オルタナティブバース
@hajimari
第1話
「うおぉ!」
つい声がでてしまった。 人々や町並みはファンタジー世界そのままだったからだ。 それにそのリアルさは本物と見間違えそうだった。
「これが本当にゲームか......」
堂上
「こんなリアルなゲームなんて始めてだ...... 手足も自在に動く。 草木の匂いまで感じる。 さすがに人のにおいはしないけど......」
町を散策すると大勢の人たちの生活がリアルに感じる。
「ネームが緑、あれNPC《ノンプレイヤー》だよな。 AIだけどリアル過ぎて人間にしか見えないな......」
(MT《マインドトランスファー》技術で脳の電気信号をデータ変換してやり取りしてるのがちょっと怖いが...... いまのところ問題が起こったことはないからな)
「おい! 邪魔だ! どけNPC《ノンプレイヤーキャラクター》ども!」
町の人たちを威圧している剣を携えた集団がいる。 その腕には二つの頭の蛇のタトゥーがはいっていた。
(あれはネームが白、プレイヤーか...... NPC《ノンプレイヤー》相手とはいえよくできるな。 やっぱMMOのプレイヤーってこういうやつが多いのかな)
「まあ、気を取りなおして、とりあえず町のそとに行ってみよう」
もめるのもいやなので、そのまま町の外にでた。
「おお! 風まで感じる!」
草原にふく風は気持ちよかった。
「すごいな! たまたま応募したテストプレイヤーに当選するなんてラッキーだった。 あまり期待はしてなかったけど、これは予想を超える楽しさだ!」
そうおれはなんとなくメールがきたゲームの五期目のテストプレイヤーに応募して、このゲームに参加することができた。
「でも、あのメールなんか変だったな」
(『このゲームであなたの願いが叶います』ってかかれていた...... まあ別におれに願いなんてないけど......)
「まあいいか、ん?」
なにか草むらがうごいた。
草むらからひょっこりと牙のはえたウサギが現れる。 赤く【ファングラット】と表示された。
「モンスターだ! よし!」
おれは初期装備のナイフを握りしめかまえる。
ウサギはかなりの早さでこちらに跳ねとんできた。
「うお!」
転んでかわし、後ろから斬りつける。
ウサギは光になって消え、その場に牙と毛皮が残された。
「よしドロップした! 自在に動ける! いや、普段よりスムーズに動ける! 補正されているのか、すごいな!」
(さて、これから何をしようか? このゲームはメインのシナリオがあるけど、別に何をしてもいいらしいし...... あまり自由度が高いとなにしていいかわかんなくて、結局は飽きるんだけどな)
草原から森の方へあてもなくふらつく。
「まあ、このリアルさを普通に体験するだけでもいいか!」
久々にゲームを満喫していた。
(札束で殴りあう課金ソシャゲ、買いきりはほとんどリメイクやシリーズものばかりか、ゲーム性なんて皆無のビジュアルゲームしかないし退屈だからな。 まあ現実もだけど......)
「最近になって、この意識をデジタル化するMT《マインドトランスファー》技術などがでて期待したけど、動くのが楽しいのは最初だけ...... そのあとはだだっ広い単調なマップを歩かせられるいつもの量産ゲームだったし...... だけどこれは楽しい!」
(まあ、これもいつまでも楽しいかはわからないけど......)
「きゃああああ」
そう叫び声が聞こえる。
その方向に向かうと、少女が狼に追われていた。
「あれプレイヤーか! おれレベル1なんどけど...... これのデスペナってなにかな? 調べとくだったな...... チュートリアルスキップしたし、まあしゃあないか」
走って近づくと戦闘状態になり、【キラーウルフ】と表示された。 そのまま狼を横から斬りつけた。
「ギャウ!!」
狼は傷つきながらもこちらをかもうと大きな口を開いた。 大きな牙が光る。
「こわっ!! リアルすぎだろ!」
噛みつきをすんででかわすと、そのナイフを首へつきたてた。
「ギャワッ!!」
狼は地面に倒れもんどりうっている。 おれは何度かナイフをつきたてた。 すると狼は光の粒子となった。
「ふう...... やばかった。 おれのレベルだとさっきの一噛みで死ぬんじゃないの。 おっ! レベルがあがってる!」
はしゃいでいると、倒れた少女が目にはいる。
「ああ、そうだった」
近づいて揺さぶる。
「大丈夫?」
「う......」
少女はゆっくり薄目を開けたが、反応がうすくボーッとしている。
(ん? プレイヤーじゃないのか...... まさかNPCか? いやネームは白い、プレイヤーだ。 それにしてもリアルだな。 さすがに毛穴までは再現されてないが......)
そう思いながら抱き上げた少女の顔をみてると、その目がおおきく開いた。
「あの......」
「ああ、ごめん!」
おれはあわてて手を離した。
「助けてくれたの?」
「ま、まあね。 じゃあ」
おれはその場を離れようとする。
「ちょっと待って!」
「ん? なに」
「私、あまり戦闘は得意じゃなくって、少し一緒にいてもらえないかな」
(パーティーか...... 戦闘が不得意ってことは生産職かな。 でも正直、MMOのパーティーはなあ、ノルマとかミス、八つ当たりに口汚い罵倒をあびせられるのがな。 テスターに参加するぐらいMMOゲームになれてるなら厄介だな......)
少女はよくみると、とても可愛かった。
(で、でも、まあ今は取り立ててやることないし、いやなら抜ければいいもんな)
「じゃあ一緒に行こうか」
「うん!」
少女はそう元気にたちあがった。
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