第7話
「よし、これで準備は整った」
堀と塹壕を作り、木の柵も板の数と高さをのばし、装備も皆に行き渡る。
「もう三日目、おそらく侵攻してくるはず......」
サクトたちは塹壕内で身を屈めている。
「ウオウ!!」
見張りのゴブリンが走ってきた。
「来ました! 敵です」
サクトがそう叫んだ。
木々の間から、鎧をきこんだゴブリンたちが列をなして進んでくるのが見える。
「一方向からか」
「左右と後方の見張りが来ないのでおそらく、前方だけかと」
アプラがそういう。
「数はわからないか......」
「見える限りではおそらく200というところでしょうか」
ラタナがゴブリンから情報を得ていった。
「こちらは戦えるものが100か...... もし戦って怪我をしたら逃げるようにつたえてくれてるよね」
「はい、そのぐらいの意志疎通は行えますので、そうつたえております」
「堀に近づいてくる...... 限界までひきつけ、作戦通りにやるぞ」
ゴブリンからたちは堀にとまどっていたが、堀をおりてあがろうとしてくる。
「よし! サクト!」
「ボウガン隊、矢を放て!!」
サクトの身振りの指示でゴブリンたちはたちあがり、矢を放つ。
「ギャア!!」
「グワッ!!」
「ギャワ!!」
堀を越えたゴブリンたちは、降り注ぐ矢に混乱して、堀に落ちていく。
「よし! 近づいてボウガンを放て!」
ゴブリンたちと堀に近づくと、堀の中を上からボウガンで、さらに狙いうつ。
「ギャアア!」
「グオオ!!」
「よし! また塹壕に戻る!」
ゴブリンたちを塹壕へ引かせた。
「なにをしている!!」
堀の向こうで、すこし大型のゴブリンが怒鳴っている。
「あれが部隊長です!」
サクトがいう。
「あいつか」
「倒れているやつを盾にしてすすめ!」
そう部隊長がいうと、敵のゴブリンたちは倒れた仲間を持ち上げ、泥だらけで前へと進んでくる。
「仲間ごとかよ!」
「ゴブリンは彼らの奴隷です」
「堀を登って近づいてくる! 立ち上がって矢を放て!」
ゴブリンたちは矢を放つが、どんどん前へと進んで、木の柵を壊し始めた。
「つぎはアプラ、ラタナ!」
「はい! 盾隊!」
「槍、剣隊すすめ!」
大きな盾を持ったゴブリンたちが敵の侵攻をとめる。
そしてその後ろから槍と剣をもつゴブリンたちがすきをみて斬りかかる。 乱戦になった。
「サクト、ボウガン隊を空に向かって矢を!」
「はい!」
前で敵を倒して隙間があく、そこに矢をつがえたものたちが上に矢を放つ。 弓なりにとんだ矢は後方に当たっていく。
「前の兵も武具の差で優位に戦えています!」
「後ろの追撃してくる兵が矢にあたり倒れていきます!」
アプラとラタナがそう報告する。
「よし! これで......」
ドカアアアン!!
そのとき、上から炎が降ってきて前衛が吹き飛ばされる。
「なんだ!?」
「あの部隊長が魔法を使いました!」
堀の向こうにいたホブゴブリンが杖をもっている。
「仲間ごとかよ! アプラ、ラタナ温存していた魔法を!」
「はい!」
ラタナが地面をもりあげると、三人とおれは高い位置をとる。 アプラは前にすすむ兵に魔法をかけ、凍らせた。
「よし! サクト! 火球をやつに!」
「はい!! ファイアボール!」
「グァアアア!!」
サクトの魔法が部隊長にあたると、部隊長はよろけながら逃げようとする。
「まずい! 逃げようとしている」
「逃がすと報告されてしまいます!」
「だが、ここからでは矢も魔法も届かない!」
三人が慌てている。
「くっ、何とかしないと! なにかないか精霊ちゃん!」
『あなたの剣に魔力を込め投げれば届きます!』
「ぶっつけでやるしかないか!!!!」
剣に力をこめ部隊長になげる。 剣は光輝くと風を切りながら途中の木を貫通し部隊長を貫いた。
「ウオァァァ!!」
部隊長が倒れると、それに気づいたゴブリンたちは我先にと逃げ出した。
「やった...... いや、怪我人を!!」
「なんとか治療できた......」
おれは残りの力でみんなを治療した。
「被害は」
「十名程がなくなりました......」
サクトはそういう。
おれは外にでて横にならべられた遺体にちかづいた。 その冷たくなった姿をみてとても悲しくなる。
「......かわいそうに、おれがもつすこし力があれば......」
「いえ、マサトさまのおかげでここまで犠牲が少なかったのです」
「ええ、でなければ我々は全滅していました」
アプラとラタナはそういってくれた。 周りには敵のゴブリンの遺体も倒れている。
「相手の損害は」
「およそ100といったところでしょうか」
サクトが答える。
「この数だと埋葬も無理かな」
「うめるなら私の魔法で可能ですが...... ここにうめると死体の魔力からモンスターを呼び寄せたり、病気などが発生する恐れがあります」
「前のときもうめたしな。 なら燃やして...... も無駄が、普段はどうしているの?」
「遺体は遠くに捨てます。 動物やモンスターのエサになりますから......」
「相手のゴブリンはどうしてるの?」
「新鮮ならば食べますな」
サクトはそういった。
「食べるの!?」
「遺体にも魔力がのこりますゆえ、それを食べることで魔力を高めます。 ゴブリンキングたちはそうやって強くなっているのです。 ですので我々を殺して食べようとしているのですよ」
「それもあって執拗に攻撃してくるのか...... ということはサクトたちも?」
「いいえ、我らは、かつてすんでいるところに魔力を多く含む果実がありまして、それを食すうちホブゴブリンへと進化したのです」
「なるほど...... でもどっかに捨てると、そこのモンスターが強くなってしまうってことだよね」
「......まあそうなりますね」
ラタナはそう困ったような顔をした。
(精霊ちゃん...... なんかいい方法ない?)
『そうですね。 そのゴブリンたちを魔力にしてしまうというのは、どうでしょうか』
(魔力に?)
『ええ、あなたの力で魔力の結晶にすることが可能です。 それを他のゴブリン、武具の強化にも使えるでしょう』
おれはサクトたちにその話をした。 サクトたちはよく理解できないらしかったが、おれのやることならと了承してくれた。
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