第7話 太陽と月
―――【5年後】
ハッキングされてから5年の月日が流れた。Anzuの戦闘不能にLenは一時的に自暴自棄になるが仲間の支えもあり苦難を乗り越えた。
火、水、風の精霊の試練を攻略したSeito、Seika、Len、Shinは土の精霊の試練を挑むべき土の祠に訪れていた。
土の祠の最奥へ辿り着くと、最後の試練として硬くて頑丈なゴーレムが現れ4人は立ち向かう。
4人が繰り出す攻撃、技、魔法の連携にゴーレムは次第にHPが0となり倒れ白く輝く粒子となり消えていく。
Seito 「ハァハァ…」
Seika 「たお…したっ!」
Len 「やった…。ついに攻略した!」
Shin 「これで後は神の宝を見つけだすだけだ!!」
土の精霊の試練をクリアした4人は手をあげハイタッチする。
「見事だ。そなたらに地の精霊の恩恵を受け渡そう」
4人の身体は輝く茶色の光に包み込まれる。光が収まると通知が流れSeitoは確認する。
―――土の精霊の恩恵で
四大精霊の恩恵が全て揃った為、全パラメーターが2倍に上がりました。なお、月の恩恵を受ける者のみ、『
又、
Seito 「このピアス意味があったのか」
Seitoは耳元についている月の形をしたピアスに触れる。
スピファンはゲーム開始時に月の恩恵を受けるか太陽の恩恵を受けるか選択出来る。
最初は誰もが意味のある選択だと思っていたが、プレイをするうちに攻略情報は1つも出る事は無かった。
耳元のピアスが月の形か、はたまた太陽の形にするか…と只の"見た目装備の選択"とネットワークを介して拡散されていた。
Seika 「パラメーターが2倍も増えている!しかも太陽の恩恵を受けている者は
Len 「見た目装備の選択だけだと思ったけどまさか、ここで分岐するとは…。パラメーターが2倍ならどんな敵でも苦戦しないな!」
Shin 「これでスピファンの完全攻略も出来るよ!ようやく悪夢のようなゲームを終わらせる事が出来るんだ!」
システム通知を受け4人は各自、ステータスを確認する。全パラメーターが2倍に増幅され4人はスピファンの完全攻略を確信する。
Seito 「これで四大精霊の恩恵を受けたから神の宝はすぐわかるはずだ」
「否」
Seika 「えっ?」
スピファンの攻略を確信していた4人は土の精霊の一言で笑みが一瞬にして消え去る。
「四大精霊を攻略したそなたらに伝えよう。神は四大精霊の力が集う"昼と夜に昇る位置"で待つと」
Len 「昼と夜に…」
Shin 「昇る位置…?」
「神の言葉を知った者はここから10分以内に出るように。では武運を祈る」
土の精霊が目の前から消え去ると、地響きがし4人は左右を見渡す。見渡している間に上から岩が崩れ地に落下する。
Seika 「キャアっ!」
目の前に落下した岩に驚きSeikaは腕で顔を覆うと声をはりあげる。
―――【残り10分】
広いダンジョン内でアナウンスが響くとサイレンの音が鳴り、次第に岩が落下する数が多くなりドスンドスンっと鈍い音が鳴る。
Seito 「皆!外に逃げよう!」
Seitoの意見に全員が頷くと、走り始め3Fから入り口へと向かう。階段を下り2Fフロアの通路を走っていくと先程、中ボスを倒した部屋に辿り着きドアがゆっくりと閉まっていく。
Len 「何だっ!?」
ドアが完全に閉まると、オロオロする4人の目の前で粒子が繋がっていく。
全てが繋がると大きな物体が出来上がり、目の当たりにした4人は唖然とする。
Shin 「さっき倒した中ボスがまた復活!?!」
土の塊で出来た中ボスのオオカミが再び出現し、グアァァと図太い声で咆哮をあげる。地が揺れる程の激しい咆哮をあげるとSeitoとSeikaは手を前に出す。
Seito 「
Seika 「
2人は武器を握ると風の精霊の力を使い一目散に素早く前線に出る。
Len 「Shin!俺達は後方から2人の援護しよう!」
Shin 「うん!
