第77話 いざ、ドルゴン砂漠です

「ああ、もう! 分かったよ。早く行こう!」


 真っ先にニーナ救出を名乗り出てくれたのは、意外にもルビアだった。


「ルビア……いいのか?」


「今度の今度こそ、やる気を出すのは最後だからね! あたしはやる気なしの悪役令嬢でいたいんだ。だから、これで決着をつける。オーケー?」


「ああ、サンキュー!」


 もう一度だけやる気を出してくれるらしい。

 素晴らしいボーナスチャンスだ。


「一応、こんな事が起きた時のために『秘策』があるんだよ」


「ま、まだ秘策があったのか!?」


「うん。ずっと仕込んでいた。でも、間に合うかどうか分からないから、あんまり期待しないでね」


 前回は小石型のトランシーバーを作ってくれていたルビア。

 今回の切り札はなんだろう?

 ルビアの目配せに、フィオナさんがトランシーバーを使って、どこかに指示を出し始めた。

 今回の秘策と関係あるのだろうか。


「ええ、もちろん今回も私がご一緒します。ルビア様が行く先が、私の行く先です」


 フィオナさんもついてきてくれる。

 気付いたら毎度お世話になってしまっているな。


「俺も行かせてもらうぜ」


 意外な人物が乗ってきた。

 それはキラーだった。


「あんたに借りを作るチャンスだからな!」


「死ぬかもしれないんだぞ」


「俺は死なねーよ。今の俺はついている!」


 ずいぶんと前向きだ。

 原作では、ほとんどモブのまま死んだんだが。

 だが、見習うべき部分でもある。

 『ざまぁ勇者』も負けてられない。


「俺はこの戦いが終わったら、結婚する! だから、絶対に勝つ!」


「それはよせ!!」


 思い切り死亡フラグを立てるキラー。

 もう、あからさますぎて逆に死なない気もした。


「まあ、恋人とか、いないけど」


「…………」


 死亡フラグ立てる前に恋人を作りなさい。


「セシリアとネネは残ってくれ。お店も大事だ」


「は、はい」


 流石にこの二人は連れていけない。危険すぎる。


「無事に戻ったら、パーティを開いてほしい。その準備を頼む。キラーじゃないが、楽しみが欲しいんだ」


「わかりました。無事に戻ってきてください」


「ああ!」


 俺たちのニーナ救出作戦が始まろうとしていた。

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