20万PV記念SS 全校生徒と友達になったと思ったら、1週間後には全員と婚約していた件について

 俺は無事に高校に入学した。

 まぁ、無事も何も受験などしていないのだから入学して当然なんだが。

 晴れての高校生活! 青春を満喫するぞ!

 そんな意気込みで入学式当日、なぜか俺は新入生男子代表に選ばれた。……何故に?

 まぁ、そんな細かいことはどうでもいい。どうせならここでアピールした方が色んな女の子と仲良くできるだろう。チャンスだな!

 入学式が行われる体育館には入学する生徒以外に、教師や保護者などが揃っていた。

 入学式は順調に進み、俺の挨拶の番が回ってきた。


「続きまして新入生の挨拶、新入生男子代表 大淀雪」


「はい!」


 正直緊張する。社会経験があるとは言え、こんな大勢の人の前でスピーチするほど場数を踏んでいるわけではない。

 だが、男は度胸と言うぐらいだ。なんとか乗り切るしかないだろう。そう、俺の輝かしいバラ色の高校生活の為に!

 俺は壇上にあがり、挨拶を始めた。


「春の息吹が感じられる今日、私たちはこの高校に入学いたします。本日は私たちのために、このような盛大な式を挙行していただき誠にありがとうございます。新入生男子を代表してお礼申し上げます。 」

 

 俺は準備された挨拶をつつがなく読み上げていく。


「伝統ある高校の一員として、責任ある行動を心がけていきます。校長先生を初め先生方、先輩方、どうか暖かいご指導をよろしくお願いいたします。」


 そして、ここからだ。ここからアドリブで何か一言二言しゃべるように言われている。

 スゥー……よしっ!


「私個人としては新入生のみならず、在校生の方とも仲良くなりたいと考えております。私から積極的に皆さんに声を掛けていこうと思いますが、よろしければ、皆さんからも私に声を掛けて頂き、仲良くして頂ければ幸いです。以上をもちまして、新入生男子代表の挨拶とさせていただきます。新入生男子代表 大淀雪」


 どうだっただろうか? ……反応がない。あれ、ダメ? 失敗した?

 俺は緊張した面持ちで自分の席に戻る。

 そして、席に着くと横に座る時雨から脇腹に肘打ちされた。


「あんたやってくれたわね……」


「え、やっぱりダメだった? 無難に仲良くなりたいってアピールしただけなんだが……」


「……もう、知らないからね? ちゃんと自分の発言に責任持ちなさいよ?」


「……? お、おう」


 そして、入学式が終わり、次の日割り当てられたクラスにやってきた。

 時雨とも同じ教室になった。何かあれば手助けしてもらえるだろうから安心だ。

 周りを見渡すと……全員俺を見ているな。だが、誰もまだ話しかけてこない。

 やはり、入学式のスピーチは失敗だったのだろうか?

 自分の席に座り、時雨と話していると担任の教師がやってきた。


「初めまして、私がこのクラスの担任です。みんなよろしくね。早速だけど、みんな自己紹介をしていきましょうか? その方が良さそうだし」


 そう言って先生は俺の方をチラッっと見てきた。


「それじゃ、一番前の廊下側から順番に自己紹介してくれる?」


「はい! 私は―――」


 自己紹介が始まり、一言二言しゃべって次の人と進んでいく。

 いよいよ俺の番だ。

 

「じゃあ次は、大淀君いいかしら?」


「はい! 大淀雪って言います。男ですが、皆さんとこれから仲良くできればいいなと思ってますので、遠慮せずに話しかけてもらえるとうれしいです。私からも近場の人から声を掛けて、輪を広げていこうと思いますので、皆さんよろしくお願いいたします」


