佐々木さんに全て奪われました

雨野 天々

佐々木さんに全て奪われました


「高橋さん、今日は午前中外回りで午後は昨日上がってきた書類チェックやるよ」


 佐々木さんはそう言って外に出る準備を進める。


 私は入社して3年目のごく普通の会社員だ。

 大学を卒業してすぐ社会人になった。社会人になってからの3年間は良くも悪くも仕事に慣れることで精一杯で、最近はやっと仕事に慣れて少し大きい仕事も任せて貰えるようになった。


 私がここまで仕事ができるようになったのは全部佐々木さんのおかげだ。

 

 佐々木凛花さん(29歳)はとても仕事ができる人で会社でも一目置かれている。


 彼女のすごいところはなんでも出来るところだ。


 顔良し、スタイル良し、頭の良さは抜群で仕事も難なくこなす。おまけに性格までいい。


 そんな佐々木さんを会社の男たちは放っておかない。


 会社員の男性陣は1回は告白したのでは無いだろうかと言う勢いで佐々木さんに告白している。そして佐々木さんはその全てを断っている。


 逆に佐々木さんと付き合える人ってどんな人なんだろうと気になるくらいだ。


 石油王とかじゃないと無理なのでは?


 そう思って佐々木さんのことを見ると改めて綺麗な顔だなと思い、顔に熱が集まる。


 佐々木さんは茶色い長めの髪を結ってポニーテールにしていて、メイクは薄めでズボンとジャケットがスタイルの良さを際立てる。

 顔の輪郭から眉毛の形まで何もかも整っている。


 これは男の人たち放っておかないよなぁ……

 

 

 私だったらあんなにモテてたら選びたい放題していると思う。


 ちなみに私は全然モテないのだ。

 童顔で幼児体型だからだろうか。

 いや確かに身長は小さいが胸はそこそこあると思う!

 どんな体型であれ、私が良ければそれでいいのだ。

 うんうん、そう自分に言い聞かせるようにしよう。


 佐々木さんは身長は168cmくらいでスラッとしていてモデル体型だ。胸ってどれくらいの大きさなのだろうと胸に目を向ける。

 そして、それが行けないことだと気づき急いで目を逸らした。


 顔が熱い…

 

 私は入社したての時は彼氏が欲しいと思っていた。友達に誘われ合コンに行ったり、会社の若い人たちの飲み会に行ったりして恋人を作る努力した。

 しかし、私は誰にもときめかなくなってしまった。


 ただ1人を除いて…


「高橋さん大丈夫?顔赤いけど熱ある?」


 そう言って、佐々木さんは顔を近づけて私の額に手を置く。


 余計に顔が赤くなる。


「いつものなので、大丈夫です……」


 そう言って私は佐々木さんから大きく距離を取る。


 私は小さい頃から極度とまでは行かないが赤面症の傾向があった。


 小さい頃に好きになった人に告白をして、その時に赤面症のせいで顔が真っ赤になりゆでダコなんて馬鹿にされてから、好きな人に告白するのも人前で顔が赤くなるようなことをするのも怖くなった。


 できるだけ人前に出るのは避けるようにしていたが、今の仕事はプレゼンや打ち合わせが多い。

 私が危ない時はいつも佐々木さんに助けてもらっている…


 赤面症について、誰にも打ち明けたことは無かったが、佐々木さんには相談したことがある。仕事に支障が出て迷惑をかけたくなかったからだ。


 佐々木さんは笑うこともバカにすることもなく紳士に聞いてくれて、私が辛いと思う時にいつも支えてくれた。


 人前でのプレゼンや会話がかなり慣れて、よっぽどの事がない限り赤面することは少なくなった。


 佐々木さんのおかげだ。


 どくどくと心臓の音が聞こえる。

 


