第12話 三重の影

カイは、科学チームと共にナメクジの行動を分析する作業に没頭していたが、彼らの努力は突然、新たな脅威によって打ち砕かれた。都市中央で静かに居座っていた巨大ナメクジが突如分裂し、完全に同じサイズの2体に増えたのだ。これにより、市内には3体の巨大ナメクジが存在することになり、その脅威は計り知れないものとなった。


市の緊急対策本部は再び緊急会議を開き、カイも参加して対策を協議した。会議室の空気は重く、緊張が張り詰めていた。ナメクジが分裂する能力を持っていることは、彼らの予想をはるかに超えた事態であり、これまでの対策が根本から見直されることになった。


「ナメクジがこのように分裂するのは、おそらく環境や何らかの外部刺激に対する適応の一環です。これは彼らがただの単純な生物ではなく、はるかに高度な生命体であることを意味しています。」科学者の一人が報告した。


カイは、この新情報を受けて、ナメクジとの対話を試みる新しい戦略を提案した。彼は以前、ナメクジが特定の周波数でコミュニケーションを取っていることを突き止めており、その周波数を使ってナメクジの行動を抑制、あるいは誘導する試みを進めることにした。


「我々はこれを機に、ナメクジとのコミュニケーションをさらに深化させ、彼らが何を求めているのか、また、どのようにして彼らと共存できるのかを理解する必要があります。」


その夜、カイは再び陽妃と共にフリースクールで市民を対象とした説明会を開いた。彼は市民たちに現状を説明し、皆で力を合わせてこの危機を乗り越えることの重要性を強調した。


「私たちの前に立ちはだかる問題は巨大ですが、共に協力し、知恵を絞れば、きっと乗り越えられます。」


市民たちもこの突然の危機に不安を感じつつも、カイの言葉に励まされ、協力して行動することを決意した。


一方で、科学チームはナメクジの分裂メカニズムとその生態に関する研究を加速させ、その知見を防衛戦略に活かす方法を模索し続けた。カイと陽妃は、これからも未知の挑戦と戦いながら、都市とその市民の未来を守るために全力を尽くす覚悟を固めていた。

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