幸せの青い人間じゃない二人の女子高生

悪本不真面目(アクモトフマジメ)

第1話

 退屈な授業は早く終わってほしいが、昼休みはいつも五月蠅くなるから嫌だな。

 

 騒がしいというか、青春暴走族とでも言いましょうか。


 チャイムが鳴り、私の前の席の幸せの青い人間の一人、女子高生の内田さんが立ち上がり教室を走って出てゆく。


 それから十秒、いや何人かフライングはしているが、私以外のさっきの授業を担当していた禿げた教師もみんな彼女を追いかけ走る。


 私は教室がポツンと一人になるのを待ち、ゆっくりと手を後ろに組んで、その競争には加わらずに私は階段を降りる。


 すると、私の親友の弥生と会う。弥生のクラスにも幸せの青い人間の女子高生佐田さんがいる。佐田さんのところも同じ感じだ。そして弥生は私と同じく不参加者。


バカバカしいからだ。


 私たちはいつも弥生が私の分までのお弁当を持ってきてくれるからそれを決まって体育倉庫の裏の人気がないところで食べる。


 ここなら幸せの青い人間の青春暴走族とぶつからないからだ。私たちはシートを敷かず、ほったらかしにされた雑草や土の上に胡坐で座りお弁当を食べる。


 そして、決まって幸せの青い人間の追いかけっこを愚痴る。


「大体、幸せなんてひとそれぞれ違うっちゅうに。」

「本当そうだよね。幸せだったら誰もいいって感じはどうかと思うわ。」

「中には女子高生を合法的に追いかけられるからって言う男子や男教師とかいそうよね。いやらしいわ。」

「分かるわ教頭先生ってそういう理由で走ってる感じするよね。」


 弥生の作った卵焼きをパクっと食べ、何の卵焼きか毎回クイズになっている。昨日はアボカドというトリッキーな卵焼きで不正解だったから今日は当てたい。

「うーん。」

「あ、今卵焼きクイズ中ですか?」

「そうよ弥生、今日は当てるからね。」

「今日のも難しいと思うよ。」

ああ楽しい。何故みんなこれをしないだろうか、弥生の卵焼きクイズの方が面白いと言うのに全く意味が分からないわ。しかし、それにしても今日のも難しい。なんだろう、魚なのかな?マグロっぽいような、なんだろう?

「後五秒!」

「え、ちょっと待ってよ、えーとえーと魚肉ソーセージ!」

「ブッブー、正解はアボカドでした。」

「えー昨日と同じなの!」

「あえて昨日と同じにしてまんまと引っ掛かったね。」

「そんなのないよー。」


 弥生は大きな丸眼鏡で三つ編みと少し暗く大人しい印象を持つ。

 

 しかし私は知っている。 

 

 弥生は化けれる。


 正直、天下を獲れる魅力がある。


 実際弥生は明るく、どちらかというと少し意地悪なところがありチャーミングな性格をしている。髪型を変えて眼鏡をコンタクトにするだけであっという間にお姫様の出来上がりだ。


 だけど、私は弥生にそんなことを言わない。


 今のままでいてもらわなければならない。

 

 でないと私の元から飛び立ってしまう。幸せの青い鳥のように。


 私は幸せの青い人間を何故追いかけないのか、いや追いかける券を持っていないだけかもしれない。

 

 でも弥生は違う。

 

 私が早いこと見つけたから今こうしているが、弥生には券がある。それを彼女は自らの意思で使ってないだけなんだ。


 私は弥生がいるから学校に来られる。弥生は私の幸せの青い人間いや弥生人間?


「ねぇ、芳子の幸せって何?」

「え、幸せ?」

今の時間と答えたらなんか口説いているみたいだなと私は思い、無難な答えを探す。

「うーん、そうね健康でいることかな、弥生は?」

「健康は大事だよね。私は今の時間かな。」

「え?」


 するとものすごい形相で、幸せの青い人間の内田さんと佐田さんがやって来た。

「ごめん、かくまって!!」

彼女たちは手形型に色が剥げていて、青い斑点をつけているようにみすぼらしい姿をしていた。


 そんな姿を見て私と弥生はかくまうことにした。


 他の生徒やら教師がこっちにやって来ても私たちは「知りません」と答えた。


 彼女たちは私たちに感謝をし、手を握ってくれた。


 私は掌を見た。

 青く、幸せの色をしていた。 

 私は思わず頬がゆるみ笑いそうになった。


 「芳子、がっかりさせないで。」

 私は我に返り、危うく本当の幸せを失うところだった。そしてもう一度掌を見ると、その青さはなんだか悲しい青に見えた。きっと弥生もそう思っているんだろう。

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幸せの青い人間じゃない二人の女子高生 悪本不真面目(アクモトフマジメ) @saikindou0615

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