 佐々木さんは私が仕事で分からないことを聞くと物腰の柔らかい感じで語りかけてくれる。

 しかし、だめなことはだめ、いいことはいいとはっきりしているところもあり、メリハリがしっかりしている。



 佐々木さんには私を育ててくれて感謝しているし、私もいつか佐々木さんくらい仕事のできる人間になりたい。


 佐々木さんは私の目標なのだ。


「高橋さん外行くよー」

 佐々木さんの後ろについて行く。


 心臓がどくどくとうるさい。


 ただ、佐々木さんの近くにいるだけなのにうるさいのだ。


 いつからだろう。


 佐々木さんと一緒にいるだけでこんなにも胸が高鳴るようになったのは。


 気づかないうちにこうなっていた。


 そう、私のこの感情は好きという感情だ……


 好きという感情にも色々ある。


 その中でも、胸が苦しくなったり熱くなったりする好き…


 私は恋愛的に佐々木さんのことを好きになっていた。


 佐々木さんの前では未だに赤面症が治らない。


 一生治る気がしない。


 佐々木さんといるといつも心臓が壊れそうなくらいドキドキしてしまう。


 誰にもときめかなくなってしまったのは全部佐々木さんのせいだ。



 私はこの気持ちを打ち明けるつもりは無かった。

 ただでさえも過去のトラウマがあるのに、私が好きなのは女性だ。気持ち悪がられるに決まっている。

 

 

「行くまでの間、仕事の内容確認するよ」


 佐々木さんは誰よりも仕事人間だ。


 私が雑談をしようとすると、いつも上手くスルーされて、仕事の話に持ち込まれる。


 佐々木さんとプライベートの話がしてみたい…


 そんなことを思いつつぼーっとしていると、耳を疑いたくなる言葉が飛んでくる。


「高橋さん今日の夜空いてたりする?」


「空いてますけど、残業しろってことですか?」


「私のことなんだと一体思ってるのよ。もし良かったら飲みにでも行こうと思って」


 えっ……


 脳内で天使が私の周りを30週くらいしたと思う。


「いいんですか…?」


 顔が赤くなるのがわかる。

 やめて欲しい。

 自分の体に赤くなるなと訴えかける。


「高橋さんと飲みたいんだ。良ければ、行こう?」

 そういって佐々木さんは私の頭をポンポンと撫でる。


 外回りでは色々な人と関わり愛想良く対応し難なく済ませ、午後の書類は直ぐに片付けた。

 佐々木さんとプライベートで飲めるなんて楽しみ過ぎる…


 その日はあっという間に時間が過ぎて、夜は佐々木さんおすすめの居酒屋に来た。


「乾杯」


 そう言って佐々木さんはビールを口にする。

 ビールを飲んでいる姿まで絵になるなんてずるいと思う。


「高橋さん最初の頃は顔赤くして仕事まともに出来ないくらいだったのに今はだいぶ慣れたよね。少し寂しい」


 なんで?

 むしろ、こんなに迷惑をかけて、申し訳なくて早く独り立ちしたいとずっと思っていた。


「早く独り立ちしたくて頑張ってます。でも、私がここまで来れたのも佐々木さんのおかげです!」


 そう全力で伝えると佐々木さんと目が合い恥ずかしくて目を逸らした。


 恥ずかしさを誤魔化すようにビールをグイグイ飲む。


「佐々木さんって恋人とか作らない理由あるんですか?」


 もしかしたら、隠しているだけで居るのかもしれない。

 ただ、少しでも佐々木さんのことを知れたらいいなと思った。


「好きな人はいるよ。ただ、昔から私が好きになった人に告白しても振られるばかりで付き合えたことってないし、歳重ねる毎に臆病になっちゃって…」


 こんなに素敵な人がそんな悩みを抱えているなんて知らなかった。

 逆に佐々木さんを振る人の顔が見てみたい。


「なんでですか!?佐々木さんもっと自信もった方いいですよ!かわいいし、美人だし、スタイルいいし、性格いいし、何一つ欠点ないじゃないですか!」


 つい、いつも思っていることが口に出てしまう。


 お酒は良くない。


 自分の中で留められている物が抜け落ちるように留められなくなる。


「ふふ、ありがとう。やっぱり高橋さんといると元気なるな。いつも仕事の時、元気もらってるから」

 そうなんですか?


