あの頃の後悔
@f_slh28
第1話 後悔
大学三年生の春、
「翔琉は就職どうすんの?」
「まあー警察かな」
「すげえな警察なんて。すごいきつそうだけどな。」
翔琉は、就職についてあまり深く考えていないことを奏多に見透かされたくなかったため、とっさに嘘をついた。
とはいっても、これまでの自身の経験を生かせるのは警察しかないのではないかと翔琉はうっすらと考えていた。
「翔琉って今彼女いんの?」
「あーまあいるけど遠距離だからな」
「ちゃんと会いに行ってやれよー。お前ほんと冷たいからな。」
「余計なお世話だよ。」
翔琉には、高校二年生の頃から付き合っている陽向という彼女がいた。
約三年の付き合いだが、三年と言っても付き合ったり、別れたりとだらだらと付き合っている感じの関係性だ。
陽向は、高校卒業後、専門学校に進学し、その後は就職を機に上京していた。
今はたまに電話をしたり、メールでやりとりする程度だった。
このまま、だらだら関係を続けるのも正しいのかどうかたまに悩むこともあった。
浮気をしようかと、心が揺らいだこともあったが、そんな度胸は自分にはないと、それだけは踏みとどまっていた。それでも、面食いな翔琉は、SNSに出てくるモデルの写真や高校時代可愛いと思っていた同級生のアカウントを、暇さえあればあさっていた。いつものように、SNSをあさっていると、ひとつのアカウントが目に留まった。
「真帆だ。久しぶりに見たな。今何してんだろ。」
真帆は、高校時代、陽向と付き合う前に、翔琉が片思いしていた女性だ。
翔琉は、必死にアタックしていたが、どちらも内向的な性格だったため、学校で直接話すということはあまりなかった。
時間が流れ、いつのまにか、ただメールで話すだけの友達になってしまっていた。
心の底では諦めきれていなかったが、何度か告白しても、あまり直接話したことがないし、お互いのことを知らないという理由で、交際を断られていた。
あの頃の自分は子供だったなと翔琉は羞恥心を覚えながら、あの頃のことを思い出す。その日の講義が終わり、小腹を満たすために、コンビニへ寄った。
「あーお腹空いたな。またカップ麺でいいか。」
コンビニへ入るとき、隣ですれ違った女性に翔琉は違和感を感じた。
「どっかで見たような」
よく見てみると、高校時代片思いしていた真帆の姿がそこにはあった。
翔琉はとっさに声をかけた。
「真帆!」
彼女も翔琉に気づき、驚いた表情を浮かべていた。
「え、翔琉!?すごい久しぶりじゃん!高校以来だね。」
「ほんと久しぶりだね。今何してんの?」
「卒業したあとに、専門に行って、今は美容サロンで働いてるんだ。翔琉は?」
「俺は普通に大学通ってるよ。そんな自慢気に言えるレベルの大学じゃないけど。」
二人は、学生時代そんなに直接話すような関係性でもなかったが、久しぶりの再会ということもあり、お互い自身の話をし続けた。
「今、仕事帰り?俺、車だから送ってこうか?嫌なら全然いいんだけど。」
真帆は最初は遠慮したものの、結局家の近くのコンビニまで送ってもらうことになった。
「へえー。翔琉も結構頑張ってるんだね。なまけものだったのに。」
「うるさいな。真帆だって結構バカだったじゃん。」
「そんなに成績変わらないでしょ」
二人は笑いながら、楽しく話していたが、翔琉は前よりも綺麗になっていた真帆にかなり緊張していた。
「翔琉は彼女とかいるの?」
「陽向とまだ付き合ってるんだよね。」
「え、じゃあもう三年くらいになるよね?すごいラブラブじゃん」
「まあ、今は遠距離だから全然会ってないけどね」
「そうなんだ。やっぱ遠距離って辛いよね」
真帆は、恋愛経験がほとんどなく、それが翔琉とあまり話せなかった原因でもある。
二人は、翔琉が陽向と付き合い始めてから、メールでも完全に話さなくなってしまっていた。
車は真帆の近くの家に停まった。
「よし、ついたよ。」
「ほんとありがとう。今日寒かったからすごい助かったよ。相変わらず不器用だけど優しいね。」
「お前は余計な事言うところはほんと変わってないな」
「せっかく久しぶりに会えたんだしさ、もうちょっと話そうよ」
「まあ、いいけど」
「反応薄いねー。ほんとなんも変わってない」
真帆は笑いながら言った。
「ねえね、陽向の話もっと聞かせてよ」
「そんな話すことなんか特にないぞ」
「いいからー。」
「ん-。まあ、ほんとぼちぼちだよ。何回か別れたりしてるけど、今はお互いいい距離感でいれてるしな。」
「そうなんだ。なんで別れちゃったの?喧嘩とか?」
「まあ、そんなこともあったな」
翔琉は少しうつむいて悲しそうな顔をした後に、また話し始めた。
「ちょっと暗い話になるけどいいか?あと、この話は人には絶対話さないでほしい」
「どうしたの急に。まあ、どうせ暇だし付き合ってあげよう。それに、ほかの人に話したりなんかしないから安心して」
翔琉は悲しげな表情をしたまま話し始めた。
話は、三年前に遡る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます