254 衝撃! 火札世界の真実!
本来なら、俺が直接ファイター仙人のところまで行く予定だったのだ。
それが、なんかキアがたまたま仙人のいる山の麓で仕事をしていたから、こうなった。
『ファイター仙人記念館を作るんだって、それで誰が計画立てるかってなった時に、まぁ私しかいないでしょ……って』
『金儲けに儂の名前を使わんでほしいのう』
『銅像立てるって言ったら、結構ノリノリだったくせにー』
『銅像は別じゃ』
磨いてピカピカにしたいのー、とか言いつつ。
なんか向こうでも色々あるらしい。
なんというかアレだな、キアって家族との繋がりがほとんどないから。
ファイター仙人のところでの疑似家族みたいな経験が、結構本人の中で比重大きいよな。
俺のことを慕ってくれるのもそうだけど、ファイター仙人もたまに会いに行く実家の祖父みたいな扱いになってる。
『ところで、ミツルよ。本来ならお前さんが会いに来ると言っておったが……どうするつもりだったのじゃ?』
「どうする……って、秘境を乗り継いでいくつもりだったけど」
『やーっぱりか、まったく。お前さんは色々と無茶をしすぎじゃの』
『秘境を乗り継ぐってどうやるの?』
不思議そうなキアの声。
簡単に言うと、秘境には時折様々な場所へつながっている秘境がある。
仮面さんところの秘境とかな。
そういう秘境を複数使って、ファイター仙人のいる山の近くまで飛んでいくのだ。
アレだな、ドラクエの旅の扉だな。
『まずどうやってその複数の秘境の居場所を探るのさ』
『気配を感じ取る。俺の想定だと一日有ればそっちに着くはずだったんだが』
『無茶なスケジュールだなぁ』
本来なら、飛行機等で山の麓まで移動して、そこから登山だ。
多分たどり着くだけで二日はかかる。
別に急いでいるわけではないけど、この方が楽なので俺は秘境を渡り歩く予定だった。
『それで聞いたよ? 終焉カードと蒸気世界だっけ? またミツルにぃはとんでもないことするねぇ』
「今回はヤトちゃんが起点だよ」
『その子をそういうふうにしちゃったのはミツルにぃでしょ、責任取って! 私みたいに!』
「キアに対してどう俺は責任を取ればいいんだよ……」
こほん。
今回の目的はファイター仙人に話を聞くことだ。
キアと雑談することじゃない。
『まったく、お前さん達はいつもそうじゃのう。儂を置いて話を進めるのじゃ』
『ほらー、おじいちゃん拗ねちゃったじゃない! はやく本題にはいろ!』
『拗ねとらんわ!』
こほん。
とにかく、この世界の終焉カードについて、仙人に聞くとしよう。
『それで、終焉のカードじゃったのう。この世界にも来ておるぞ、もう数千年も前のことじゃがな』
「やっぱり、そんなことじゃないかと思ったよ」
カードがやってきたのがずっと昔であることも、仙人がそれを知っていることも、だ。
『ただし、やってきたカードは……七枚じゃった』
「七枚も?」
『やって来た時点で、世界がすでに”種火の時代”を終えておったからのう』
仙人から中々ワクワクする単語が飛び出したが、今はそこは本題ではないか。
後で話を聞いてみることにしよう。
『終焉のカードは複数存在するが、基本的には七枚一組の存在じゃ。そちらの世界では……七星、だったかの』
『なんか、世界を終わらせたりしようとする悪役って七人になりがちだよね』
まぁ、数としてちょうどいいからな……物語の後半で登場して、メインキャラと一人ずつ戦ったりするのに。
もしくは、シーズン2から登場してメイン悪役とするのに丁度いい数なのだ。
セブンスターズとか、バリアン七皇とか。
『蒸気世界の他にも、複数蒸気世界とつながった世界があるじゃろ。その世界に一枚ずつ七星は訪れているはずじゃ』
「蒸気世界の他には、絢爛世界とか和国世界があるな」
『近代ってかんじだねー、他には開拓世界とか中華世界とかありそう』
『蒸気世界とつながっていない世界は、”まだ”つながっていないだけなのじゃろう。もしくは、繋がる前に滅びたかじゃの』
後者はできれば遠慮願いたいな……
ただでさえ、蒸気世界だけじゃなくて絢爛世界も救わないといけないのに。
負担が、負担がでかい……!