 私はあなたの少しでも役に立てていますか?


 いつも顔赤くして迷惑かけていませんか?



「こっちのセリフです。赤面症の私を笑わず受け止めてくれて、いつも仕事では私のミスもカバーして助けてくれて、なのにずっと優しくて……」


 言っているうちに涙がこぼれてしまった。

 この3年間沢山助けてもらった。


 感謝の気持ちが溢れて、お酒のせいで涙が抑えられなくなった。


 涙を拭う。


「ごめんなさいこんな所で…」


 顔が熱くなる。

 恥ずかしい……誰にも見られたくない。

 特に佐々木さんには見られたくない……


「時間もちょうどいいし、外出ようか」


 そう優しく私に声をかけて、佐々木さんはお会計を済ませてくれた。

 

「あのお会計いくらでした。半分払います」


「今日は私のわがままに付き合ってもらったし、いいよ」


 ニコリと佐々木さんが笑って何も言えなくなる。


「でも、、、、」


「じゃあ、私の家で飲み直そう?」


 今日は命日か何かなのだろうか。


 ずっと佐々木さんのことを知りたい、もっと仲良くなりたいと思っていた。

 だから、こんなに嬉しいことは無いと思った。


 まだ、一緒に居れる。


 気がつくと私は佐々木さんの家に着いていた。


 中に入ると想像通りの部屋でほっとしたと同時に残念にも思った。


 こんなにすごい人だから家がゴミ屋敷とかそういう裏の一面があればいいのに、家まで整理されて綺麗だった。


「ビールしかないけどいい?」


「なんでも大丈夫ですよ」


 そう言ってテーブルを挟んで床に座り、2人でまた乾杯をする。

 学生の頃の話なんかを2人でしていたら、どちらもバレーをしていたことが分かり、話が盛り上がった。

 佐々木さんが寄りかかるところないからこっちにおいでと言うので、佐々木さんの隣に座る。


 さっきよりも距離が近くて緊張する。


 横だから正面よりは顔が赤いのがばれずに済むと少し安堵した。


 少し話が落ち着いたところで佐々木さんから思わぬ質問が飛んでくる。


「高橋さんが好きになる人ってどんなタイプの人が多いの」


 佐々木さんってそういう話に興味があるんだとびっくりした。


 そして、目の前にいる人ですよなんて言えたらどれだけ楽なんだろうか。


 私がしばらく黙っていると佐々木さんは優しく声をかけてくれた。


「ごめんね。聞かれたくないこともあるよね。今の質問はなし」


 優しいけどその声の裏には悲しそうな感情が混ざっている気がした。


「ち、違うんです!嫌とかじゃなくて、、、すぐ顔赤くなるから…前に顔赤くなるのばかにされたことあって、、、そういうの話すとすぐ顔赤くなるので恥ずかしいなって思っただけで……」


 そう言って佐々木さんを見ると距離が思ったよりも近くて焦った。


 すぐ自分の顔が赤くなるのが分かりこれ以上見られたくないと離れようとしたら、腕を掴まれた。


「じゃあ聞きたいことあるんだけど、高橋さんって今好きな人いるの?」


 顔が熱い。


 今まさに、ゆでダコ状態だと思う。


 これ以上恥ずかしい姿を佐々木さんに見られたくない。


 そう思って佐々木さんを見ると思った以上に真剣な顔をしていたので答えないのは失礼だと感じた。


「います…」


「そうなんだ…どんな人なの…?」


 いつもなら絶対その先は答えない。

 今はお酒のせいで理性がおかしくなっている。

 そういうことにしておこう。


「かわいくて、優しくて、いつも助けてくれて、仕事に真剣で、私の赤面症のことばかにしなくて、誰からも好かれてて、かっこよくて憧れてて、仕事の時、私のそばにいつもいてくれる人です…」

 

