第101話 《おまけ》大事な友達

「舞先輩、明日から修学旅行ですね」

 

 隣を歩いている後輩ちゃんは少し不満そうな声で話しかけてきた。

 

「お土産楽しみにしてて」

「はい。三人で一緒の部屋なんですよね? 浮気しないでくださいね」

 

 私が美海にしか興味無いのを分かっていてそれは言っているのかい? と言いたくなるけど、ここはふざけないでおこうと思った。

 

「そんなのしませんよ」

「約束してください」

 

 美海が小指を出してくる。私はその小指ごと手を握って美海との距離を詰めた。

 

 彼女が喋れなくなるように少しかがんで、キスをする。

 

「約束――」

 

 彼女から少し離れてそう言うと、美海の顔がみるみる赤くなり耳まで赤くなった。分かりやすくてかわいいと思う。


「舞先輩、奥手だったくせにいつの間にそういうこと覚えたんですか」

 

 美海がすごい不服そうな顔で話している。

 前からしたいと思ってたけど、いきなりそれだと嫌われちゃうかなと思って控えてた。それだけだ。


「もしさ、言う機会があったら陽菜と星空に付き合ってること話していい?」

 

 友達の二人には知っていて欲しいというのもあるし、美海を疑っている訳ではないけれど星空への想いが完全に無いことを証明したいとも思い、聞いてみた。

 

「もちろんです。私もあの二人には知ってて欲しいので」

 

 その答えが聞けて私は安堵した。

 もしかしたら、まだ星空のことが好きなんじゃないかと思うこともあったから、とても嬉しく思う。



 ***


 修学旅行の時に二人に美海とのことを話すと案外すんなり受け入れてもらえた。自分の心のモヤモヤが一気になくなり気持ちが軽くなる。


 そして、もう一つ嬉しいことがあった。


 陽菜が好きな人について教えてくれた。まあ、美海から聞いていたことや陽菜の行動はわかりやすくて、授業中とか後ろの席から丸見えなので気がついていたが、陽菜の口から初めて聞けたことがうれしかった。


 そして、星空は好きかどうかは分からないけど、きっと陽菜のことは特別なのだと行動から感じる。


 まあ、付き合ってもないのにちゅーしてるとかはびっくりしたけど、二人の関係に口を挟むつもりは無い。


 ただ、陽菜と星空には幸せになって欲しい。


 安藤さんたちと遊びが終わって陽菜と星空のいる部屋に帰ると微笑ましい光景が広がっていった。


 陽菜も星空も幸せそうにくっついて寝ているのだ。


「ふふ、幸せそう……」


 明日起きた時に私が居たらきっと二人は気まずくなってしまうだろう。


 私は急いで安藤さんたちの部屋に戻った。


「ごめん、みんなともっと話したいからこっちで寝ていい?」

「大歓迎!」


 三人は快く受け入れてくれた。


 明日も星空と陽菜と何気ない会話をして、楽しい日が続けばいいなと少し狭い布団の中で目をつぶった。

 

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