第17話
「うーん……。厄介な先輩を持つと大変だよね……」
悩んでいると、自然と独り言が出てしまう。
僕は、学校では相変わらず一人で過ごすことが多い。
アズール寮の一年生と少し仲良くなれたと思ったけれども。
学校の中では、まだひとりぼっちだ。
そんな僕のつぶやきに、どこからか相槌が飛んできた。
「そうですよねー」
声の方を向くと、見慣れない子が立っていた。
緑色の服を着ているから、ヴェール寮だ。
「うちの先輩たちも厄介なんですよ。なんだか野蛮なんですよね」
「そうだね。先輩は選べないってやつだよね……」
僕も選べなかったけども。
けど、普通の寮に入れてたら、そんなに問題は無いと思うんだけどなぁ。
――ガンッ!!
――ガラガラ!!
教室のドアが乱暴に開けられた。
そして、怒声が飛んできた。
「オラーッ! ヴェール寮の一年、集合!」
いつの時代だよ。
そんな入り方してくる奴なんているんだな。
「はぁ……、あれが僕のバディの先輩なんだ……」
肩を落として、振り返る眼鏡君。
「今行きますー」
なかなか問題がある寮っていうのもあるんだな。
ヴェール寮か。
校庭の方から、草原の方向が見える。
市街地を離れた学校は、周りを過酷な環境が囲んでいる。
僕の先輩がいる森の中。
あの奥には、広大な地下ダンジョンも広がっているっていうし。
だから、ジェネレラルゴブリンなんていうのも出てくるんだよな。
一方で、海も広がっている。
それは、昨日行ったアズール寮の付近。
海での戦闘は危険が多いからと、初心者レベルのゴブリンなんかが出てくる森まで来ていたのだろう。
草原も広がっている。
ヴェール寮の所だ。
見晴らしが良い分、地上のモンスターは少ない。
空のモンスターが多いみたいだ。
空に、小型の竜であるワイバーンの群れがいる。
その下には、ヴェール寮の面々がいる。
「あれのために呼び出しがあったのか。ちょうどお手頃なモンスターっぽいし」
窓から外を見ると、校庭に集まっている生徒たちがモンスターを倒している。
ファイヤーボールだ。
ワイバーンの身体を燃やしていく。
一年生にとっては初級魔法っていう感じだな。
それで倒せてしまう。
僕の出る幕でもないな。
遅れて、ヴェール寮が出て来た。
そして、魔法を唱えだしたようだった。
おぉー。入学式で見た重力の魔法だ。
ワイバーンに重力をかけて、地面へ落としている。
こういう時は、ファイヤーボールで追いかけまわすよりも、重力で止めるのが良いのかもな。
戦闘において、ルージュ寮よりも、ヴェール寮が役立つなんてことがあるんだな。
これはこれで、勉強になるな。
しばらく見ていると、少し大きいワイバーンが出て来た。
大きさこそそこまで変わらないが、スピードが全然違う。
これは、ファイヤーボールじゃ倒せないな。
全弾よけられている。
さっきの眼鏡君も校庭に出て来たみたいだ。
ワイバーンを地面に落としている。
やるじゃん、あいつも。
先輩の方が、魔法は微妙だな。
学年とかじゃないんだな。
だけど、大きなワイバーンは、どうにもならないか。
動きを遅くするだけ。
ファイヤーボールが当たっても、全然だ。
先輩の方が、ビビッてしまって腰を抜かしている、
はぁ……。
やっぱり僕が行ってみよう。
窓を開けて、飛び降りる。
重力魔法は、僕も使えるからね。
ゆっくりと浮いて、校庭へと降りる。
眼鏡君は僕に気付いたようだった。
「あ、君は……」
「助けに来たよ」
ワイバーンたちが空の上で吠えているようだ、
数は多いけれども、全ワイバーンに重力をかければ良いだけだもんな。
それっ!
上空を飛んでいたワイバンが、落ちてくる。
ちょうど、蚊取り線香の煙にあてられた蚊が落ちてくるみたいな感じだ。
――ドンッ!
――ドンッ!
良い感じだね。
――ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
――ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
何匹も何匹も。
「うぁぁぁぁ……、危ないぃぃー!」
隕石を降らす魔法みたいに、ワイバーンの雨が降ってくる。
投石があったかのようにグラウンドにボコボコと穴が開いていく。
――ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
遠くの草原の方からも音が聞こえる。
あれ……、ちょっと範囲間違えちゃったかな……?
ワイバーンの群れが来た方向だ。
遠くの方まで、道を作るようにワイバーンが落ちたところに穴が開いていく。
これは、ちょっとした事故だね……。
「やり過ぎちゃったみたいだな。はは……」
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