第2話 生と死のゲーム

 「ふふっ!Seito様~…気になる方がログインしましたよ~~?」


 フェアリー11Rが茶化すように笑うと『Seikaがログインしました』と通知とアナウンスが流れる。ログインしたSeikaはSeitoの前へ急に姿を現す。


 ピンク色の髪を赤いリボンでポニーテールで結ぶSeika。誰の目から見ても愛らしい姿アバターだ。


Seika 「やっほー!Seito!」


Seito 「おー。Seikaも今、ログインしたか」


 ログインしているか気になっていたSeitoだが、本人の前ではクールを装い答える。


 数か月前に始めたばかりの2人だが名前が似ていると話すようになり次第にはゲーム仲間となっていた。


Seika 「今日も一緒にスピファンやるよね?」


Seito 「レベル上げでもするか」


 スピリットファンタジー、略してスピファン。神の宝を探し出せばゲームクリアとなる。


 広大なエリアで幾つもの宝箱は配置しているが闇雲に開けると大半は中は空なんて事はざらにある。運が悪ければトラップに引っかかり戦闘不能。


 探し出すのに近道はレベルを上げ、そして四大精霊の試練に挑み、全ての精霊の恩恵を得た時に神の宝を特定できるようなゲームだ。


Seika 「ゲームエリアにあるスピファンに向かお!」


Seito 「おう」


 2人の意見が一致すると、ダイバーエリア内にあるゲームエリアにワープしスピリットファンタジーのゲートをくぐり抜ける。


 くぐり抜けるとスピファンの安全地帯である広場へ移動し2人は辺りを見渡す。


 甲冑装備で大きな盾を持つ者、大剣を背中に背負う者、大きな杖を持ちローブを着用する者。


 そんなファンタジーの世界に移動したSeitoとSeikaは片手剣を得意とし腰に装着している。


Seika 「今日はオークがいる所でレベル上げをしようよ!」


Seito 「あそこか。んじゃ移動するか」


 2人は空間でモニターでマップを出すとタップしワープをする。狩場に辿り着くと他のプレイヤー達は4人パーティを組みオークを狩っていた。


 1人は盾役になり、もう1人はヒーラー役になり、そして攻撃をするアタッカーなど…。


 AIに攻撃パターンを助言された事を鵜呑みにしプレイヤー達は動く。傍目から見たら、まるでAIに操られているかのようだ。


Seito 「2人だと効率悪いし、一緒に戦闘するAIプレイヤーを呼ぼう」


Seika 「おっけー!」


 Seitoがそう話すとモニターから戦闘型であるAIを呼び出す。AIはプレイヤーと見分けがつくよう妖精のマークが背中に縫い込まれている白い服を着用している。


 2人は腰につけている剣を抜くと白銀の色をした髪と目の姿をしたAIと共にオークに襲い掛かる。


 「Seito様!オークが強力の技を溜めています!」

 「Seika様。すぐに後方に下がる事を推奨します」


 フェアリーに助言をされる2人だが、聞く耳を立てる事は無くSeitoは剣を振るい、Seikaは火の魔法を詠唱し戦い続ける。


 「も~~~~!Seito様ったら本当に話しを聞かない!」

 「Seika様もです…」


 フェアリー型のAIに呆れられるとHPが残り僅かの所でオークは溜め技を発動する。


Seito 「おっと」


Seika 「なんとな~くタイミング分かるしね!」


 突進するオークに2人は軽々と横に回避するとトドメの一撃を与えノーダメージのまま倒す。


 その後、襲いかかるオークを一掃しレベルがみるみると上げていく。


 次第に取得する経験値が少なくなり効率が悪くなると2人は狩る事を辞め広場へと戻る。


Seito 「結構、レベル上がったな」


Seika 「この前、火と水の精霊の試練をクリアしたからそろそろ風でも行っとく?」


Seito 「そうだな」


 「Seito様!運営からの情報ですが日をまたぐ0時からスピファン1周年記念でイベントがあるみたいです!」


 「もしかするとイベント限定のアイテムがゲットできるかもしれませんね!Seika様も参加されてみてはいかがでしょうか?」


 フェアリー11RとSeikaのフェアリー11Kは取得した情報を伝えると2人は時刻を確認する。


Seito 「今の時刻は23時…か。Seika、どうする?」


Seika 「イベントでしかゲットできないアイテム…欲しい!0時まで待とう!」


 意見が一致し2人は0時になるまで広場で待機する。時刻が0時に迫れば迫る程、人が増え時刻は0時になる前の23時59分となる。


Seika 「1周年記念だから花火がバーンっと沢山、打ち上げられるのかな~!」


 イベントの演出にSeikaは今か今かと待ちわびていると広場に大きなモニターからカウントダウンの合図が流れる。


 広場に集まるプレイヤー達は一斉に5!4!3!2!1!と口にし0時になった瞬間、花火が打ち上がる事もなくモニターがプツンッと音が鳴り真っ暗となる。


Seito 「何だ…?」


Seika 「えっ?イベントじゃないの?画面真っ暗だ…」


 広場に集まるプレイヤー達が騒めくと、真っ黒なフードを被った人物がモニターに映し出され全員が直視する。


 「やぁやぁ。プレイヤーの諸君。元気かな?君たちにはとっておきのイベントを用意しているよ」


 背丈や声を聞いた限り、少年であろう人物の言葉に周りのプレイヤー達は顔を合わせ、首を傾げる。


 「このゲームはリリースしてから1周年も経つのに…クリアする気配が無くてねぇ…。だから!君たちにはこれからスピリットファンタジーをクリアするまでログアウト出来ないようにハッキングしたんだ!」


 黒いフードを被った少年は楽しげに話すと手を叩く。


 「あ!ちなみに戦闘不能になったら、現実の身体とダイバーエリアにリンクしている脳が遮断されて植物人間になっちゃうから!そこだけは気を付けてねー!それに、すぐAIに頼るのもクリアしたって言わないからねぇ、AIも使用禁止にするよ!んじゃ、クリア出来る事を祈るよ!じゃあね!」


 モニターからプツンっと音が鳴ると真っ黒になる。人が集う広場は地獄絵図のように叫び、涙を流し、膝から崩れ落ちていた。


Seito 「Seika…なのか?」


Seika 「Seito……?」


 黒髪の短髪のSeitoと黒髪のボブヘアーのSeika。互いに見つめ合うと現実世界の容姿になり2人は黙り込む。

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