大学生から同棲はじめたぼくらの末路

水野スイ

#1 「いつものアレ、しよっか」


「いつものアレ、しよっか」

ハルがベットの上でそう言うとき、もうなんだか嫌になる。

ハルがユキのブラジャーをソファの上にほおり投げた。

投げないでって言ったじゃん。ユキは眉間にシワを寄せて、ため息をつく。

「ため息? いやなの? 」

ハルが嫌な顔をしながら、ユキの方を覗き込む。ユキはそうじゃなくて、とほっぽり出されたブラジャーを拾いに行った。

雰囲気づくりのために買ったピンク色のライトは、もうなんの意味も成さない。ただのインテリアの一部になっている。


「なに?マンネリってやつ。俺下手だしね」

「ちがう。決めつけないでよ」

「じゃあなに」

わかってないね、ユキはため息をこらえて、黙ってハルを抱きしめる。


早く終わらないかな。ユキはここ最近、ずっとそう思っている。

何がって?

たぶん、この、よく終わりが見えない生活すべて。

なんで出会ったんだっけ。出会ってしまったんだっけ。


ハルがいびきをかいて寝てる姿を横目に、ユキはスマホで五年前くらいの写真を見ていた。

あれは大学の入学式。

たまたま見つけた写真には、ばっちりの化粧で、ぴちぴちのスーツを着て、笑顔で居る自分が写っていた。

スワイプすると、飲み屋で男の子とツーショットを撮った写真で手が止まった。

あ、そうだった。

確かサークルの新歓で。

「まだ寝ないの?はやく寝ればいいのに。明日出社でしょ」


だるけた声でハルが呟いた。ハルの手はどこか、ユキのお腹あたりをさすっているようだった。

「あ、うん。そうだね。起こしちゃったかな。ごめん」

「ほんとだよ。早く寝な。よく言うじゃん。肌のゴールデンタイムだっけ?とっくに過ぎてるんじゃない」

ユキはなんとなく手を払いのけて、雰囲気作りのライトを消した。

「あ、そろそろこのライト切れそう」

「あそう。買っといて」

ユキは返事をしなかった。


部屋に入ってくる月明かりの方がマシだ、とまたため息をついた。


#2 「今日はしないの?」に続く






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