白銀の幼女レイ

阿部まさなり

第1話 スラム街の悪夢

 気と魔法が飛び交う異世界の国の一つ、グール帝国。神と人が住まう神聖な国にも闇がある。

 スラム街。

 食う物にも困った極貧の庶民の溜り場である。スラム街には時折物好きの一般人が立ち寄り、貧困者を虐めていた。もっともスラム街の住民に財布を取られることもあるのでこんな場所に訪れるのは本当の物好きだけだ。餓死者、病死者多数、盗みや暴力が横行し、なぶり殺されるのは日常。ハエのたかった汚い死体が普通に道端に落ちていて感染症が蔓延している。金もなく、風呂にも入れず、不衛生な暮らし。スラム街に住む人達はそんな社会の最底辺の者達が集う場所。

 そんなスラム街に住む一人の幼女はレイという。身長百センチメートルと三歳児のような見た目。腰まで届くフケだらけの白銀の髪、光の無い絶望に染まった銀色の瞳、全身傷だらけの体、そしてネズミのような細長い尻尾を持つ。左頬の切り傷が特に特徴的だ。黒のマイクロビキニパンツだけを身に着けて平らな胸は露出させている。風呂は当然入れないので全身泥だらけでとても汚く不衛生だ。臭いも酷い。そんな、汚い幼女。それがスラム街に住む幼女レイだった。

 彼女は芯人と呼ばれる土から木のように生えてくる人間で親は無い。物心ついた頃からスラム街で物を乞う生活をしていた。女の体を武器に、幼い体でも物好きな大人を相手に、体を売って腐ったパンを貰う。そうやって食を繋いできた。毎日殴られるのは当たり前、みんな面白半分でレイを虐める。そんな生活にも慣れていた。レイにあるのは空腹を満たしたい、その一心だった。




 身長百センチメートルの銀髪の幼女がスラム街の廃墟にいた。朽ちた机と椅子が散乱する屋根の無い部屋。時間は夜。雪が降り積もる冬の季節。幼女の周りには煙草を吸う男達が集っていた。男達は幼女を容赦無く殴り付けていた。殴って殴って蹴って蹴って。ボロ雑巾のように。サンドバッグのように。幼女は泣き叫ぶ。光の無い虚ろな銀の瞳に涙をいっぱい浮かべて。


「こいつが芯人のレイだ。いくら殴られても体を八つ裂きにされようと死ぬ事は無い。不死身の肉体を持っている。あやかりたいもんだぜ」


 身長百八十センチメートルの大男が叫ぶ。そして蹲る幼女――レイの腹に蹴りを一発。レイは唾を何度も吐いて口から血を垂らしていた。全身傷だらけの痣だらけ。全身がタコのように赤く膨れていた。

 芯人という種族はタフな種族で、首から下を落とされても一晩で元通りに再生する治癒能力を持っている。心臓を潰されても脳を破壊されても死ぬ事は無い。どんな傷を受けても元通りになるのだ。そんなレイが何故傷だらけなのかというと、傷を受け過ぎて、それに体が覚えて傷が再生しなくなってしまったからである。

 頑丈な芯人であるレイをサンドバッグのように殴って蹴ってお返しにパンを貰うというのは、レイの日常であった。この日も男達からパンを恵んでもらう事を条件にひたすら殴られ続けているのだ。

 レイは人に殴られるのは慣れている。痛いのにももう慣れている。既に殴られる事に恐怖を感じなくなっていた。痛いのを我慢するだけでパンが貰えるなんて楽な仕事だと考える程だ。既に感覚が麻痺していた。涙を溜めて泣き叫ぶのは彼女なりの演技である。人にもよるが物好きな男達は泣き叫ぶ女子が好きなのだ。じっと耐えて我慢する女子が好きな人間もいるが、今回の相手は泣き叫ぶ女子が好きなのでめいいっぱい泣き叫んでいる。痛いのを我慢せずに叫んで良いので楽ではあるが泣いていると本当に悲しくなってくるのが玉に瑕だ。

 ちなみに女の子を殴る事に罪悪感を感じないのかというと彼らは感じていない。そもそも尻尾の生えた子供だ。自分達と同じ人間とは思っていない。喋る動物といった認識だ。彼らにとってレイは子猫のような小動物に過ぎない。小動物を虐めるのが好きな物好きもいる。レイを殴るのもその一環であった。レイに限らずスラム街の貧困者はそうやって差別されるのだ。その中でも芯人は頑丈な体を持っているから特に殴られやすかった。ましてはレイは嗜虐心を啜るようないたいけな幼い女の子。物好きな男達にとってはまさにごちそうなのである。


