Peccatum Originale(原罪)

その歌を、ローマ人達はこう呼んだ。Vae victisと。


ブレンヌス。ガリアの英雄。彼がローマを征服したときに、ローマ人に言った言葉である。

その後、ローマ人達はガリアを征服し、その石碑を見つけた。

ガイウス・ユリウス・カエサルは、それをVae victisと呼び、歌の一部を伝えた。


その石碑は、19世紀、ビブラクテ付近の森林で、ある干魃、日照りの日に見つかった。


湖の底から表れたのだ。




その全てを三千年前から知っていたのは、エルフ達だけだ。





Vae victis:征服された者への災い





我らはいつか救われる

あの光に包まれるとき

人々が立ち上がり

この苦難から救われる



我らはいつか救われる

あの光に包まれるとき

色を問わず、心臓を問わず

この苦難から立ち上がる



我らは支配され、

醜きものは殺された。

そうして、我らは

美と力を磨いた。


我らは奴隷として

人に支配され

堕落した生を

送るだろう。



男は戦奴として死し、

女は犯される

子は拉致され

老いたものは殺される


しかし、それも

光が来たるまで

光が来たとき、

救世主が来たる


大いなる水と光の後

彼は立つ

そして人々と我ら

全ての者を背負う


汝らの王国が来たる

ヤグナが表れた時

我らは彼を王として

その背を追うだろう



我らはいつか立ち上がる

あの光に包まれるとき

ヤグナの導きの下

この苦難から立ち上がる


我らはいつか立ち上がる

あの光に包まれるとき

全ての者達が手を取り合い

この世の楽園を築く




エルフに伝わる詩  ビブラクテの石碑より






輸送機の窓から、目下を眺めた。





國破れて 山河在り

城春にして 草木深し

時に感じて 花にも涙を濺ぎ

別れを恨んで 鳥にも心を驚かす

峰火 三月に連なり

家書 萬金に抵る

白頭掻いて 更に短かし

渾べて簪に 勝えざらんと欲す


杜甫はそう歌った。



バイロンはこう言った。


人間は大地を破壊し廃墟にした、

しかしその力が及ぶのは海岸線までだ。



僕はこう言おう。


大地も、山も、河も、海も、空すらも変えてしまう戦争があると。


この戦争は、きっと世界を包むだろう。






「我らは、百万の騎兵と共に乗りつけるだろう!我らが終末をもたらすのだ!我は神罰、神の惨劇(The Scourage of God)なり!我が来たとき、すべては灰になるだろう!そして、蒼き炎によって焼き尽くされる!」


永遠の都は、蒼く溶け落ちていく。蒼き炎はこの街を包み、誰をも逃さんとばかりに、千年の恨みを晴らしているようだ。


僕は溶けていく街並みを見つめながら、目を閉じた。


生まれ落ちたとき、最初に人が抱く罪。原罪とは何か。


答えは簡単だ。


この世界に、生まれたことさ。








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