 無難に挨拶できたのではないだろうか? 相変わらずみんなはこちらを物珍し気に見ている。

 時雨は……頭に両手を当てて考え込んでいる。

 そして自己紹介が終わり、次のホームルームまでの空き時間になったのだが……俺の前の席の子が後ろを向き、声を掛けてきた。


「お、大淀君!」


「は、はい!」


「席が近くだね! これからよろしくね!」


「あぁ、これからよろしくな!」


「大淀君……雪君って呼んでもいいかな?」


「あぁ、かまわないよ。俺も君のこと「雪君!」ん?」


 いつの間にか俺の周りにクラスの女子達が集まってきていた。


「雪君! これからよろしくね! このあと何か用事ある? 親睦を深めたいなって思うんだけど」

「ちょっと待って! 私も仲良くしたい!」

「あたしだって雪君とおしゃべりしたい!」

「雪君はもう結婚相手決まってる? まだなら私とかどうかな?」

「雪君雪君、このあと二人でホテルとかどうかな? もちろんLOVEの方だよ♡」

「「「抜け駆けするな!!!」」」


 うん、カオス。これはどうしたらいいのだろうか……とりあえず、順番に話をしていくしかないだろう。


「えっと、みんなありがとう。俺もみんなと仲良くしたいから、出来れば順番に話をしないか? 並んでくれると助かるんだが……」


 そう言うと、急にみんな列を作りだした。大変だが……やるしかないだろう。


「あー時雨、フォローだけ頼めないか?」


「……えぇ、わかったわ」


 時雨は俺の傍に来てくれて、一人一人と挨拶をしていく。


「雪君の好きな女性のタイプは?」

「雪君、私のことお姉さんって呼んでみない?」

「雪君は今何人奥さん決まってるの?」

「ユッキーは胸は大きい方がいい? それとも小さい方?」

「雪君は第何夫人まで娶るつもりなのかな?」

「雪君はエッチな女の子は好き?」

「雪君のことお兄様って呼んでもいいかな?」

「雪君はこのあと親睦会に参加するよね? ホテルまでお持ち帰りOKだよね?」


 こんな感じの質問ばかりである。もうちょっとジャブくらいの質問にしてくれませんかね?

 というかもう、けっこうな人数話したと思うんだけど、全然終わらなくない?

 なんか廊下見ると廊下の窓に女子生徒達が張り付いてるんだけど?

 列もいつの間にか廊下まで続いてるし……これいつ終わるの?


「あーやっぱりこうなったわねー」 


 時雨がジト目であきれた口調風に言ってくる。


「えっ、なんで?」


「そりゃ、入学式でみんなと関わりたいとか言うからでしょ。さっきチラッと廊下見てきたけど最後尾が見えなかったわ」


「…………」


「こうなると思ってたのよねー」


 後ろから声が聞こえてきたが、担任の先生のようだ。


「えぇーっと……すみません」


「いいのよ。どうせこのあと大した話があるわけでもないから、このまま頑張って。その方がこの騒動治まりそうだから」


「わ、わかりました」


 そこから俺は来る人来る人に挨拶をして質問に回答をした。

 正直、名前を言われても覚えてないし、徐々に頭が回らなくなってきてなんと答えたのか覚えていない。

 喋りすぎて呂律が回らなくなってきてから、ちょくちょく時雨が飲み物を渡してくれるが、焼け石に水だ。

 どれだけの人数を相手にしていたのだろうか? 

 終わりが見えたころにはお昼休みも終わり、5、6限目の頃合いではなかろうか?