「おらぁ! おらぁ! 痛いかレイちゃん? 痛いかぁ!?」


 男がレイの首を掴み持ち上げるとその腹や胸に鋭いパンチを打ち込む。レイの腹は真っ赤な痣が出来ていた。口から血を垂らしてレイは泣いている。


「ひぐ……ひっぐ。……痛いです……凄く痛いですぅ……っく」


 涙と鼻水を垂らしながら泣きじゃくるレイ。弱々しい声で痛いと訴えている。もちろんこれは演技である。半分くらい本当であるが。男達はニヤニヤと笑い始める。嗜虐心を煽る惨めな泣き顔。弱々しい声。ポロポロと溢れる涙。欠けた歯――まさに興奮の極みであった。

 男の一人が手から火の玉を出した。火の魔法である。火の玉をレイの胸に押し付ける。胸がジュっと焼けて焦げが出る。


「ああああ!!!」


 レイは悲痛な叫び声を上げる。男達は興奮して顔を赤く染める。まるで酔っぱらいのように。みんなでレイを殴る。蹴る。どこまでも。その細い華奢な腕、足、体を殴り続ける。レイは血を何度も吐いた。全身に刻まれる傷から血が流れる。蹴飛ばされた口から歯が飛んでいく。レイの顔は泣き顔で歯っ欠けであった。

 雪降る夜の廃墟。他の人はいない。静寂な夜に、幼女の悲痛な泣き声が木霊す。そして肉を打ち付ける鈍い音が。


「おらぁ!」


 ドゴッ! 腹に鋭いパンチ。腹から口から血が飛び出る。


「ぐふっ!」

「うらぁ!」

「がっ!」


 顔を蹴飛ばす。口から歯と血が飛ぶ。

 その後も何度もレイを殴り、蹴り続ける男達。レイの顔は涙で赤く腫れていた。


「ふぃー。もう俺は我慢出来ん」


 男の一人がおもむろにズボンを脱ぎ始める。そして下着のブリーフを脱ぐ。逞しく太く膨らんだ大きな、男の肉棒が起っていた。すると他の男達が笑い出す。そして彼らもズボンと下着を脱いで自分の肉棒を外気に晒す。みんなの肉棒は大きく膨れて起っていた。彼らは、レイを犯すつもりなのだ。レイはやはり来たかと思って覚悟を決める。体を売ってパンを貰っているのだ。犯されるくらいの覚悟をして当然である。こんな幼子相手でも、男達は構わないようであった。


「さて、レイちゃん、パンツ脱いで股を開きな」


 男に言われて、レイはマイクロビキニパンツを脱ぎ、股を開く。蹴られ、痣で赤く腫れ上がった陰部が顔を出した。毛の生えてない小さなレイの秘部。男はレイの尻を持ち上げ担ぎ上げる。三歳児相当の体はとても軽く、男の筋力で軽々と持ち上がった。男は舌で頬を舐める。そしてレイの秘部を舌でペロリと舐めた。


「んんっ……」


 レイは変な感覚に陥り喘ぐ。他の男達はゲラゲラと笑う。男はレイの足を持ってレイを逆さ吊りにすると、レイの陰部を優しく撫で始めた。前戯である。指でレイの秘部を優しく、けども時には乱暴になぞる。さっきまで暴力を振るった男の手とは思えない程にそれは器用な手付きだった。男は手慣れていた。これまで何人もの女を手籠めにしてきたのだ。女の場所の扱いには慣れているのだ。レイも変な気分になって心臓が脈打ち始める。息が上がり、顔が赤く染まる。男の手付きが早くなっていく。やがて男の指には粘性の体液がつき始めた。レイの秘部は濡れていた。

 十分に濡れたのを確認したのか、男はレイの尻を持って股を開かせ、股の間に肉棒を置いた。両手でレイの体を器用に揺すり、己の肉棒に、レイの秘部を押し付ける。秘部に肉棒が触れた。レイの体がビクンと震える。


「……早く、早く入れてください」


 レイは弱々しい声で訴える。もちろん演技である。レイはこういう演技にも慣れていた。男の夜の相手もレイはこれまで何度もこなして来たのである。男がなんて言われると嬉しがるのか理解しているつもりだった。男はニヤリと笑う。そして遂に、肉棒がレイの秘部に挿入された。

 かなり大きさに差があるのにそれはすっぽりと入った。濡れているせいもあるが、やはりレイも、幼いとはいえ女の体なのである。男は入れた肉棒を何度も出し入れする。クチュクチュと音を立てて、肉棒が秘部に何度も挿入される。その度に肉棒が更に膨れ上がっていく。レイは目を瞑り喘いでいた。

 これは強姦である。レイは初めて行為を強要された時は意味が分からず言われるがままに、行った。それは気持ちの良い事だと感じた。しかしある日、その意味を知り、男に支配されていると感じるようになった時、素直に喜べなくなった。しかしこれもパンを貰うため。食っていく為の仕事と割り切る事にした。殴られるのに比べれば、気持ち良くなるだけマシというものである。女の中には酷く嫌がる者もいたがスラム街ではそれは少数派だ。体を売っている以上、行為が行われるのは当然の事。それでパンが貰えるのだからそれは言わば彼女達の仕事であった。


「う! 出るぞ出るぞ!」


 ドビュドビュビューーー!!

