第24話 これから



 手紙に集中するリディーナ。他の皆は邪魔為ないように黙っている


 時おりシンヤに訝しげな目を向けつつ呼んでいた

 手紙を読み終えて



「手紙には、シンヤさんが1人でゴブリンを全て倒したと書いてあります。ヴァリアント砦の警備隊長のジェイド氏も認定されています。

 正直、信じられない所もありますが、目の前の討伐部位にヴァリアント砦の警備隊長から認定があるのでシンヤさんが1人で倒したと、ギルドで処理させて貰います。

 それと、リリィさんについてゴブリンに攫われる前のことなども書かれてました」



「私についてですか? 父と旅をしている所をゴブリンに襲われて父を亡くした事に、ゴブリンに捕まった後……のことですか?」



 「その事もですが、リリィさん。警備隊の保護を断ってますが、大丈夫ですか?」



 シンヤに探るような視線を向けるリディーナ。

 直ぐにリリィに視線を戻す



「 (……エルマさんに疑われていたが、その事も書かれていたかな。もしかして、エルマさんに男と何かあったのか?) 」



「エルマさんにも色々と気を遣って貰い感謝しています。ですが、ヴァリアント砦がゴブリンの巣に近いので居たくないのです。

 でも、私には戦う力はありませんから、シンヤさん達の支援役サポーターとして暫く付いて行来ます。 それに、シンヤさんは信用出来ますよ」



 リリィの話を聞いて目の前の手紙に視線を落として考えるリディーナ



「……出会ってまだ少しですが、シンヤさんは悪い人ではないと思います。それは、一緒に居られるユイナさんとヒカリさんを見ても判ります。

 これでもギルド長をしていますから。

 ですが手紙にハッキリと書かれてませんが、注意して欲しい旨もありまして……不躾ですが、シンヤさんは代筆したエルマさんと何かありましたか?」



「そもそもエルマさんとは、ゴブリンの巣で会ったのが初めてです。

 もしかして、エルマさん自身に男に何かされたとか……その相手が俺に似ているとかでしょうか?