「や、やっと終わりが見えてきた……」


「私も傍にいるだけで疲れてきたわ……もう少しよ、頑張りなさい」


 そして、残りの人達と挨拶と質問を終え、俺と時雨は机に突っ伏した。


「うばぁー……もう無理……きつい……」


「お疲れ様。途中から質問への返答が怪しかった気がするけど……」


「二人ともご苦労様」


 突っ伏している俺達に担任の先生が労いの言葉をかけてくれた。


「長々とすみませんでした……俺はどれぐらいの生徒と挨拶してたんでしょうね」


「多分全校生徒だと思うわよ? 貴方の所為……というのはちょっと残酷ね。貴方に挨拶をしようと噂が広がって全教室授業停止になったから」


「「……………」」


 俺と時雨は目を見開き、口を大きく開け、事態を受け入れられずにいる。


「にしても、来るもの拒まずの精神で妻を迎え入れるのは流石にどうかと思ったけどね?」


「「えっ?」」


「えっ? ってそう貴方が回答したんじゃないの? 噂になってるわよ?」


「ゆ、雪……?」

「お、俺はそんなことを言ったのか?」

「わ、わからないわ。途中から私も疲れで意識朦朧としてたから……」


 俺と時雨は噂を受け入れられず放心しているが、担任の先生はさらに残酷な事実を突きつけてきた。


「まぁ、本当に噂ならいいんでしょうけど、明日から大変だと思うわよ」


 そんな言葉を残し、担任の先生は去って行った。

 俺と時雨は放心状態のまま家に帰宅し、海にあきれられ、次の日を迎えたのだが……

 クラスに入ると既に様子が違う人がいた。


「雪、今日は私とお昼食べましょうね」

「あなた、お昼ご飯持ってきた? お弁当作ってきたから一緒に食べましょ」

「お兄様、朝の挨拶しよう? ハグとチューとナデナデのハッピーセットお願い!」

「ユッキー! みんなと結婚したいって本当? あーしもいいかな?」

「旦那様! 一緒にお勉強したいから机くっつけてもいいかな?」

「雪君、今日はお姉ちゃんと放課後デートしない?」

「ゆ、雪君。私も貴方と結婚したいんだけど……」

「パパ、今日は帰りにお買い物しようね。帰りはどっちの家にいく? それともホテルに行っちゃう?」

「ご主人様、今日からご主人様の家でお世話をしようと思うのですが、ご主人様のベッドは何人まで寝れますか? 必要であれば、布団を手配しますので」

「雪、今日の晩御飯はスッポン鍋でいいかな? ちゃんと初夜用の下着は準備してるから期待しててね♪」


 なんなんだこれは……昨日の俺は何と答えたんだ……


「……雪、なんとかしなさいよ……」

「なんとかって言っても……」


 現実逃避しようと廊下の方に目を向けると……またしても女子生徒達が廊下の窓に張り付いていた。 

 あれ、昨日この光景見たな?


「失礼します」


 誰かが教室に入ってきた。

 一言で表すなら高嶺の花という言葉が相応しいだろう。

 それほど、美人な人が教室に入ってきて、俺の前に現れた。


「雪君、流石にこの状況は看破できないから、私の方でまとめていいかしら? できるだけ貴方は署名するだけの形にするわ」


「え、えぇ、あの、貴方は……?」


「生徒会長よ。昨日挨拶したけど……覚えてないようね?」


「すみません、昨日は人に会いすぎてちょっと覚えきれてないです」


「まぁ、そうでしょうね。今後は忘れないようにしてね? 未来の旦那様に忘れられるなんて悲しくて泣いてしまうわ」


「……俺は会長とも結婚の約束をしたんですか……?」


「直接はしてないけど、雪君が誰でもカモン! って言ってたらしいから、みんな乗り気みたいよ? まぁ、私が未来の旦那様の為にまとめてあげるから待っててもらえる?」


 本当に俺はそんなこと言ったのか!? 絶対どこかで盛られてるよね!?


「……できれば、穏便に済む方向でお願いします」


「善処するわ」


 生徒会長はその一言だけ残し、教室を去って行った。

 ふと廊下を見ると教師の人達が教室に戻るように呼び掛けているみたいだ。


「時雨よ……俺はどうなるのだろうか……」

「……ちょっと理解が追い付かないからそっとしておいて頂戴」


 時雨はまた頭を抱えている。

 俺もそうやって逃げたいんだが?

 そして、休み時間が来る度に、みんなと交流を深めた。

 それとなく、結婚に関してはよく考えさせて欲しいと伝えはしたが……効果はあったのだろうか?

