勇者と精霊の三年五組
秋津 涼
第0話
「このあたりは未だ都市にならなかったほど遥かな時代、『アブラナ村の精霊』というレジェンド的な噂が流れていた。誰も見たことなかったアブラナ村は、数千年間精霊たちの居場所だったらしい。そのアブラナ村を見つけて、試練を受けると、精霊になれる。そして、精霊たちと、決して苦痛のない一生を過ごせる。まるで桃源郷みたいなそのアブラナ村は、悲しみにまみれたその時代の多くの人に憧れられていた。そこにもアブラナ村を探したがっている勇者たちがいて、その伝説のユートピアを目指し、旅を出る。」
「でも、昔からオアシスと呼ばれたここから出るのは、明らかに簡単なことではなかった。パンダミック、自然災害、意外、敵との紛争、仲間の内輪揉め、この『アブラナ村熱』が、結局この辺りに大いに悪影響を与えて、人々は、かえって前よりもっと悲惨な暮らしをしてしまった。」
「革命が始まった。勇者たちは悪魔として倒され、冒険とそれと関わる全てのものは人に憎まれた。『勇者が存在しない国を作れ!』は皆の願いとなった。古き帝国は潰され、新しい国が成立した。その新しい国は、つまり、今君がいる、このアリエントリアなんだ。時代の変わりとテクノロジーの発展とともに、ここはもうタンポポの原から建物の森になった。けれど、私たちは、このアリエントリアの原住民、またその騒ぎの犠牲者の子孫として、決して祖先の教えを忘れない。」
「だから、旅人さん。」、目の前、夕日の紅に染め上げられた彼女は立ち上がり、僕に背いて、穏やかで力強い口調で言葉を口から漏らした、「私たちは、勇者を名乗った君を、受け入れない。」
海岸を沿って、彼女は走って去った。砂浜に残された足跡は、地平線へずっと延伸している。
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