第99話 これが彼女が愛した悲劇の結末です
ネリーの介入によってメイズの顔が一気に青くなる。
「し、しまった。勇者どもに気を取られて、天使の接近に気付けなかった!」
「ええ。貴女は我々が介入できないように天界とこの世界の間に障壁を作っていた。でも、よほど焦っていたみたいですね? 障壁を破られても貴女は気付けなかった」
そうだった。
元々は『悪の天使に強烈なダメージを与えればいい』という依頼だった。
一度はメイズの体を爆散させている。
これは間違いなく『致命傷』と言えるレベルだろう。
それでメイズの張った障壁は弱体化できて、ネリーによるこの世界の介入が可能となったのだ。
「ずっとこのチャンスを待っていました。これで終わりです」
「ああああああああ!」
ネリーが手をかざした瞬間、メイズが球体のようなものに包まれた。
「おいたがすぎましたね? 大罪天使メイズさん。あなたは一万年ほど封印させてもらいますよ」
どうやら神の力でメイズを封印しようとしているらしい。
「い、一万年!? 嫌だ! そんなのは酷すぎる。助けて!」
子供のような泣きじゃくるメイズ。
いや、最初から奴は子供だったのかもしれない。
自分の作ったおもちゃが上手くできないから壊す。
天使らしくない未熟な精神だった。
「くそおお! お前らはいつもそうだ! つまらないんだよ! せっかく私が本物のシナリオを作ろうとしてやったのに! なぜ誰も『悲劇』の素晴らしさを理解しないんだ!?」
徐々に存在が薄れていくメイズ。
恐らくこの世界から消滅して、今から封印されるのだろう。
「あれ? どうして泣くんですか? これはあなたの『望み』そのものではありませんか」
「えっ!?」
「本物を目指して、頑張ってきたあなたは、結局は誰にも理解されず、封印されてしまう。これこそ、あなたが目指した『悲劇』でしょう。さあ、自らの悲劇を誇りに思いながら、消えなさい」
「……………………っ!」
消滅する瞬間、メイズは言葉にもできないような表情を俺たちに見せた。
ある意味では、彼女が最も人間らしかったのかもしれない。
本物を目指した天使は、自らの本物に飲まれて果てたのだ。
「やれやれ。本当に、いつまで子供の気分なのか。私たち天使にそんな感情は必要ないんですよ」
一仕事を終えたように息を吐くネリー。
同族の凶行について思う事はあったようだ。
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