 (そもそもこの世界に来て最初に出会った人間は結衣ユイナさんと陽菜ヒカリさんだからね) 」



 何とも言えない顔でシンヤを見るリディーナ。シンヤは腕を組んで考えていた



「シンヤさんは信用しています。私とヒカリさんの冒険者としての師でもあります。問題ありません」



「そうですね、私達を助けてくれましたから。

 シンヤさんが女性におかしな事はしないです」



 ユイナとヒカリはシンヤは大丈夫と力強く頷きながら話すと



「そうですね。エルマさんにかつて何かあったのと、今回の事で心配したのでしょう。

 シンヤさんは信頼おける人だと思います。」



 エルマの事は結論付けると席を立ち姿勢を正すリディーナ



「ご無礼数々申し訳ありませんでした。

 改めてゴブリンロードを討伐してくださりありがとうございます」


 もう一度、頭を下げるリディーナとエリナ。

 最初の頭を下げたのと違い中々頭を上げようとしない2人。シンヤ以外の3人は慌て出すが


「大丈夫ですから、頭を上げて下さい。

 ご理解頂けた様で良かったです。それでは、これからのことですが、いいですか?」



 頭を上げて頷くと席に座るリディーナ。エリナはリディーナに耳打ちして部屋を出た。

 持ってきていた書類などを机の上に置いて



「はい、大丈夫です。先ずは、リリィさんの冒険者登録ですね。

 手続きに関するものは今エリナが取りに行ってます。

 それから、ゴブリンロード達の討伐報酬とランク上げですね」



「お願いします。それでランク上げですが、今回の討伐ポイント全員に均等に分けて下さい」



 報酬とポイントの件で書類に目を見ていたリディーナは、ポイントを全員に振り分けることに驚いて顔を上げた



「全員に振り分けますか? 討伐されたシンヤさんがそれでいいのなら、こちらは構いません」



「実は俺達3人も旅をしていて今日、冒険者登録したんです。それで、リリィさん含めてDランクに上げたいんですよ。」



 今日冒険者になったと聞いて一瞬唖然とした表情になるが



「おっと、すみません。それでポイント振り分けですが、皆さんをDランクにしても余りますよ。

 何よりシンヤさんは1人で全て倒しているので、Aランクどころか特例でSまで上がりますが、如何でしょうか?」



「……余り目立たずに冒険者をしたいので、Aランク以上は辞退させて貰います。

 そうですね、俺はCランクで、皆は戦闘もまだ慣れていないのでDランクでお願いします。

 皆はそれでいいかな?」



 体を動かして全員の顔を見るシンヤ



「はい、構いません。私は薬草採取の時に表れたゴブリン2体倒したのと、薬草採取しかしてませんから」



「私は[補助魔法]掛けたのと薬草採取だけですから大丈夫でーす」



「私はそもそも戦いとは無縁の生活でしたから……それに、何もしてないのに本当に……いえ、ありがとうございます」



 3人の話を聞いてリディーナに向き直り



「さっき言った通りお願いします。それで、ポイント余るなら保留とか出来ますか?」



「分かりました、その様にさせて頂きます。ポイントの保留は出来ますよ。今回は討伐したシンヤさんが保留することになります。」



 “分かりました”と頷くシンヤ。そこにエリナが戻って来た。リディーナに一言断り



「では、リリィさんの冒険者登録させて頂きます。此方に記入お願いします。お名前だけで大丈夫ですよ。代筆も出来ますが如何しますか?」



「では、代筆お願いします。色々とありまして……」



 リリィが木札をエリナに渡し変わりに紙に記入するエリナ。書いている合間にリディーナがエリナに先ほどの話をする

 


「なるほど、分かりました。ただ、この時間は職員の数が少ないので何時もより時間が掛かるんですよ。それと、報酬の計算も時間が掛かりますし。

 皆さんお疲れでしょう。

 なので、明日昼前には報酬が用意出来ますのでその頃にまとめて行いますか?」



「そうですね。それが良いと思います。皆はそれでいいかな? (皆、疲れの色が見えるからね)」



 振り返り聞くと、3人とも頷いた。

 リリィは、既に用意されていた冒険者プレートを受け取っていた



「では、今晩はギルド4階の宿に泊まるといいでしょう。

 男性用と女性用と共同用に部屋が分かれていてシャワーなども備えています

 今日は空いているのでお好きなの部屋を使って下さい」



「あの、ギルド長……男性用の部屋は……」



 途中からリディーナに耳打ちするエリナ。リディーナは話を聞いて苦虫を噛み潰した顔になるが、直ぐに戻り



「男性用は全室埋まってまして、共同用と女性用でお願いします。申し訳ない」 



「大丈夫ですよ、ありがとうございます」



 シンヤが言うと、3人はそれぞれ頭を下げた。

 その後は、明日について話をしてその日は解散となった。

 因みに部屋の割り振りは、共同用にシンヤ 女性用にユイナとヒカリ・リリィと分かれた



 シンヤはシャワーを浴びて備え付けの寝間着に着替えていた



「今日はいきなり転送されて色々とあったな。

 あのギャル擬き女神のことだからいずれ接触してくると思うが……それまで、彼女達と共に行動してこの世界のことなどを調べないとな……ん?」


 扉をノックする音が聞こえたので、“どうぞ”と声を掛けた。

 扉を開け中に入って来たのはリリィだった。

 リリィも備え付けの寝間着に着替えていた。暫く俯いていたが、顔を上げると目は真っ赤になっている



「その……就寝中にごめんなさい……でも、1人でいるとあの場所の事や……された事が……思い出され……それで……」



 話している間に目に涙がたまっていくリリィ。

 静かに側に近づくシンヤ。なるべく驚かさない用に涙を拭いて



「無理に話さなくて大丈夫ですよ。落ち着くまで側に居るからね」



 ゆっくり頷くリリィ。そっと手を取りベッドまで行って共に腰掛けた



 その頃、結衣ユイナ陽菜ヒカリ



結衣ユイナちゃん、今日はこの世界に来て1番大変な日だったね」



「そうですね。所でヒカリさん2人と言っても本名で話さない方が良いと思いますよ。ついうっかりもあると思います」



 シャワーを浴びて備え付けの寝間着にそれぞれ着替えていた。

 


「うっ……確かに私はあるかも~ まぁ、今だけって事でね!……でも皆、阿仁間君や秋多君とか前線で戦ってた皆は大丈夫かな? それに後方支援の皆とかは違う意味で……」



「そうですね。阿仁間さんには気に掛けて貰っていましたからね。無事だといいのですが、皆さんも……」



 残ったメンバーの事を考えると罪悪感が湧いてきてしまう2人



「残った皆は気になるけど、先ずは私達の事だよ。

 このままだと、おんぶに抱っこ処ではないレベルでシンヤさんにお世話になるよね」



「はい間違いなく、ですね。私は1つでもスキル覚えられる用に頑張ります。

 明日に響いたらいけないので、寝ましょうか。

 お休みなさい、さん」



「っ?! うん! お休みなさいちゃん」



 本名で呼び合いベッドに横になると疲れが溜まっていたからか、直ぐ眠りについた2人だった
















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