せぇくらべ

幼馴染のSから久々に連絡がきた。

Sは、タカナシが以前目指していた資格をとり、その資格を活かした仕事をしているという報告だ。

一方の自分は、また転職するのだという残念な報告を返した。




歌が好きな自分は、昔、ジャズボーカリストに憧れていた。

ビッグバンドとかいいなぁって。

ご縁がなくバンドを組む夢は叶わなかったのだが。


Sとは、昔からよくカラオケにいっていた。

自分がいつも歌う、マニアックな歌を「こういうのが好きなんだね」と聞いていたはずのSと、数年ぶりにあったら、自分が歌っていたマニアックなアーティストの曲を次から次と先に歌われた。

びっくりして、いつの間にこういう趣味になったのと尋ねると、

「トーヤも、この曲知ってたんだ!すごいね!」

と返された。



ある仕事につくために資格が必要で、Sに夢を語り、長い道のりだけど頑張って勉強すると伝え、大学に編入した。


Sは、全く別の仕事についていたが、仕事柄、最短ルートでその資格を取得することができた。いつのまにかSは自分と同じ道を目指しはじめ、見事資格を取得し、その仕事についた。

自分のとった初級資格では、はるか及ばない。


尊敬するよ

羨ましいよ

大好きだよ



でもさぁ、

どうしていつもいつも先へいってしまうのかな

横に並ばせてはくれないのかな

競争するんじゃなくて、ともに歩んでいく友達でいたいのだけども



気のせいか。

心の狭い自分のただの羨望。



Sは今、自分が憧れていた素敵な仕事につきながら、ジャズボーカリストとして活動している。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る