「とすると、エレアの世界に来た終焉カードはまた別口かな」
『時代が違うからの、終焉カードは近い世界、もしくは一つの世界に七枚やってくるからのう』
『まぁ、撃退自体はできてるんだよね? ならよかったね、エレアねぇ』
俺の横で、両手を組んで=ω=みたいな顔で寝ているエレアは、未だ目を覚まさない。
これ、多分起きたエレアがオチを天丼するやつだな……
『ともかく、それ故終焉カードは一度に七枚全てを取り除かねば解決したとは言わん』
「どっちにしろ、やることが増えるのは確定か……」
『とはいえ、そこまで心配はいらんじゃろう。和国世界に終焉のカードはまだやって来ておらんのじゃろう?』
「あー、それはそうだな」
確かに、ナツメさんから終焉カードの話を聞いたことはない。
ショルメさんが言及していなかったのもあるしな。
「蒸気世界を含む七つの世界は、まだ終焉のカードが来たばかりってことか。最初に絢爛世界、次に蒸気世界、と」
『そういうことじゃ』
『蒸気世界と絢爛世界の問題さえ解決すればいいってことだね』
「多少は楽になったよ」
終焉カードの詳細については、なんとなく解った。
問題は解決策だ。
「んで、仙人。解決策についてなにか案はあるか?」
『ふむ……この世界に落ちてきた終焉カードの中には終焉をもたらすことに成功したカードがある』
『え? それって不味くない? っていうか終焉がもたらされたのに、どうして私達は生きているの?』
『世界が広すぎて、滅ぼせる範囲に限界があったのじゃ』
なんか、隕石が世界各地に落ちてきたみたいな話だな。
それだと気候が変わって結局世界が滅びちゃうけど、そういう余波がなかった隕石みたいなイメージだ。
『だが、その後の対処が上手く行っての。幸いにも今に影響が残ることはなかった』
「どうやったんだ?」
『北欧神話は、お前さんも解るじゃろ?』
「……もしかして、ラグナロクか?」
北欧神話、創作のモチーフにもよく使われるアレ。
カードのモチーフでも、名前を聞くことが多いな。
ネッカ少年の最終エースとか、思いっきり<バトルエンド・ラグナロク・ドラゴン>だし。
『うむ、北欧神話に落ちてきた終焉のカード――ラグナロクによって、北欧世界は一度終焉を迎えた』
『たしか、終焉を迎えた後に世界が再生して、二人の子供が生き残るんだっけ?』
「あー、つまりアレか? 一度滅ぼしてから再生させたのか」
『うむ。そちらの絢爛世界といったか、それも再生させることは可能じゃろう』
相当に困難な偉業となるが、お前さんなら普通にできるじゃろう。
と、ファイター仙人。
いや流石に、それはどうだろう……できるか?
まぁ、後でやってみるか。
ともかく。
『というか、終焉カードが来たのって、神話の時代だったんだね』
『うむ。この世界は昔、各地に無数の神話が点在していた。その神話の中で、神はモンスターとして人と共に生きていたのじゃ』
そして、話は先程の「種火の時代」へと話が移る。
その前にしたエレアとの話にあった「人とモンスターの違い」に関する話でもあった。
『人とモンスターの違いはなにか、それは種火の時代を生きているかどうかじゃ』
「蒸気世界のような世界は、種火の時代を生きているのか」
『うむ。蒸気世界は世界が狭いじゃろう。それは世界が種火の時代を終えていない証。人類の文明が発展し、自由に生きられるようになれば世界とは広がっていくものなのじゃ』
なんというか、アレだな。
文明の発展と共に神秘が薄れていく、みたいな話だな。
蒸気世界の文明レベルは近現代並だから、また少し違うんだろうけど。
『我らの世界で言えば、神話の終わりこそが種火の時代の終わり。そして神話の中には北欧神話のように終焉が描かれる神話もある』
「明確な終わりのない神話は、終焉カードを撃退したってこと?」
『まぁ、そう思ってもええのう』
日本神話とか、シームレスに現代の歴史につながるからな。
じゃあ具体的に日本神話のどこで終焉カードが撃退されたんだろう。
天孫降臨? 八俣の大蛇が終焉カードだったりする?
『ともあれ、そうして神話の時代を人が終えたことで、人はモンスターにならなくなっていったのじゃ』
「それって、やっぱり人とモンスターって違いはないのか?」
『同じ人型であれば、の。精霊型のモンスターはまた別じゃ』
つまり、世界そのものが種火の時代であるかどうかが、人がモンスターになるかどうかの違いってことか。
なんとも、壮大な話だな。
「ところで、終焉カードに滅ぼされてしまったところはともかく、撃退したところの神様はどうなったんだ?」
『今もカードとしてこの世界を見守りつつ、遠くへ行ったのじゃ。人が神の手から離れれば、神は人の近くから離れるものじゃからな』
神話っぽいなー。
いやまぁ、順序が逆な気もするが。
『とはいえ、流石に全ての神がいなくなると、不安になる神も多い。そこで神は、代理人を一人立てることにした。そして今も、その代理人はこの世界を見守っておる』
「へー、そんなやつがいるのか。ファイトしてみたいな……」
『…………』
『…………』
なんで黙るの!? 代理人ってことは強いんだろ!?
ファイトしてみたいって思うのは普通だよな!?
あとエレアは、なんでいきなりカッと目を見開いてこっちを見るんだよ。
やっぱりエレアがオチ要員だったな!?
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