第16話 敵の正体
――ついに、ついに、この日が来てしまった。
対策本部長室に入ると、大岩はソファに深く腰掛け、意識的に呼吸を整えた。
海千山千の大岩でも、動揺を隠しきれなかった。
この日のために、アメリカにも黙って着々と準備を進めてきた。
が、まさかこんなにも早くこの日が訪れるとは。
少なくとも自分が生きている間、その敵は来ないだろうと踏んでいた。
大岩が取り組んできた「備え」は、いわば未来への投資だった。
未来のその時に備える。それが国防というものだ。
しかし、その「備え」を、まさか自分が使うことになるとは……。
思考がそこまえ及んだところで、武田と代田が入室してきた。
忌々しい思考を断ち切るように、大岩はふたりに近くに寄るよう手で促す。
武田と代田が、向かいのソファに収まった。
「いいか、これから話す話は、ひとまずこの三人だけの話にしてくれ」
大岩は最初、断るように告げた。
その表情にただならぬものを感じふたりは、黙ってうなずく。
「先程、君から聞いた今有事が未知の敵による攻撃だという見立て、私も正しいと思う」
代田が一瞬驚いた表情を見せたが、大岩の鋭い視線に慌てて表情を戻した。
「それどころか、じつは今有事は四十年以上も前から想定されていた」
絶句する、代田。
「……四十年も前、に?」と武田。
「あぁ、四十年も前だ。ただし、政府でもごくひと握りにしか、この情報は共有されていない。自衛隊内も同様だ。いや、もっと正確に言えば、私が信頼する人間以外には共有されていない」
代田も武田も、喉が渇くのを感じた。
きっと、これからとんでもない機密に触れることになると予感したからだ。
「おそらく、最初は信じられないと思うはずだ。実際、私も信じられなかった。それくらい信じがたく、かつ信じたくもない話だ。だが、この話は残念ながら真実だ。先程の映像を見て、確信した。あんなふざけた芸当ができるのはヤツらしかいない」
大岩はそこで言葉を区切ると、重々しい声で告げた。
「今有事の敵は、他国でもテロ組織でもない。この星の住人でもない。異星文明だ」
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