第13話 炎の試練

政府からの圧力と、市民の急速に高まる恐怖を背景に、防衛軍は極端な対策を採用することに決めた。市の安全のため、カイとその部隊は、近隣の住民を安全な場所へと避難させる厳重な準備を整えた後、巨大ナメクジに対して火炎放射器による攻撃を実行するという命令を受けた。


作戦当日、カイは緊張の面持ちで指令を下した。彼の手が震える中、火炎放射器がナメクジに向けて発射された。一瞬、全てが炎に包まれ、その場にいた誰もがナメクジが焼かれて終わりを迎えると確信していた。空は灰と煙で覆われ、高温の炎が周囲の空気を揺らしていた。


しかし、火が次第に収まると、その中から無傷の巨大ナメクジが姿を現した。炎に包まれていたにも関わらず、ナメクジの体は一切の損傷を受けていないかのように、静かにそこに佇んでいた。この光景に、カイも含めた防衛軍の隊員たちは言葉を失い、恐怖と驚愕に包まれた。


「どうして…まるで何事もなかったかのようだ…」部下の一人がつぶやく。


カイは深く考え込んだ。この攻撃が無効だったことは、ナメクジが単なる生物以上の何か、未知の能力を持っていることを示唆していた。彼はすぐに科学チームに連絡を取り、この現象の解析を依頼した。


「我々の理解を超えた生命体かもしれません。ただの火力では効かない…他の方法を模索しなければ。」科学チームのリーダーが答える。


その夜、カイは再び謎の声を求めて神社へ向かった。彼は何かしらの手がかりを得ようと、祈りと瞑想にふけった。すると、静かな声が彼に囁いた。


「力には力を、火には水を。対立ではなく、調和を求めよ。」


カイはこのメッセージから、ナメクジとの闘いにおいて、攻撃ではなく共存の道を探るべきだとの示唆を受け取った。彼はこの新たな洞察を元に、翌日の会議でナメクジとの共存に向けた新しいアプローチを提案することを決意する。


この炎の試練は、カイにとって新たな方向性を模索する契機となった。攻撃ではなく、理解と共生の道を探求することが、これからの彼の使命となる。

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