 沈黙が流れる……


 自分のやってしまったことに後悔する。

 今すぐこの場から立ち去りたい。

 ただ、佐々木さんの私を掴む腕がそうさせてくれない。


「それって、期待してもいいの?」


 思わぬ言葉が佐々木さんから返ってくる。


 佐々木さんの方を見ると耳まで真っ赤だった。


 そんな佐々木さんは知らない。

 

「今から私がすること嫌だったら、嫌って言って」


 そう言って佐々木さんの顔が近づく。

 待ってと口を開く前に、私の唇に佐々木さんの柔らかい唇が触れた。


 呼吸するのも忘れるくらい緊張するのに唇が感じる感覚は心地いいという感覚で、佐々木さんが離れると少し寂しいと感じてしまった。


「高橋さん、さっき言ったの本当なの?」


「さっき言ったのって?」


 本当はわかっている。

 ただ、そのまま認めてしまったら今の私はどうなるかわからない。


 恥ずかしさできっとこの場から逃げ出してしまうだろう。


「私はずっと高橋さんのこと好きだったよ」


 えっ……?


 頭では処理が追い付かない。


 どういうこと?


 あの、佐々木さんが私のことを好き?


 頭に心臓が付いたんじゃないかと思うくらい心臓の音が響いてくる。


 頭の理解が追いついていないのに、佐々木さんにひょいと持ち上げられてベットに押し倒された。


 背中にベットの柔らかさと佐々木さんの匂いがふわっと漂って頭がふわふわとする。


 このままでは良くない。良くない自分になってしまう。


「佐々木さん待ってください。佐々木さんの言ってたこと本当ですか?」


「そうだよ。私はずっと好きだった。今までも女の子を好きになっては女だからって理由で振られてきた。だから、今回も同じだと思った。この気持ちは言うつもりは無かった。でも、高橋さんには気持ち抑えられなかったの」


