第35話 復讐の連鎖の連鎖
『ロイーーーッッッ!!!』
炎城様の絶叫が聞こえる。
:ぎゃあああああ
:直撃くらった!
:あああ流石にこれは大破か?
コメント欄もロイを心配する言葉で溢れている。
だが、私はまだ、そこに加わるわけには行かない。
敵が、まだ立っている。
ロイに膝を突かせた、敵が。
『ハル、機体壊してもいいよ。私が許す。』
「承知いたしました、お嬢様。」
壊す。敵を?この筐体を?
どっちもだ。
少々舐めプが過ぎたらしい。
そんなにグロテスクがお望みなら
見せてやる、
私とお嬢様のアイデンティティが黒く溶けて混ざり合う。
---メインシステム:戦闘モードに移行します
『ベノちゃん!敵機の右側に張り付いといて!すぐに弱点だらけにしてやる!』
グライドブースト軌道。
薙ぎ払いなど無限の彼方に置き去れる速度で敵機の右半身に取り付き、焼かれて抉られカサブタのようになった装甲を、片っ端から払い落とす。
ボロボロと崩れた外装の下から、熱線放射口が顔を覗かせた。
もはやイヴの狙いを遮る物は何も無い。
『イヴ、焦らず一個ずつ確実に潰して。』
「御意。」
静かなやり取りとは裏腹に、恐ろしい速さで矢継ぎ早に放たれたスナイパー手裏剣が、敵機の熱線放射口を…動力炉に直結した剥き出しの魔力機構を次々に撃ち抜いて行く。
次はどうしてくれようか、と下から睨め上げた時、ここ数十分で何度も見た、四角い箱が頭上を通り過ぎて行った。
『クラスターマイン、一発だけ撃てました!これで決めて下さい!』
「流石に、これ以上の支援はもう出来ねえ…あとは頼むぜ…」
ロイだ。耐熱コートの限界まで熱線を受け続け、もはや戦闘機動は行えない。
だが、それでもクラスターマインで最後に一発、火力支援をしてくれた。
ありがたい。これなら確実に勝てる!
「お嬢様、ここはやはり…」
『そうだねえ!MVPだし、ホムラちゃんのリクエストにお答えしちゃおうか!』
パルスブースト起動。
こちらを狙う特務機の顔面に取り付き、パリィで強引に攻撃を逸らす。
なにもダメージを与える必要は無いのだ。
なぜって?
どうせ次の一手で死ぬからだよ。
BOOM!BOOM!BOOM!
炎の術で作り出された小型爆弾が、何度も何度も立て続けに、敵機の表面で火を噴いた。
何度も何度も爆風に揺らされ、緩んでガタついたその外装の、攻撃用のスリットに鉤爪を突っ込み、力任せに生皮を剥がす。
「AAaAaaarrRRGg!?!!」
:痛ええええええ
:今更ですがグロ注意
:ヒュンってなった
スリットの数は、イコールこの間抜けなシールの剥がし口の数と同義だ。
こんな物を付けて来なければ、こうも容易く外装をこじ開けられたりはしなかっただろうに。
自業自得。
『ベノちゃん!反対側も剥けたよー!』
:んな蜜柑みたいに
:表情が可愛いから余計怖いわw
ニコリと天使の笑みを浮かべるお嬢様のアバター。
対する附子島様のアバターは、ニタリと悪魔じみた亀裂のような笑みを返す。
『ありがと、やっさん。行くよ、イヴ!』
「御意。」
イヴがフワリと、重力を感じさせない典雅な動きで跳躍する。
そうして敵機の頭上を飛び越え、上下反転した姿勢のまま、目にも止まらぬ速さでクナイを投げ放った。
最初に手裏剣で潰せなかった熱線放射口が全て破壊され、ついに特務機の動力炉がオーバーロードを起こす。
「AGYYYyyyYyy!!!」
苦し紛れに、口部の魔力砲を再び薙ぎ払わんと振りかぶる特務機。
バカめ、お嬢様から目を逸らすとは。
『なんべんも、なんべんも!同じネタばっかしつけぇわッッッ!!!終わりや!おるァァ!!』
敵機の頭部に下から組みつき、全ブースターを同時噴射して、今度は無理やり上を向かせる。
「AAAaaAAaarrrrRRRgGgGG!!!」
断末魔の咆哮のような熱線が収まったあと、未確認機はグシャリと、その場にうずくまるように擱坐した。
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