第84話 三人で


 『スペイス』を出て宿屋に戻ると、二人の姿が見えた。

 どうやら既に出発の準備が整っている様子。

 俺も大した荷物を持ってきていないため、いつでも出発することができる。


「エリアス様、どこに行っていたんですか! 急に逃げ出すから心配していたんですよ?」

「二人が急に変なことを言い出すから、落ち着くために『スペイス』に行っていたんだ」

「あっ、ズルいぞ! 私も最後に行きたかった!」

「そう言われてもな……。流石にもう馬車に乗らなきゃ行けないから時間がない。……というか帰りは馬車でいいのか? 行きは歩きの方が良いって言っていたが」


 特にギーゼラに関しては、絶対に歩きの方がいいと言っていた。

 何となく馬車を取ってしまったが、帰りは歩きで――みたいな話もしていたしな。


「大丈夫だ。歩きで帰りたい気持ちはあるが、それ以上に今日の野宿は避けたい。……絶対に今晩はエリアスとイチャイチャしたいからな」

「まだそれを言うのか」

「当たり前だろ! それよりもどっちとするのか決めたのか? エリアスには決断してもらわないと困る」

「困ってるのは俺だって。どっちかなんて選べる訳ないだろ!」


 そんな会話をしながら、時間がないため馬車へと乗り込む。

 嫌な予感しかしなかったのだが、案の定馬車の中ではクラウディアとギーゼラによる際どい勧誘合戦。


 見ようによっては幸せではあるのだが、馬車内で手を出すわけにもいかないため、完全なる生殺し状態。

 せっかく『スペイス』で冷静になったのも意味をなさず、俺は悶々とした気持ちを抱えたまま、半日間馬車揺られ続けた。



「ふぅー、やっと着きました。座りっぱなしというのも意外と大変ですね」

「エリアス、まずはご飯に行くか? 流石にお腹が空いてしまった」

「まずは絶対に宿探しからだ。泊まれなかったら最悪だからな」

「ですね。宿を探してから、ご飯に行きましょう」


 本当ならご飯も食べずに宿に籠りたい気持ちが強い。

 朝から誘われ続け、理性が限界を迎えているからな。


 ……ただ、今日は何も食べていないのも事実のため、宿を取ってから軽くご飯。

 それからは――寝ずにエッチしまくるつもり。


 値段問わず探したことで宿は無事に取れ、俺は目をギンギンにさせながら飯を食べた。

 それからすぐに宿に戻り、シャワーを浴びて準備を整える。


 神龍祭が始まってからは一度も致しておらず、更に今日一日誘われ続けたせいで爆発寸前。

 どちらか部屋に来ていたらら即始める――俺はそのつもりでお風呂からあがって部屋に戻ったのだが、俺の部屋に来ていたのはまさかの二人。

 ……本気で俺に選ばせるつもりなのか?


「エリアス様、お待ちしておりました」

「まさか……本当に俺が選ばなきゃいけないのか?」

「ずっとそう言ってきただろ? ……それで、私とクラウディアどちらにするんだ?」


 この極限の状態で、極限の選択をしなくちゃいけないのか。

 贅沢な悩みなのだが、贅沢過ぎて決められる気がしない。


 本能に任せてギーゼラと獣のようなエッチもしたいし、天使のようなクラウディアとイチャイチャエッチもしたい。

 爆発寸前の状態でも決断できず……強いて言うなら、二人同時にしたい。

 その考えが頭の中をぐるぐると回り――そして俺はつい口走ってしまった。


「…………二人としたい」

「へ? ……ふ、二人と!?」

「……ふふ、私は構いませんよ? ギーゼラにも伝えてましたが、三人で致しても面白そうだと思ってましたから」

「エリアスもクラウディアも正気なのか?」

「もちろん正気です。それともどうしますか? ギーゼラは今日、一人で寂しく寝ますか?」


 かなり無茶苦茶なことを言ったつもりだったのだが、思っていた何倍もクラウディアが乗り気。

 ギーゼラは流石に困惑しているが、クラウディアにそう問い詰められて考え込んでいる。


「…………一人で寝るのは嫌だ。……え、エリアスが私とクラウディアとしたいと言うなら……か、構わない」

「本当にいいのか?」

「もちろんです。私はギーゼラのことも好きですしね」


 そう言うと、クラウディアは顔を真っ赤にしているギーゼラの頬に軽くキスをした。


「ちょ、ちょっと! 何でクラウディアが私にキスしたんだ!」

「恥ずかしがっているのが可愛かったのでつい。それに……三人でするって決めたんですよね?」

「決めたが……私とクラウディアがエリアスに相手してもらうんじゃないのか?」

「それではつまらないです。せっかくなら私とギーゼラも楽しみましょう。エリアス様もそちらの方がいいですよね?」

「え? あっ、まぁ……そ、そうかもしれない」


 俺以上に積極的なクラウディアは、それから何度かギーゼラ頬に軽くキスをした後、不意を突くように首元へのキスも行った。

 その首元へのキスにギーゼラも声が漏れ、そこからはスイッチが入ったのか受け入れ始めた。


 完全に蚊帳の外なのだが……めちゃくちゃエロい。

 百合の性癖はないはずなのだが、美人二人の絡みというのは眼副。

 それにクラウディアがギーゼラを攻めているという構図も素晴らしく……心臓が破裂しそうなほど高鳴っている。


「ふふ、えっちな声が漏れてきましたね」

「ちょ、ちょっと少し落ち着かせてくれ」

「駄目ですよ。エリアス様も見てますので激しくいきましょう」


 そこからはクラウディア主導でディープキスが始まり、寝室に二人の激しいリップ音が響く。

 俺の我慢の限界はとうに迎えており、乱入するタイミングを見計らっているのだが、本気で割って入るタイミングが分からない。


「……クラウディアが良い匂いすぎてクラクラしてくる」

「そろそろ服ま脱ぎましょうか。ギーゼラも私の服を脱がせてください」

「な、なんかドキドキするな」


 二人はお互いの服を脱がし合い、あっという間にあわれもない姿になった。


「胸が大きくて羨ましいです。色も……お綺麗ですね」

「み、見るな! ……って、クラウディアの肌は凄いな。つるつるもちもちだ」

「褒めてくれてありがとうございます。それじゃ……エリアス様も限界が近そうですので、二人でご奉仕しましょうか」

「エリアス、目が怖いぞ。血走っている」

「ふ、二人で奉仕なんていいのか?」

「ふふ、もちろんです。三人で朝まで楽しみましょうね」


 そのクラウディアの言葉を皮切りに、二人は俺への奉仕を始めてくれた。

 そこから交互に相手をしていき――明るくなるまで肌を重ね続けた。


 誇張とかではなく、本当にもう死んでもいいと思うほどの最高の時間であり、思わず昇天してしまいそうなほど気持ちが良かった。

 最後の最後に最高の経験ができ、帝都遠征は色々な意味で大成功にて終わったのだった。


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