9.魔王復活と勇者再び
そんなある日、旧魔王領で事件は起きた。
「うわあああ」
「なんだあれ」
「天が落ちてきた」
隕石の衝突であった。
いままで巨大隕石は何度も惑星エイシールに衝突してきた。
もちろん手のひらサイズの小さな隕石は年に何個も落ちてきている。
そんな中、ちょっと大きいサイズの隕石が魔王領に落ちたのだ。
ドガアアアアンンンン。
周囲の木々はなぎ倒され、中央には小さなクレーターができるほどだった。
「あああああああ、結界が崩壊しておる」
「なのじゃな」
「魔王復活するなぁ」
「なのじゃな」
「どうしますかね、アイテール」
「神託なのじゃ、神託」
「だよね」
ということになったのだ。
「人間ちゃんお久しぶりです。アイテールです」
「は、こここれは、何事でしょうか」
「お忘れかもしれませんが、神託でございますよ。めちゃんこかわいい女神アイテールです」
「過去の神託は事実だったのか……はっはい! ただいま」
「千年ぶりくらいですかね」
「ほ、本物だああ」
はじまりの神殿の神官たちが慌てふためていて四方八方に行ってしまう。
「お集まりください。神託でーす」
「はい、今すぐ」
「先ほど、小さな地震があったと思います。実は遠い地に隕石が落ちてきたのです」
「隕石ですか」
「隕石です。それで魔王の封印が解けてしまいました。勇者を、再び選定し、魔王を打つのです」
「勇者ですか」
「そうです。勇者です。聖女、魔法使い、騎士などを連れて、魔王を討伐しなければ人類は莫大な被害に遭います」
「そ、そんな!」
「頑張ってください」
まあ適当である。でも事実であった。
この事件は早馬を駆使して、あっという間に王国だけでなく帝国全土まで噂が広がっていったという。
もちろん王国と帝国の周りにあるたくさんの小国にも広がっていく。
「勇者を選定する!」
「ははっ」
王様が元気よく勇者を選ぶ日がやってきた。
実に約千年ぶりとあって、とてもやる気を見せていたのだ。
「騎士カリス。勇者として頑張ってくれ」
「わかりました。国王様」
騎士カリスはこの国でも始めた学園制度で、優秀な成績を収め騎士として勤務していた青年だった。
一説には千年前の勇者の血を引いているという噂がある。
しかし噂なのであって確かではない。
とにかく魔王あっての勇者であり、勇者あっての魔王だった。ということだろう。
ある種の共存関係であるのは否めない。
もちろん平時にも勇者を置くことはできるが、形だけの勇者などそのうち廃れるのは必至だった。
「聖女、魔法使い、賢者だったか」
「そうですね。是非に」
勇者カリスは仲間を求めた。
聖女の制度は昔からあり、脈々と受け継がれてきた。
これは教会とも関係があり、また医療従事者として重宝していたという歴史もある。
見目がいい、教会の強化に一役かうなど、便利な制度だったのだ。
「賢者ですが、なかなか」
「そうですか」
賢者にはなかなか適材の人物が現れなかったが、ある日ふらりと現れた。
「エルフ様ですか」
「そうです」
どこからか噂を聞き付けたエルフの末裔と名乗る人物が王宮を訪れてこの問題は解決した。
噂通り耳が長く、金髪碧眼でそして美少女であった。
「やっぱ、エルフってデザイナーズチャイルドっていうか、なんかそういう雰囲気あるよね、ルンガ様」
「それはまぁ、俺たちがデザインしたんだから、そうだね」
「みんな、美男美女でいいなのじゃ」
「アイテールだって美少女じゃないか」
「いひひ」
天の上から品評されているとも知れず、古代種のエルフが参戦することが決まった。
もちろん寿命は千年なので、そんな前から生きていたわけではない。
種として受け継いできたというのが正しいだろうか。
魔王たちもそうだが、人間、エルフ、獣人といった種族があのバクテリアの子孫なのだ。
あれから何億年もたっているが、そうやって命をつないできて、今があると思えば感慨深い思いがある。
見てる方は一億年ボタンを押すだけだが、今はそれも必要なくなり、人々の生活を見て楽しむのだ。
魔王の危機から人類を救えることができるのか。
ハラハラ、ドキドキとする。
気合がどうしても入る。
重要なイベントを見逃すまいと、ホログラムにかじりつく。
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