 そんな感じで数日を過ごし、金曜日になり、生徒会長が現れた。


「お待たせ。この書類に全部拇印を押してもらえる? そうすれば全部まるく治まるから」


 目の前には数百枚の紙の束が置かれていた……


「これ全部ですか……?」


「穏便に済ませたいんでしょ? あきらめて頂戴」


 俺は紙を取り、内容を読もうとするが―――


「そんな内容を読みながら進めてたら、先に進まないわよ? 今日中に終わらせてもらわないと困るからそのつもりで」


 生徒会長から朱肉を渡され俺は無心で拇印を押し続けた。

 時雨は……生徒会長と何か話しているようだ。

 俺は授業中もお構いなしに拇印を押し続ける。

 指の指紋はもうないだろう。さっきから、紙に押される拇印がただの楕円になってきてるもの。

 俺は必死に拇印を押し続けなんとか昼休み終わりに押し終えた。

 

「ご苦労様。あとはこちらで処理しておくわ」


 いつの間にかに来ていた生徒会長はその紙の束を持ち、そそくさと教室をあとにした。


「づがれだー……」


「すごい紙の束だったわね……内容は読んでないけど、大丈夫そうなの?」


「知らん、読もうとしたけど、今日中に終わらせてくれって言われてさっさと押してた。」


「……もしかして嵌められた?」


「……えっ?」


「生徒会長と話をした時に、雪には十分に内容を理解させて押させるから心配しないでって言われたから放置してたんだけど……」


「…………」


「……もう何人妻が増えてもいいけど、私と海が第一、第二夫人って言うのは忘れないで頂戴ね」


「……俺はどうなるんだ」


「まぁ、雪が撒いた種だし、なんとか頑張りなさいな」


 呆然とする俺を我関せずの構えで時雨は貫き通すようだ。

 

 そして、金曜日が終わり、すべてを忘れて土日を過ごした。

 迎えた月曜日、朝の朝礼で臨時生徒総会が行われる通達があった。

 俺らは体育館に移動し、その時を待つ。

 全校生徒が揃ったのだろうか? 生徒会長が壇上に上がり、挨拶を始めた。


「本日は臨時生徒総会にお集まり頂き、ありがとうございます。今回の臨時生徒総会で扱う議題は……大淀雪君との結婚に関してです」


 …………What's?


「先週の金曜日に大淀雪君との結婚希望者の紙を提出し、すべてに拇印を押して頂いたので、皆さんは大淀雪君と結婚することが決定しました」


「「「「「キャーーーーーーーーー!!!!」」」」」


「つきまして、結婚式は3年後の1月、大淀雪君の18歳の誕生日に合わせて行いたいと思います。式場選びに関してはまた後日決めますので、皆さんもどこがいいか調べておいて下さい。また、ご両親への挨拶周りの日程も生徒会で予定を立てますのでそのつもりでお願いします」


 これは何が起こっているのだろうか?

 思わず時雨の方を見てみたが……悟りを開いた顔で目を瞑っている。


「また、大淀雪君は第1、第2夫人までは決定しているようなので、第3夫人をこの場をまとめる私が頂かせてもらいます」


「「「「「ブーーブーー!!!」」」」」


「異論は認めません。では、残りの第4夫人以降をこれより抽選で決めたいと思いますので、順番に壇上に上がりこのボックスから紙を引いて下さい。引いたらこちらで準備した大淀雪君の婚約者一覧に名前の記載を行ってください」


 生徒会の人が大きめのボードを運んでくる。

 題名は……大淀雪婚約者一覧と……

 俺は事実を受け止められず、呆然と眺めているが、続々と生徒が壇上に上がり、ボックスから紙を引いて、一喜一憂している。


 さて、もういいだろうか?

 

 全校生徒と友達になったと思ったら、1週間後には全員と婚約していた件について―――誰か助けてくれぇぇぇぇ!!!



ーTRUE? ENDー


**********************************

今回はアンケートを取らず、勢いだけで書きました……

タイトル考えたら書きたくなったから仕方ないね(反省の色なし

未来のIFルートとして見てもらえればと……

次回の30万PVとかの前にまたアンケート募集とかやりたいと思います。


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