托卵英雄と子供たちはマイペース!

@kagetusouya

第1話 16歳の誕生日と衝撃(他者視点)の事実

「「「「「「誕生日おめでとう、ルー」」」」」」

「ありがとう」


それは幸せな光景。

一人の旦那と3人の妻、2人の兄姉から祝われ、祝われた少女は感情の薄いながらも口元を緩ませて嬉しさを表す。


「それでね、ユウ、貴方に伝えたいことがあるの」

そういって長男である、ハルトの母であるリムがそういうと残りの二人の妻であるチャム、テスもそれぞれ子供を横に座らせてこちらにニコニコというには少し邪悪な笑みを浮かべた。

そんな中でテスがこちらを見ながら

「実は3人ともあなたの子供ではありませーん、そして明日から私たちは本来のパパとともに過ごしますのでこの家を出ていきまーす」


くすくすと妻の3人は笑ってから、席を立つ

どうやら用意したディナーを食べることはないようだ。

「さぁいきましょうハルト」

「行きますよ、マナ」

「いきましょうルー」

3人がそれぞれ自分の子供の手を掴んで立ち上がろうとするが


「え?俺は父さんと今日はこの家で過ごすけど?」

「ん、一人でいって?」

「はい、いってらっしゃいませ」


3人は何を言われたのかわからずポカーンとしている。

「ん?どうしたリム、チャム、テス?」

ポカーンとして立ちすくむ3人を見て首をかしげていると、3人ははっとした顔をして


「何言ってるのよ、本当のお父さんのところでも準備してるのよ?」

「そうよ、ここよりも立派なパーティーよ?」

「そうよそうよ」


そんな3人の妻の言葉に対して誰も反応せずにハルトに至ってはすでに食事を始めている。

そんな3人を見て妻たちは顔を真っ赤にして家から出ていく。


いいのか?と僕が問いかけると3人はうんうんと頷き、そのまま家族としての最後の夜を過ごすのだった。



===


「それじゃあ父さんいってくる」

そういって長男でハルトは家を出る、彼の父は騎士団長なので彼は騎士団に配属されるのだろう、できれば権力で腐らずに強い騎士になってほしい。


「ん、いってくる」

長女のマナの父親は魔術師団の団長だ、僕が教えた魔法とこの世界の技術である魔術を組み合わせて素晴らしい技術を作り出してほしい。


「またお会いしましょう」

次女のルーは財務長の長官の娘だ。

これからも民が困らないようにこの国を富ませてほしい


3人を見送ると家の中を見る、今までは家族7人に使用人が数人いたのだが使用人も妻についていった為、家はがらんとしている

「ちょうどいいし、長期の依頼でも受けに行こうかな」


僕は空間収納に家を格納し、その足で冒険者ギルドへと向かう。



冒険者ギルド

それは各国にある国家に属さない戦力である。

基本的に武器を持ち強い戦力を持つ存在は騎士や兵士という形で国に管理されるの場所であり、一応各国からギルドの副長として貴族が配備されている


ギルドは1階が一般冒険者、2階が上位冒険者のカウンターと別れており、特急冒険者である僕は2階のカウンターで依頼を受けるのだが


「よう、騙された英雄様じゃねえか、最後の家族の団欒はどうだった?」

そういってこちらに声をかけてきたのは……だ。誰だ?


「え、えっと初めまして?」

僕がそういうと顔を真っ赤に染めながらこちらに大股で近づいてくる、ギルド内の反応は僕に対する呆れや彼を馬鹿にするような雰囲気であり、こういう反応の時は大体僕が覚えてないだけなことが多い、まてあきらめるな僕の英雄脳


「あ、ああ、紅蓮剣のアインだな、ひ、久しぶりだな」

紅蓮剣のアイン、若いながらも炎の魔剣を扱い、高い攻撃力を持つイケメンだ。

金の髪に赤い瞳……あれ?髪が銀だし、瞳は黒だ?!


「よりによってアインと間違えるか、くくく」

目を血走らせてこちらに向かってくる、NOTアイン君に謝ろうとすると彼の後ろから馬鹿にしたように笑い女がこちらに歩いてくる。


「剣姫だ」

「剣姫シャルロットだ」

外野ががやがやと彼女の名を呼ぶ

剣姫シャルロット、この国の特級戦力の一人だ

冒険者にランクはない、すべての仕事は自己責任だ。

ただし、有能な冒険者は使命依頼が受けやすいようにその人間の特徴に合わせた二ツ名を与えられる。


シャルロットであれば剣による高速戦闘能力が高い

アインならば、紅蓮剣と呼ばれる魔剣をふるうパワーファイターだ


ちなみに僕の二つ名はあまりにも恥ずかしいが、転生英雄だ。

僕は生まれたときから歴代の英雄としての知識があり、その知識と技術のおかげで世界的に見ても戦闘能力はトップクラスだ。


「アレックス、ユウに何のようだ?」

アレックス、ああそうだアレックス君だ!覚えた覚えた!