Shinが後方から魔法を詠唱すると天井から図太い光の線が幾つも中ボスに放たれる。
Len 「敵のHPがメリメリ減っていくな!
Lenも後方から魔法を繰り出すと敵は真っ黒な丸い形の引力に引っ張られ身動きが出来ないままダメージを食らい続ける。
Seika 「2人とも!ナイス!
火が燃え盛るように放つ剣を縦一直線に振るうと半分まであったHPが25%以下まで一気に減り倒れもがく。
Seito 「これで最後だ!
追い討ちをかけるように、もがく敵に
敵はHP0となり倒れ込むと端から小さな粒子が空へ昇っていくように消えていく。
Seito 「皆!早く入口へ向かおう!時間が無い!」
Seitoの意見に賛同し頷く。祠の建物は上の階から徐々に崩れ落ち4人は天井から石ころが落ちる中、更に下の階へと向かう。
―――【残り5分】
アナウンスが流れる中、2Fから1Fへと階段を降り無我夢中で入口まで走ると再び大きなドアが見え始め中へと入る。
4人が中へ入ったドアと真正面にあるドアは地響きのような激しい音で同時に閉まりだす。
Seito 「さっき、ここには雑魚しかいなかったぞ!?」
Seika 「入り口はもうすぐなのに!次は何なの…!」
辺りを見渡すと目の前に細かい粒子が幾つも重なっていき人の形へと変貌する。人の形が生成されると服や髪がくっきりと見えLenとShinは眉を寄せる。
白銀の色をした短髪と目、そして背中には妖精のマーク縫い込まれている白い服を着用している少年の姿をした者が現れる。
Len 「アイツは!!」
Shin 「よくも…よくもAnzu姉をっ!」
4人の前に姿を現す者こそAnzuを殺した張本人のAIだった。AIは
Len 「Shin!」
Shin 「わかった。兄ちゃん」
LenとShinは完全に閉まる前にSeitoとSeikaの肩を掴む。強引に真正面にあるドアへ引っ張ると力強く2人を放り込む。
Seito 「な…何やってんだよ!Lenさん!Shin!」
Seika 「そうだよ!!早くあの敵を倒さないと!」
放り込まれたSeitoとSeikaは床に倒れ顔をあげる。LenとShinは眉をあげ息を大きく吸うと口を大きく開ける。
Len 「Seito!Seika!お前達2人だけがこのゲームをクリアできる可能性があるんだ!それに―――アイツは俺達の仇だっっ!これは俺達の問題だ!」
Shin 「このままだと時間切れになる!走れーーーっ!!2人ともーーー!!」
ドアの隙間越しで叫ぶと完全に閉まり、Seikaは腕をあげ完全に封鎖されたドアを叩く。
Seika 「嫌だ!!皆、一緒にクリアしなきゃ嫌だ!!」
ドアをドンドンっと力強く叩くSeikaの腕をSeitoは強引に掴み入口まで走り出す。
Seika 「離してよっっ!!Seitoっっ!!!」
Seito 「Seika!LenさんとShinさんの想いを無駄にしちゃダメだ!!応えないと!」
最初は抵抗するSeikaだが腕が千切れてしまうのでは無いかと思う程にSeitoの引っ張る力は強く無理に走る。
―――パーティメンバーのLenが戦闘不能となりました。
赤い文字で【警告】とシステムメッセージが流れると2人の瞳から涙が零れ落ちる。
Seika 「皆と一緒じゃなきゃ……」
Seito 「俺達に賭けたんだ」
―――パーティメンバーのShinが戦闘不能となりました。
Seika 「意味が…ないじゃん……」
瞳から涙が溢れじんわりと視界がぼやけていくが、LenとShinの想いを背負った2人は息をする事も忘れるほどにひたすら走り続ける。
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