 心臓が自分から分離しそうだと思った。

「高橋さんはどうなの?ほんとうなの?」


 私もだと伝えたい。しかし、心臓がドクドクとうるさくて私の言葉を邪魔する。


「わ、、私もずっと好きでした。ただ、自分に自信がなくてずっと隠しておこうと決めてたので、今すごく嬉しくて……」


 顔が熱い。

 恥ずかしいから見られたくない。

 そう思って両手で顔を隠しているとその両手を佐々木さんに掴まれた。


 もう一度唇を塞がれる。


 そういえば、私キスしたの初めてだと今更気がつく。


 佐々木さんは唇を触れるだけでは足りなかったのか、私の唇の間に温かいものが当たる。


 それは私の唇の間と歯の間も抜けて私の口の中にたどり着く。

 佐々木さんの熱が流れ込んできて熱い。

 苦しい。

 呼吸の仕方がいまいち分からない。


 佐々木さんは仕事でいつもリードしてくれる。

 こんな時までリードしてくれるなんてずるいと思う。


 訳の分からないくらいずっとそうして佐々木さんが急に離れる。


「ずっとこうしてたかった。そして、それ以上も高橋さんとしたい…」


 溶けてしまいそうなほど体が熱い。


「だめ……?」

 佐々木さんの手は私のシャツのボタンを一つ一つ外していってる。

 ダメなわけは無い。ただ、恥ずかしいし、私はこういうことが初めてでどうしたらいいかわからない。


 佐々木さんの頬が赤いのが見える。たぶん、私はその何倍も顔が赤い。見られたくない…


「電気……」


 佐々木さんはハッとした顔をして電気を消してくれた。

 月明かりだけが部屋に差し込み、暗さにまだ目が慣れていないので佐々木さんの輪郭だけがぼやっと見える。


 きっと佐々木さんからも自分がそう見えていると安心すると体から力が抜ける。


「高橋さん…ほんとにいいの?」


 聞かないで欲しい。そんなふうに不安そうに聞かれると今からすることがとても悪いことなのかと感じてしまう。


「うん…ただ私初めてでどうしたらいいか分からなくて…」


 佐々木さんに幻滅されたくない。

 せっかく好きだと言って貰えたのに嫌われたくない。


「私も初めてだから大丈夫だよ」


「えっ……」


 そのまま言葉を発する前に口が塞がれて佐々木さんにぎゅっと抱きしめられる。


 佐々木さんから感じる熱は私を焼いてしまいそうな程熱いのに、私に触れる手や唇は私のことを大切にしてくれてるのだと伝わるくらい優しい。


 心臓が早くなる。


 唇、首筋、鎖骨、耳

 私の心臓のことなんて無視して佐々木さんは次々と私の体にキスをする。


 それだけなのに気持ちよくなってしまう自分の体が嫌になる。

 心は今の状況について行けていないのに、体だけが佐々木さんに触れられるたび、反応してもっと欲しくなってしまう。


 自分の声とは思えない声が漏れて、唇をぎゅっと噛む。


 こんな声聞かれたくない。


 佐々木さんの動きが止まる。


 暗闇で佐々木さんの顔はしっかり見えない。

 今ので嫌われただろうか…

 暗闇とともに私の中で不安が広がる。


「佐々木さん……?」

 不安で名前を呼んでしまう。

 

 佐々木さんはぎゅっと距離を詰めて私の耳を甘噛みする。

「高橋さんかわいい…今の声もっと聞かせて…」

 私の大好きな声が耳元で囁かれ、それだけで胸が熱くなる。

 佐々木さんはずるい。私は彼女の言葉一つでこんなにも簡単に崩れてしまう。


 佐々木さんに耳噛まれ、優しく舐められ、声が漏れてしまう。


「ささ…き……さん」


 頭で嫌だとわかっていても体は止まってくれない。


 もっと欲しいと佐々木さん服をぎゅっと掴んでしまう。


 佐々木さんの手がボタンを外したシャツの間に入る。


 脇腹を撫でられただけなのに息が止まりそうになる。佐々木さんに触られたところがどくどくと熱を帯びる。


 その手は脇腹から肋骨に上がって、下着の上から私の胸を優しく撫でる。


 緊張で体に力が入りすぎていたのか、佐々木さんに優しく声をかけられた。


「やっぱり今日はやめておく?」


 また、違う日に改めることも出来る。佐々木さんは優しいから私の心の準備が出来るまできっと待ってくれる。


 でも、今辞めてしまったら私は恥ずかしさや申し訳なさからしばらくこういうことは出来なくなると思う。

 

