第101話 これがざまぁ勇者が選んだ答えです

「さて、それではメイズ封印に協力してくれたあなたたち二人には、『ご褒美』を差し上げなければなりませんね」


「ご褒美? 何がもらえるんだ?」


「今度こそ、『正しい転生』の権利を差し上げます。それだけではありません。全てがあなたたちの思い通りになる、最高の世界へ召喚させてあげましょう。私たちの力も自由に使えます」


「…………」


 そういえば、そういう約束だった。

 間違ってざまぁをされる勇者へ召喚されてしまった俺。

 その間違いが、ついに解消される。


 それだけじゃない。

 そのお詫びとして、俺が望む最高の世界へ召喚されることができる。

 今度こそ、俺は本当のチート主人公として無双することができるのだ。

 これに承諾すれば、完全なハッピーエンドとなるわけなのだが……


「いや、遠慮しておくよ」


 俺はその案に乗らなかった。


「いいのですか? 現在のあなたは明らかに間違った転生をした状態です。本当の主人公になれなくて、良いのですか?」


「ああ、主人公になれるかどうかは自分自身で決める。俺は意外と今の状態が嫌いじゃなかったみたいだ」


 今ではもはやこんな転生もありなのでは? と思ってしまっているまである。


「ルビアはどうする?」


「あたしもやめとくよ。この世界が気に入った。ま、最初からあたしにとっては悪い世界じゃないだろうし」


「そうか」


 気に入った……か。

 結局はそこが全てなのだろう。

 俺も気付いたら、この世界が気に入ってしまっていた。


「ふふ、こんな人間がいたなんて……ねえ、メイズ。貴方が求めていた『本物』はここにあったのよ。貴方はもっとよく人間を見るべきだったわ」


 寂しそうな表情でネリーは空を見上げていた。


「さて。それでは私はここで失礼します。お騒がせして申し訳ありませんでした。良き異世界ライフを♪」


 そうして、ネリーは消えていった。

 まるで今回の事件の全てが夢であったかのように……

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