新しいはじまり4

 エリンはお互いの子供の頃について話題にしてみた。


「子供の頃? 毎日、サッカーばかりやってたなぁ。あの戦争がなければ、ラディはプロのサッカー選手になっていたはずだよ」

「そうなんですか? スゴイ。私は本ばかり読んでいるような子供でした。母が早くに亡くなって、父は仕事で忙しくて、ひとりでいることが多かった」


「君は何故、医師になろうと思ったの?」

 エリンは苦笑した。

「私、小さい頃からなんというかいわゆる『お勉強』はよくできたので、あまり深く考えずに、まわりに言われるまま進学してしまって……。途中で、自分の興味は人の身体ではなくて、心の方にあると気づいたんです。本当は心理学とかそちらの方面にいくべきだったと」

「だから、精神科医なんだ」

「そう」エリンはうなずいた。


「僕は、父の影響かな。父親も医師だったから、いつのまにか同じように、そうなりたいと思ってた」

「お父様を尊敬してたんですね」

「うん。ああ、でも医学生だったあの頃は、あまり思い出したくない。奨学金とバイトで学費を捻出して、最終学年の時は戦争でまともな授業がなくなった上、卒業を早められた。知識も技術も、いつも自分には足りないものがある気がするんだ」

 

 エリンは思った。ディープがいつも努力しているのは、その足りない部分を埋めるため…なのだろうと。


 

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