逆恨み

@yakigo

第1話 マネーウォーズ出演

 義男「今月の支払いが苦しい…」財布と通帳を見るが食費を切りつめてももう限界だった。不況と就職を転々とした、つけがきたのだ。派遣登録はしたものの楽な仕事はなく激務の工場ラインでの仕事や倉庫内作業等、気の進まないものばかりであった。俺こと藤原義男は一度は大学を卒業し教師になったものの精神的な弱さと対人でのコミュニケーション不足など災いし半年足らずでやめてしまい、飲食、ホスト体験出勤のみ、工場勤務等転々とし、職歴も浅く無駄に数の多いものとなってしまった。年はあっという間に35だ… 折角大学に行ったのに、なんだこのザマはと毎日やさぐれていた。貯金もつきかけ働く気力もわかない。

 とある日ー               

  気休めに動画サイトKチューブをみていた。マネーウォーズとかいう動画だ。なんでも起業したい人が芸能プロダクション社長主宰の番組に出演し起業企画や人格等評価を得られればマネージャーと呼ばれる色々な業界の社長複数人からお金を投資してもらえるものだった。

 俺が見た回は囲碁アプリを作り多くのユーザーに広めたいというものだった。だがいまいち説得力にかけマネージャー達の好感を得られずLoseとなっていた。これを見ていて気に障ったのは出演者への罵倒や暴言などであった。企画や経営計画はつたないものであったが主宰やマネージャーはそこだけでなく出演者が大学中退でありフリーターであった所をピックアップし、ろくでもないと言い放ちその人物の仕草、しゃべり方等まで派生し否定していった。ざっくり過去の履歴を見ると出演者の行動や頭がおかしく見える、寄行とも取られるようなことを起こす人物が出演する程視聴回数が増えているようだ。なんともまともな番組ではなく炎上と演出ともとれるようなエンターテイナー性が受けて人気がある番組だ。真面目でまともな企業話し等、はなから求めてないのだろう。

 だが俺も出てみたいと思った。死んだ親父に大学まで行かしてもらい、その投資分も稼げなく何もなせない自分に苛立ちを覚え何でもいいから起業したいと思った。だが目先の金がないのでとりあえず倉庫作業をして数ヶ月過ごしその間計画を練ろうと思った。

 あの動画を見て早一週間がたった。何をやろうかいくら考えても思いつかない。あまりにもお粗末な計画で応募しても門前払いされるのは目に見えている。…そうだネコカフェでもやろう。俺はネコを飼ってたしネコが好きだから。場所は歌舞伎町がいいだろう。ターゲットはホスト帰りの若い女の子だ。女の子はネコが好きだから見に来るかもしれない。そしてパパから貰った小金もあるだろうし。俺も女の子が好きだから全部理にかなっている!後は応募要項を満たして応募するだけだ。

 それから一週間程で資料を作成し応募した。俺は返事が来るまでひたすら倉庫作業のバイトをしていた。それから10日がたち見かけぬ番号から電話が鳴った。「芸能プロダクション砂虎営業担当阿倍と申します。藤原さんのお電話で間違いないでしょうか?」俺「はい!お電話ありがとうございます藤原です。」と答えた。阿倍「この度マネーウォーズの出演希望頂きありがとうございます。是非とも面談し話が纏まれば出演して頂きたく思います。」俺は歓喜し「はい!宜しくお願いします。」と答えた。後日砂虎のオフィスにて阿倍と面談が始まった。30分程度でネコカフェのコンセプトといくら欲しいかの希望額の確認をされた。当日の司会は砂虎の社長、主宰である砂原健児が行うということであった。阿倍の話によると砂原は短気でしつこいので番組での立ち振舞いは何を言われてもイエスマンでいて下さいという指示があった。俺はマネーウォーズの動画を見ていて奴の陰険さ執拗さは理解していたので快諾した。そして7月25日ー午前10時に砂虎オフィスに足を運び、俺は撮影会場の入り口でスタンバイしていた。

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