 首を横に振る。


 こういう時なんて言うのがいいのかとか雰囲気作りとかもっと勉強しておけば良かった。


 こんな私を見て佐々木さんは幻滅しないのだろうか。


 触られていると安心すると同時に不安にも襲われる。

 そんな不安をかき消すように優しく触れてくれる。


「もっと触って欲しい……」


 部屋を暗くして貰っててよかった。

 私の赤面症が最高潮に発揮されていると思う。

 こんな自分見られたくない。


 タイミング良く、部屋には月明かりが差し込んで少し明るくなった。


「高橋さん、顔赤い。かわいい…みんなの前では治ってもいいけど私の前ではずっと治らないで」


 せっかく暗くしたのに意味が無いし、1番見られたくない人に見られた。


 でも、佐々木さんが私のことを独占したいみたいな言い方をするから見られてよかったなんて思う自分もいる。


 佐々木さんの止まっていた手が動き始めて、私のブラホックを外す。

 下着と私の肌の間に佐々木さんの手が入り込み、私が知りたくない場所にたどり着く。


 佐々木さんは手を止めてくれない。

 私が手を掴めば止まってくれるのだろうけど、今それをしたらそれ以上を佐々木さんは無理にしなくなるだろう。


 それはそれでいやだ。


 だから、私は佐々木さんの服をぎゅっと掴むことしか出来ない。


 明らかにさっきとは違い固くなったそこを佐々木さんは優しく激しく撫でてくる。


「んっ...ささきさん…そこばっかりだめ……」


 自分の声とは思いたくない上ずった声が出て布団に潜りたくなる。


 佐々木さんは止めてくれない。


 私の体が言葉とは違う行動をしているからだ。


 佐々木さんは動かす手をとめずに私の口の中に舌を滑り込ませてくる。

 今まで我慢するために唇をずっと噛んでいたので痛みから解放されるが、それは同時に私の体の反応も外に漏れ出てしまうことになる。


「かわいい……」


 それだけ言って、佐々木さんの手は私の内ももに置かれる。

 最初はその辺を撫でるだけだったけど、スボンのボタンが外されチャックを下ろされる。


 もう止めることは出来ない。自分でもわかっている。


 ただの時間稼ぎでしかないが佐々木さんにお願いをする。


「佐々木さんも上の服脱いで…」


 そう言うと佐々木さんはシャツを脱いでくれた。

 佐々木さんが私に体を寄せるとさっきよりも佐々木さんの体温を感じて、触れ合っているところ全てが気持ちいい。


 佐々木さんは下着以外は着ていないが、それすらも邪魔に感じてしまうほど彼女の熱が欲しくなってしまっている。


 私の下着の中に佐々木さんの手が入る。


 自分ではどうなっていたか分かっていたが、佐々木さんの手がたどり着くことで嫌というほど自分の体が佐々木さんに反応しているのだと思い知らされた。


 どろどろと佐々木さんの指を包むそれは彼女が好きな証拠で、佐々木さんだから私をこんなにもおかしくなってしまった。


 手の動く激しさと連動して私の呼吸は浅くなり頭がふわふわとしていく。


 頭はふわふわとしているのに佐々木さんに触られているところはどろどろとしたものが溢れて止まらなくなる。


「高橋さん……凛花って呼んで」


 佐々木さんも呼吸が荒くなっているのかいつも聞くような声では無い声が聞こえた。


 その声は私をもっとおかしくする。


「りんか、、さん、、、」


 そう呼ぶと佐々木さんの手の動きは優しいのに速さをまして私の意識が朦朧とする。


「かのんかわいい。すきだよ。だいすき。」


 耳元で囁かれてキスをされる。


 そういうことはやめてほしい。


 色々なところに意識が飛び自分の体で起きていることに訳が分からなくなる。


 耳が熱い、唇が熱い、佐々木さんの手が触れている場所が熱い、心臓が苦しい。


 明らかに呼吸が乱れているのに佐々木さんは止めてくれない。いつもの優しい佐々木さんとは違うけれど、そんな彼女も好きだと思った。

 

「り……んかさ……ん、すき……」

 

 今の思いを精一杯伝えると体に力が入らなくなった。



 呼吸を整えることで必死になる。


 私は恥ずかしかから体ダンゴムシみたいに丸めて佐々木さんに背を向けてしまった。

 佐々木さんは背を向けた私を後ろから抱きしめてくれる。


「花音こっち向いてよ」


 名前で呼ばれたくない。


 佐々木さんに名前で呼ばれると頭からつま先までの水分が一気に抜けてしまうのではないかと思うほど体が熱くなる。


 恥ずかしいけれど、佐々木さんの顔を見たい。

 彼女は今どんな顔をしているのだろう。


 振り返ると私と同じく恥ずかしそうに目をそらす佐々木さんが居た。


「気持ちよかった……?」


 気持ちいいどころではなかったと思う。

 私なのに私じゃないみたいな感覚。

 今も空中にふわふわ浮いているような感覚だ。


 私はコクリと頷いて、佐々木さんの唇に自分の唇を重ねた。

 自分からしておいて恥ずかしくなったので佐々木さんの胸に顔をうずくめた。


 佐々木さんはそれを優しく抱きしてめて受け止めてくれた。

 

 好きになったのが佐々木さんでよかった。

 心も体も佐々木さんに釘漬けだ。


 佐々木さんに全て奪われた今日は一生忘れられない日になった。



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 最後まで読んでいたたぎありがとうございます!


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 連載中の作品他にもあるので、時間ある時に覗いてもらえると嬉しいです!


 今後も頑張りますのでよろしくお願いします!

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