第51話
51
夢中で二次創作の小説をふたつ書き終えた頃には、花冷えする季節に
入っていた。
そしてオリジナル作品一作目になるかもしれない題材と
百子は出会うのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
それは誰かの小説からというのではなく、ある悩みを投稿する
サイトでのことだった。
浮気をしてしまい、奥さんからの信頼を失くしてしまった
男性からの相談だった。
面白いっていうか、同じように浮気されて挙句本気になられて捨てられた私が浮気した男性の悩みを読んでその男性に肩入れしてしまうなんて、
笑える。
だいたいこんな風な悩み事など回答者からアドバイスされて
それに1回か2回ほど投稿者が返信に登場したら終わり……という
パターンがほとんどなのに、彼は違った。
彼の本気度が伝わったのか回答者も同じ方が何度も答えていたのが
とても印象に残った。
私も夫がただの浮気だったからやり直してほしいと言ってくれていたら、離婚を選ばなかっただろうと思うし、この男性のように激しく激しく
反省の意を示してくれていたらと、つい自分とこの男性の奥さんの立場を
比べてしまうのだった。
男性の、回答者との間に交わされる真摯な気持ちを見続けていくうちに、私は自分も浮気され本気になられて打ち捨てられた妻であるということをいつしか忘れ、その男性の気持ちを追うようになった。
長きに亘る男性と回答者との遣り取りを見終え、私は思った。
彼は本当に奥さんを愛しているのだな、と。
しかし、彼の話から見え隠れするのは彼の真意を信じられず、
悲しい心をどうにもできず蹲っている奥さんの姿だった。
結局奥さんからは許してもらえたという報告が上がる。
だけど私は思った。
彼の奥さんは、付けられた傷もなくなり?
心から彼のことを信頼できるようになったのだろうか。
許された彼はいいよ、だけど奥さんの心はどこかに置き去りに
されているのではないだろうか? と思わずにはいられなかった。
ここで私の自分だけのオリジナル小説のプロットが決まった。
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