シャルがそう尋ねると、アレックス君はこちらを見て、にやりと笑い


「そうだ、英雄殿、托卵されて子供を奪われた英雄殿、どのような気分なのだ?16年自分の子だと思って、育てた子供たちが、貴族によって企まれた托卵でしかなかった気分は、教えてくれよ無様な英雄様!」


そういって邪悪な顔を浮かべて冒険者ギルド全体に響くように彼は叫ぶ

そんな彼の声に周りの男もこちらを馬鹿にするような顔を見せるものと同情するような表情を浮かべるものとに分かれていたが、言われた僕自身はよくわかっていない

まずい、このままだとまた常識知らずとか言われてしまう、前世の記憶があるせいかよく僕はこの時代の人々と話がかみ合わないことがあるのだ……


とはいえこちらは今世ではまだ28歳だが前世を合わせれば300年は生きている長命種の古老並みの知識があるのだから、考えろ、考えろ自分。


周囲を見渡す僕に対する様々な感情を向ける男、男、男、女、男

……ここで僕は一つのことに気がつき、なるほどと思い

「なるほど、この時代が平和だからか」


周囲はぽかんとし、何を言っているのかわからないといった顔をするが少し待ってほしい


「この空間の男女比から見ても男が異常に多いし、街を見ても男が多い、つまり戦場で男が死ぬことも少ないということだ…」

「おや、なんだい男女差別かい?」

俺の言葉にシャルが不満そうに答えるがこれは僕の悪い癖だどうしても小分けにして言葉にして自分の言葉を整理してしまう。


「違う違う落ち着いてくれシャル、いいかい、僕が生きていた時代は魔族によって人類の数を大きく減らしていた時代なんだ、そのせいで人類が絶滅しないために犠牲を男に偏らせる必要があった。」


僕の言葉にこの場にいる多くの人間が首をかしげて理解が及ばない顔をしている。


「たとえば人類が100人しかいないとき、男が90人女が10人と、男女半々、男が10人、女が90人では、一番最後のほうが単純に数は増えやすいだろう?」

男がどれだけいても女は年に1人しか子供を産めない、ならば男と女の割合は女を増やした方がいいということだ。


「だから僕たち男は戦場で率先して死んだ、人類の未来のためにね、そのため死んだ男は勇士と呼ばれ彼らが残した家族を生き残った人間で育てるのは当たり前だったからね」


実際に前世の自分も多くの血のつながらない子供を育てていた。

英雄と呼ばれて戦場で多くの功績を上げた自分は食料などでも融通してもらっていたので、その分を戦場で死んだ勇士の妻や子供を養うために使っていた。

そう伝えたらギルド内は何というかあっけにとられたというかぽかーんという感じだった。


「そう考えるとなるほどこの時代ではスラムや孤児等もあるし、時代は進んで人類の絶望の時代を超えたんだなと、ふふ、前世の仲間たちもきっとこんな時代が訪れて胸を張っているだろう」


「なぁ、ユウ、お前は何で子供を孕んだ妻たちと結婚したんだ?」

僕が過去の勇士たちとの思いでに思いをはせていたら、シャルがそんなことを聞いてくる、彼女も僕の独特の価値観に?を頭に浮かべていたがそんなことを聞いてくる。


「いや、父親との間に何か問題があるのかと思っていたからね?その問題が解決するまで僕にかくまってほしいのか、もしくは僕の技術を子供に伝えてほしいと思っているのかと思ってハルトに剣を、マナに魔法を、ルーには財務は教えられないから冒険者として倒した魔物の素材の価値なんかを教えたんだが…」


「なるほど、なるほどなぁ…」

シャルはくくっっと腹を抱えて笑う、大口を開けて笑わないのは貴族のたしなみなのだろうか?

他の人間も16年もかけてしかけたいやがらせがまるで無意味だったことに呆れたり、貴族ってバカだなぁという感じだった。


「むしろ僕としては本当の家族との時間を奪ってしまって申し訳ないという思いで3人が大きくなってきたら仕事で遠征することを増やしてたんだけどなぁ」


結局僕と貴族の空回りで誰も傷つかない優しい世界になってしまった…


「というわけで僕としては子供を育てさせられたことについては何とも思ってないんだ、なんかすまんな」

あんなに嬉しそうに僕をバカにしてきたアレックス君やそのお友達に申し訳なくて思わず謝ってしまった。


「ふむ、それでユウはこれからどうするんだ?」

シャルはそういって僕に抱き着いてくる、僕は鈍感系英雄ではないので彼女が自分に対して少なくない好意を持ってくれているのはわかっていたし、妻との関係があって一定の距離間をとっていてくれたのもわかっていた。


ただもしかしたらあの3人が自分のことを捨てる(?)つもりなのは知っていたのかもしれない、事前に僕にばれないように僕のことを嫌いな人とかに計画を話しててそれをシャルが聞きつけたのかな?とも思う。

そうじゃなければ昨日の今日でこんなに広まってないだろう。


「子供達も成長して手が離れたことだし少し遠征でもしようかと思っているこの国を離れるかどうかまではわからないが」

なんだかんだいってもこの国は自分の育った国だし、この国自体は愛している、だから離れることまでは考えていない、何より僕はこの国の特級戦力だ


特急戦力はいるだけで国防に役立つため簡単に国を離れることはできない。


そう僕が話すとシャルは少し考えるようなそぶりをし、その背後依頼を受けるカウンターの方から「ユウ!!」と自分のことを呼ぶ大きな声が聞こえる。


驚いてそちらを見れば、冒険者ギルドのマスターであるダンカンがこちらに向けて大きな手を振りて招きしている姿が見えた、はてどんな用事だろうか?

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