第21話 男の友情
「おい、ヒロトどうした? お前が集中を切らすなんて珍しいじゃねえか」
ダグラスさんの声に俺は素振りの手を止める。昼寝に飽きたという彼に、久しぶりに俺の剣術を見てもらっていたのだ。
「ダグラスさん……。聞きたいことがあるのですけど」
「ん? なんだよ」
「あの『勇者召喚の儀』のことです」
「ああ、それな……」
「鮫島たちのことは正直嫌いだったんです。でも、あの光景が頭から離れなくて……。ああいったこと、これまで何回もしてきたんですよね」
「お姫様が参加するようになってから6回。それより前は数えてねえな」
「この国のためだとは頭では分かっているんですが、どうも俺には」
「人として、人道的にどうとかいう話か? そんなもん俺たちゃ、とうの昔に捨てちまったぜ。なんも知らねえ違う世界の連中を
「も、もちろん魔王の脅威があることを示していなければ、
「ヒロトは賢いが、なんていうか、ガキだな」
「そ、その自覚はあります……。現実を見ろってことですよね」
「はあ? 勘違いするな。おめえみてえなガキの方がちゃんと現実が見えてるって言いてえんだよ」
「?」
「俺もシファもあの糞女神の力のせいで、隷属状態なんだよ。あの力の謎さえ解ければ今からでも糞女神を殺しに行くってのに……。アレに対して俺たちは無力なんだよ。俺なんて居眠りするフリしてサボって抵抗することぐれえしか。ああ、ほんと情けねえ……。でも、ヒロトは違うだろ。おめえがしたいようにすればいいじゃねえか。だって、ガキなんだろ?」
「したいようにって……。俺、従者で。鉱山から来たし、その前はスラムでゴミ漁って……、それに剣も魔法も才能ないし」
「ウジウジ言うんじゃねえ! いまの自分を見てるみてえで腹が立ってきた。もう面倒なこと考えるのはお互いヤメだ。剣を構えろ! 今日はビシバシいくぜ!」
「は、はいっ!」
「もうどうして二人ともこんなことになっているのにゃ? たしか中庭で剣の稽古をしていたはずなの。でもどうみても二人のアザはただの殴り合い、それも格闘技とかそんなんじゃない子どもの喧嘩でできるものなの。二人ともアホなの? それともガキなのかにゃ?」
「うっ、痛え。アンナ、もうちょっと優しくしてくれねえか? ぎゃ、ぎゃあ!」
「馬鹿につける薬はないのにゃ。でも、ヒロトはいつも頑張っているからご褒美なのにゃ」
アンナさんの顔が近い。
「あっ、えっ!?」
舐められた。頬の傷をぺろって……。
「子どもの頃、お母さんによくしてもらっていたの。これが一番治りがいいのにゃ」
両手を押さえられて動けない俺、アンナさんの舌が俺の身体を這っていく。こ、これは……。
「ちょ、ちょっとアンナ! あんた何やってんの!」
「治療行為なのにゃ。何もやましいことはないのにゃ。な、なんなのにゃー!」
アリシア様に
「なんでお前だけそんないい思いを……」
ダグラスさんが悲しげな表情でこっちを見ていた。
あまりにも今日の訓練でのダグラスさんは大人げなかった。イラッとした俺の舌打ちに気づいた彼と口論になり殴り合いになった。今思えば、剣聖様が木剣であっても剣をほうりなげるわけがなく。これはすべてダグラスさんの仕組んだものだったのだろう。お陰で言いたいことも言えてスッキリしたし、ダグラスさんのことがもっと良く分かったような気がする。やはり彼は大人であり、俺はガキだということだ。
「おい、ヒロト! すぐに来てくれるか!」
「キテクレルカー!」
地下の研究室にツムトと篭っていたシファさんが凄い勢いで部屋に飛び込んできた。
「これは大発見かもしれないぞ!」
「シレナイゾー!」
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