第4話 消えゆく影

静寂の中、カイは都市の外れにある廃墟へと足を進めていた。防衛軍の一員として、彼の任務は、この地域での謎の液体の発生源を突き止めることだった。彼の心は重く、先の戦いでの一時的な勝利が、いかに脆いものだったかを痛感していた。


彼が廃墟に近づくにつれ、空気は酸っぱい匂いで濃厚になり、地面は所々、酸性の液体によって溶かされた跡で満たされていた。突然、不気味な静けさが破られ、悲鳴が響き渡る。カイは駆け足でその方向へと進んだ。


到着した現場は恐怖で凍りつくような光景が広がっていた。一人の男性が、巨大ナメクジの化け物によって放たれた酸性の液体に触れ、その身体が目に見えて溶けていく最中だった。男性の絶望的な表情、そして助けを求める叫び声が、カイの心をえぐる。


カイは即座に行動を起こし、持参していた中和剤を液体に向けて放つが、すでに遅かった。男性の体は徐々に溶け、最終的には形を留めずに地面に溶け込んでしまった。この光景はカイの心に深い傷を残し、戦いの恐怖と残酷さを改めて思い知らされることとなった。


カイは男性が持っていた遺品――家族の写真が入った小さな財布を拾い上げる。それはカイに、この戦いが単なる任務ではなく、多くの無垢な命とその未来を守るためのものであることを突きつけた。彼は遺品を大切にポケットにしまい、決意を新たにした。


この事件はカイに、化け物の脅威と向き合うだけでなく、その原因を根本から解決する必要があることを教える。カイは、この戦いが終わらないこと、そしてこれから先も続く長い戦いに彼自身がどう関わっていくべきかを深く考えさせられる。


夜が更けていく中、カイは防衛軍の基地に戻り、この日の出来事を報告する。しかし心の中では、彼はすでに次の行動を計画していた。失われた命の意味を胸に、カイは巨大ナメクジとの戦いをただ闘うのではなく、この脅威に終止符を打つための道を見つけ出すことを誓うのだった。

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