自由の国のアイリス ―合聖国戦記― 【2】日本国喪失
ICHINOSE
0-1 敗戦
プロローグ 『亡国』の時代
『臨時ニュースを申し上げます。こちらはニホン公共放送、報道ラジオです。繰り返し――』
『本日明朝、内閣は
[聖暦]二〇世紀。
それは『亡国』の時代であった。
すなわち、幾多の国家と民族が
『——今日の
――魔導。
有史以来、選ばれし者が生まれ持った超常の力。
炎獄の具現。氷水の術式。雷霆の剣技。深緑の鳴動。それらの使い手を〈魔導師〉と呼ぶ。かつて文明を興し、祖国を守り、版図を拡げた、歴史に連なる英傑。
だからこそ、才あるものは少年少女も戦場に赴き……、侵略者に敗れた。故郷を失った才覚ある〈魔導師〉は捲土重来を誓う。
『——日本国臨時政府は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸外国の皆様の公正と信義を信頼して、日本国民の皆様の、安全と生存を保持しようと決意するものであります』
『――よって、あえて申し上げます。
かかる困難な国際情勢においてこそ、私ども日本国臨時政府は勿論のこと、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのです。政治道徳の法則は普遍的であり、これに従うことは、自国の主権を維持し他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると私は信じます』
〈魔導師〉。
単騎完結の戦力にして国家権威の象徴。数百年にもわたる血筋の名家は、遍く民草のよりどころとなる。
そして、彼らこそが敗戦した国家を保たせるアイデンティティとあっては、彼らのたどる結論は一つであった。
『――日本国臨時政府は、国家の名誉にかけて、全力をあげて崇高な理想と目的を達成することを誓います』
食料で。資源で。領土で。思想や信仰や人種で。経済で。利権で。人口問題で。考えうるすべての国家的要素、尊重されるべき主権で、保証されるべき民生支援で、そして〈魔導師〉をめぐって。それぞれの国家大義の名のもとに相争う。
あの大戦が終わって三年。
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