「そうだけど違うんだよ!」
「今日はいつもよりいい声で鳴くね」
不意に耳元で囁かれたものだから鳥肌が立ち、思いっきり奴を殴ってしまう。
「いて、乱暴だね」
やばい、震えが止まらないよ。
こいつの事を怖いと思ったのは初めてだった。
「狙った子は逃がしたこはない」なにそれ、ほんと怖い。
怖いけどなにか言わないと。
反論しないといつまでも怖いままだ。
「でも付き合ってすぐ別れるよね。どうしてすぐ捨てるの」
こんな奴に説教なんて無意味なことだけど。
「捨ててないよ。みんな愛している」
「へ、へえそうなんだ」
駄目だ言葉が通じない!逃げなきゃ!
僕は素早くベットから飛び降り、保健室出口へ向かった。
「
話さなくても判る。
「僕たちは釣り合ってなかったんだ。諦めるしかないよ」
「彼女がそう言った?」
彼女は言わない。だって優しいから。
*
最初から判らなかった。
どうして僕を選んだのか。その理由が知りたかった。
どんな些細な事でも良いんだ。
「ああ、そうか」
僕は彼女の特別になりたかったんだ。
*
沈んだ気持ちで教室に戻ると、僕はまた吐いた。
「・・・もう・・何も出ない」
僕の声を聞いた先生が、慌てて保健室へと連れて行った。
僕は目で奴を探したけど、もういなかった。
『
何故かその言葉が重くのしかかった。
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