 男が果てた。レイの性器は男の生暖かい精液に包まれた。レイは小さく喘ぎ声を上げる。それが他の男達に火をつけた。


「次は俺にやらせろ!」

「いや、俺だ! お前より俺の方が強いんだ! 俺にやらせろ!」


 男達はレイの相手を巡って口論を始めた。その間、行為中の男によってレイは何度も慰められた。

 そしてレイは数人の男達によって時間を掛けて強姦された。レイの秘部は精液に濡れてドロドロになっていた。レイは肩で息をしていた。行為中、何度もイったのだ。レイも果てていた。途中失禁までしながら、レイは何度も果てた。男達は満足したのかズボンを履いて地面に腰を下ろしていた。レイは口と股を精液まみれにしながら横たわっていた。休憩といった所か。レイは助かったと思い、マイクロビキニパンツを履いて静かに目を瞑っていた。

 雪がつもり、寒い風がビューと吹き荒れる。寒さで凍えそうだ。行為をしている間、殴られている間は熱かったが、動きを止めていると途端に寒くなってくる。特にパンツ一丁のレイにとっては。レイが寒さを感じて凍えている横で男達は酒を飲んで談笑していた。やがて男の一人がレイに声を掛けた。


「おめぇ中々じゃねぇか。泣き声も喘ぎ声も上等だ。俳優になれるぜ」

「……どうも」


 男はレイが演技をしていると見抜いていたらしい。レイは内心ドキリと思いつつも素直に感謝の気持ちを述べた。


「これは礼だ。たんと食いな」


 そうして男が渡していたのは一個のパンだった。ラスクのように固いコッペパン。レイは礼を言うと奪うようにパンを手に取り、そして口に放り込む。凄まじい勢いでバクバクと食べてあっという間に無くなってしまう。レイは腹を空かしていた。一個のパンなどあっという間に無くなってしまった。


「これも飲むか? 芯人なら問題無いだろ」


 そして差し出したのは酒だった。ウイスキーだった。芯人は生まれた時から大人の姿として生まれて体が変化する事は無い、長寿の生き物だ。つまりレイは生まれた時から三歳児相当の姿。死ぬまで幼子の容姿をしているのである。幼少期という概念は無いので酒も飲めるし、煙草も吸えるのだ。因みにレイは生殖能力も成熟している。しかしこれまで赤子が出来た事は無かった。それが体に欠陥があるからなのかは不明だが望まぬ子が出来るよりはマシであろうか。


「お酒は好きです。ありがとうございます」


 レイは酒を飲んだ事があるが酒は好きだった。好きなのは日本酒のような濁り酒だがウイスキーもビールもいけるのだ。レイはウイスキーを口にした。そしてゴクゴクと一気に飲み始めた。男達はそれを見て驚き、称賛した。


「ちびのくせにやるじゃねぇか。それは全部やるよ。なに、やらしてくれた礼さ」


 この男達は親切だとレイは思った。やるだけやってパンをくれない人が大半のスラム街で、パンをくれるだけでも優しいのに、酒までくれるなんて。レイは急に目頭が熱くなるのを感じた。しかし人前で泣いては恥ずかしいと思い、ぐっと堪えた。ウイスキーをぐっと飲んで堪える。喉から体から熱くなるのを感じた。頭の中がくらくらしてきた。酔ってきたのだろう。この感覚がレイは好きだった。涙が溢れそうになるのをじっと堪えながら、ウイスキーを飲み続けた。


「それじゃ俺達はそろそろ帰って寝るか。嫁がうるさいだろうからな」


 そう言って男達は各々の家に帰っていった。そう、彼らは皆、嫁を持っている。嫁がいながら、レイを強姦したのである。もっともこの時代ではそういう事は日常であり特におかしな行為では無かった。それでもレイのような幼子と致すのは非常識であったが。

 レイは一人廃墟に残った。ウイスキーも全部飲み終えると自分の寝床に帰っていった。そこは真っ暗な路地裏。そこには何も無い。あるのは雪と新聞紙だけ。レイはそこで横になると新聞紙を体に巻いた。全身が痛いし、股も疼く。しかしパンを食べれて酒まで飲めた。今日は得した気分だ。レイは上機嫌になりながら、明日はどうしようかと考えつつ、眠りに落ちた。

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