時の揺りかご 命の揺りかご②

りるる 達がメイド学校で一生懸命に授業に挑んでいた、その時間の外で


ひとりの少女が町の中を歩いていた。


その少女はピンク色のボーイッシュなショートヘアの髪を持ち、櫛を入れた様子も無くただ乱暴に流し、長く伸ばした前髪はその紅い目を隠す様に左側に流し片目を隠している。


少女のその隠された眼光も鋭く、吊り目がちで有るのも手伝って居てか、まるでナイフの様な狂気に満ちた鋭さを持っている。


その少女の瞳の左右の色が左側が赤、そして右側が濃いブルーとその色が異なっていた。

いわゆるオッドアイである。


着衣は、ゴシックロリータとパンクロック系の混ざった物を上体に引っ掛けているように着、腰から先の下には、沢山の鎖をブラ下げたデニム生地のタイトなダメージパンツと足には同じく黒のいかついスパイクの付いた革靴を履いていた。


その少女の名は アン・ジ 


だが、それは本当の名前ではない。


不明なのだ。



アン・ジのパッと見の姿は小柄で少女と言うよりは少年と言う印象だった。


町の通りは平日にしてはやや人が混んでいた。

アン・ジは両手をぶらぶらと遊ばせながら、やや猫背の身体をフラフラとした足取りで、通り過ぎる人の間を縫うように歩いていた。


と、その時に一人の通行人にその肩が打つかった。

それは男の商人で、男は透かさずその足を止めると明ら様な態度で


「おいそこの、お前!!」


アン・ジを睨み付けながら怒りを込めた声ぶつけた。


すると、アン・ジは足をとめ


「ウゼぇ……」


と面倒くさそうに男に返すと

それを聞いた男の怒りは更に増し


「貴様!、一体なんなんだその態度は!」


と声を上げながらツカツカと、アン・ジへと詰め寄り


「ちゃんと謝れよオイ!」


と怒りに任せてその細い肩を掴み上げた。


すると、アン・ジはその男に振り向く事無くボソッと


「ふざけやがって、このジジィが……」


呪怨を織り交ぜた言葉を吐き出した。


当然ながらそれは男の耳に届き


「貴様!、今、なんと言った?、ああ?」


激昂しそして力任せにアン・ジの身体を自分の方へと引き寄せた

また、コイツとは目を合わせてもいない、当然ながらその顔も見て居ない。

だから無理やりにでも振り向かせてやる。

だが、それは自身に取っての命取りになるとは、その男は知る由も無かった。

相手が悪かったのだ。


アン・ジがそこまで言われ黙っている筈が無かった。

まるで糸の切れた操り人形の様に前のめりに垂れさせていた頭をアン・ジは、ゆっくりと引き起こすしそして、気怠げな動きでゆっくりとその顔を男へと振り向けた。


その刹那だった、男が自らのミスジャッジに気が付いた。


『しまった!』


男は総毛だち、全身から血の気が引いて行く音を聞きながら

飛んでも無い者を相手にし、命のカウントダウンがなされたと知ったのはその時だった


人に取って物事の判断とは時には長くそして無慈悲な迄に短く、この商人の男の場合、はその後者であり、どうすべきかの考慮時間は僅か数秒の単位しか与えられてはいな無かった。それは、けもの族であろうが、エルフ族であろうが、人間であろうが、それが人としの限界であり僅か数秒では到底その訪れる危機など逃れ様が無かった。


それが出来るとしたら、それは神か悪魔の人知の及ばぬ力と運が必要であった。


その娘は恐ろしい形相で自分を睨み返していた。

しかも、その娘だと思っていた、者のその額には魔族の証である、金色に光る悪魔の紋章が輝いていた。


アン・ジは男に向かって唸った


「ウゼぇんだよ、このクソジジィが良いからテめぇはシンでろや!!」


と、そしてそれは同時に男に取ってのデスボイスともなった。


瞬時にして男の心臓はその動きを止めた

そう悪魔の呪いを受けたのだ。


男はそのままパタリと路上の上に倒れ

その身を横たえた。


足を止めやり取りを観ていた群衆達は


「いやぁ!」

「うわぁ!」


等の悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らす様にアン・ジから少しでも離れよう。その一心から千々に乱れ逃げて行った。


そんな人間の慌てふためく姿を観

そして、それをあざ笑いながら


「たく、人間てぇのは……ダリぃん、だよな……」


と、吐き捨てた。




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