第129話 ……さて、どうしようか?
「んん……体がいてぇ……」
昨夜、桜と交わったあとベッドが狭いので床で寝ることにしたのだが……
自分の腕を枕にして、固い床で寝るもんじゃないな。
桜の様子を見ると……穏やかな表情で眠っている。
……桜が無事で良かった。
昨日は散々歩き周って見つからず、川向こうにいるかもと思い、渡って探したら見つけることが出来た。
体も心もボロボロで、なんとか励ますことが出来てよかった。
桜とも結婚の約束が出来たし、あとは無事に帰れれば無事解決だな!
まぁ、その帰るのが問題なんだが……
外に目を向けるとそれなりに明るい。
携帯を見ると朝の8時を過ぎたあたりだった。
さて……これからどうするか……?
ひとまず、服を着て……探せば色々見つかるから他に何かないかこの小屋を探してみるか。
んー……昨日チラチラと見たけど、他に使えそうな物は……
ん? なんかベルみたいな物があるな? そういえば熊って音を聞いて離れていくんだっけ? これは持っていくか。
他にめぼしい物は……コンパスがあるけど、そもそも位置がわからないんじゃあっても意味ないよな?
部屋の中を見終わったので、外に出てみた。
「お? なんか水場があるな」
夜は気付かなかったが近くに水場があった。
その近くには小さな小屋……というかトイレっぽい?
水場の蛇口を回してみると―――
「おっ! 水出るじゃん!」
冷たい水で顔を洗い、トイレっぽい小屋を覗くとやっぱりトイレだった。
その辺でするよりはマシなので使わせてもらおう。
トイレを済ませて、昨日の見つけておいたタオルを濡らして、小屋に戻ると……桜が目を覚ましていた。
「雪君……?」
「おはよう、桜。ちょうどよかった。タオルを濡らしてきたから体拭くよ。左足以外で痛む場所はあるか?」
「…………」
「桜?」
「お姉ちゃん!」
「……桜姉?」
「なーに、雪君?」
「……体拭いてもいいか?」
「うん、お願いしてもいいかな?」
「おう」
生まれたままの姿の桜を丁寧に拭いていく。
ついでに血が滲んだ絆創膏も貼り直しておいた。
「ふぅ、とりあえずこんなもんか。足はどうだ?」
「動かなくてもズキズキする……」
「そうか……早く病院に連れて行ってやりたいが……どうやって戻るかなぁ……」
「さっきから気になってるんだけど、そのポケットからはみ出してるのは何?」
桜に言われてポケットから覗かせている物を取り出した。
「あぁ、宿泊してる施設のパンフレットだ」
「パンフレット?」
「時雨に肝試しの時に渡されてな?」
「ふーん? 見てもいいかな?」
桜にパンフレットを広げて渡し、横に座り一緒に眺めることにした。
「普通のパンフレットだね?」
「あぁ、色々施設の案内が書いてるぞ」
「ふーん、裏は……施設の場所が書いてあるMAPね」
「だな」
「こうやってみるとけっこう広いねー……あれ?」
「どうした?」
「この小屋の絵ってもしかしてここのことかな? ほら、ここに川が流れてるし」
桜が指さした所には確かに小屋の絵が描かれていた。
「……だとするとこっちの方角に向かえば戻れる?」
「そうかも!」
ここで待っていても誰か来るかどうかなんてわからない。
ならば―――
「行ってみるか!」
「うん!」
そうと決まれば、桜に服を着せて軽く食事をした後、桜をお手洗いに連れていき、小屋から幾つか物を拝借して、桜を背負って小屋を出た。
小屋から拝借した物で、ベルを俺のズボンに紐で結びつけて、首にタオルを巻き、コンパスと水を持ってもらいながら、施設が在るだろうという方向に歩いていく。
「雪君、無理しないで疲れたら休んでね?」
「あぁ、わかってるよ」
「あと30秒位歩いたら休む?」
「まだ小屋出て五分も経ってないから大丈夫だよ!」
「無茶したら嫌だよ?」
「疲れたら桜に……桜姉に抱きしめてもらって回復するからさ?」
「抱きしめてあげるけど……」
「? どうしたんだ?」
「昨日より足取りが重そうだから、無理してないかなって」
「……どれぐらい歩くことになるかわからないから、疲れないようにゆっくり歩いてるだけだよ」
嘘だ。
正直、昨日歩き回って足がパンパンだ。
朝起きた時はそんなに感じなかったが、桜を背負って歩き出すと昨日散々歩き回っていた時の痛みが戻ってきた。
だが、早く桜を病院に連れて行ってやりたい。
ここは無茶をする時だと思っている。
チリンチリンと音を鳴らしながらしばらく歩いていると、昨日渡った川に出た。
「ここで少し休憩してもいいか?」
「もちろん」
桜の許可をもらって桜を降ろして、俺は靴を脱いで川に足を突っ込みながら座った。
筋肉痛は発生してすぐは冷やすと良いので少しだけこのまま休憩だ。
痛みが出てしまったら間違ってもマッサージはしてはいけない。悪化するだけだ。
俺は足を冷やしながらボーっとしていると、桜が足を引きずりながら隣にやってきた。
「やっぱり痛いんでしょ?」
「……ちょっとだけな?」
「雪君、嘘はメッ! だよ?」
「……昨日散々歩いたから、足がパンパンで正直あまり歩きたくはないな」
「……無茶ばっかりして」
そう言うと桜は横から俺の頭を自分の胸に抱き寄せた。
「……ありがとう、桜姉」
そのまま少しの間、桜に抱きしめられながら一休みした。
★********★
★1800突破しました! ★をつけて頂き、ありがとうございます!
三連休は全然書き溜め出来なかったです……
応援、フォロー、星を付けて頂き誠にありがとうございます!
創作意欲に繋がるので応援、星を何卒・・・!
コメントもお待ちしております!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます