犬の鑑定法

【調査結果】

 三瀬南部樹海で観測された巨大なイ形は、南蔵田地区に棲息するイ形の1個体であると確認。

 当該イ形が南蔵田地区の“イベント”と関連するかは明らかとならなかった。しかし、当該種が“イベント”直後から南蔵田地区に棲息していたことは推定できる。

 蔵先市街へのリスクは未知数。イ形の性質以上に、蔵先市街に関する情報が欠けており判断がつかない。他方、対人間へのリスクは低いものと評価する。

 以下、判明した特徴を示す。


1、本個体を含む同種のイ形は、変態機能を有する。変態機能は捕食に伴い自動的に発生する。個体の意思または外的要因による任意のコントロールはできない。


2、本個体が捕食するのは後述するイ形のみであり、それ以外の生物について積極的な捕食活動を行わない。人間による餌付けも可能であり、2週間から1か月程度の接触により手懐けることができると実証できている。


3、本個体が捕食するイ形は、南蔵田地区を中心に樹海内に発生しているものと思われる。本個体が樹海内に現れたのも餌となる個体を追いかけた結果と考えられる。なお、以降本個体をD。被捕食個体をCと呼称する。

 Cは現実での活動を担保する目的から他の生物の形態を模倣する性質を有する。DはCが模倣した後の姿(以下、これを模倣個体と称する)を捕食する性質を持つ。模倣個体は再生能力に優れており、通常武器での駆逐が困難であるが、Dはこれに一切の反撃を許さず捕食できる。捕食に必要なのはCの像が写る鏡面状の物質のみである。

 鏡面にCが写ることを条件にDの捕食行為は行われる。なお、捕食後のDはCが模倣した個体の特徴を引き継ぐ性質を有しており、これがDの変態機能の正体である。


4、Dの変態は捕食により得たエネルギーの消費活動であり、時間の経過と共にD本来の姿に戻ることが確認できた。継続的な捕食を行わない場合でおおむね2週間から1か月で素体へ戻る傾向がある。但し、問題の大型個体と同じサイズのDは発見できなかったことに留意が必要。

 Dは変態後のサイズが大きいほどエネルギー消費に時間を要する傾向が確認できている。したがって、当該個体が元の姿に戻るまでに想定以上の時間を要する可能性は否定できない。


5、以上のことから、三瀬南部樹海で観測された巨大個体Dは、南蔵田地区で発見されたイ形の一種である。Dは同様に南蔵田地区で発見されたイ形Cを捕食するために樹海内に立ち入っているものと考えられる。

 人間への攻撃的な行為は見られないこと、捕食を行わなければサイズが戻る可能性が高いこと、別個体を捕食した場合も当該個体の形態に近づくため、時間経過または捕食によりリサイズされ小型化するものと目されることなどを踏まえると、Dが蔵先市街に対して被害を及ぼす可能性は低い。

 現状、蔵先市街にて行われている索敵と監視を継続し、必要であればサイズが変わるのを確認した後の捕獲あるいは駆除を勧める。


 以上が本件依頼に対する調査結果である。

 なお、依頼の受注にあたっては貴殿の代理人から依頼内容を示されているため、当方では正確な依頼内容を把握できていない可能性がある。追加調査事項や質疑がある場合は、本アドレスまでの返信を希望する。

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