Curtain falls
一人雪の道をスキップしながら歩く、白いローブの女は確信していた。
リディア・セルティアは死んだ。深く深く背中を斬り裂いたのだから、長くは持たないだろう。ということはやっとシナリオ通りになったということだ。
本来ならばダイアウルフに襲われた公爵の血が、古代竜ニヒュムの召喚に使われるのだが、まあいい。公爵はニヒュム戦で大怪我を負えばそれでいいのだ。
(それを癒すために私が姿を現す)
聖女としての力を発揮するのだ。
何しろ私はこの物語のヒロインなのだ。聖女として目覚めた力を使い彼を癒し、世界が私に跪く。公爵閣下とのラブロマンスもいいが、元々ヒロインには別の道が用意されていた。
そう。
王太子殿下との恋物語だ。
(あの話のヒロインはリアージュを選んだけれど、私は違うわ)
せっかく物語のヒロインに生まれ変わったのだから贅沢に生きたい。そう……前世では絶対に無理だった王妃になるのだ。
うふふふふ、と女は楽しそうに笑う。やっと自分が世界を回す時が来た。全員が自分の前にひれ伏すのだ。
雪の大地を踏みしめ、女は歩いていく。
だが彼女は知らない。
リディア・セルティアは死なず、古代竜も現れず、すでに事件に幕が下ろされたことを……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます