第76話 ざまぁはさせません!
「なあ、カイルは? 彼はどこにいるんだ?」
「カイル様ですか? 少し前まで町に滞在していたと思いますが……何か気になるんですか?」
「悪い、カイルの情報も集めてきてくれないか」
「しかし、今はそんな場合では……」
「頼む!」
俺の迫力に気押されるように押し黙るフィオナさん。
「わかりました。少々お待ちください」
カイルが何処へ行ったのか?
それによって事の重大性が一気に変わる。
ほどなくしてフィオナさんが帰ってきた。
今度はほんの数分ほどであった。
「あの……カイル様の居場所が分かりました」
相変わらず神速で仕事を終わらしたフィオナさんだが、その表情は何故か暗い。
「カイルは、まだこの町にいるのか?」
「いえ、既にこの町からは出ている模様です」
「どこへ向かったかは分かるか?」
「それが……」
言い淀むフィオナさん。
その反応を見て、俺はなんとなく想像がついてしまった。
「カイルは、ドルゴン砂漠へ向かったんだな?」
「は、はい。おっしゃる通りです。これはいったい……」
遺書めいた書置きをしてドルゴン砂漠へ向かったニーナ。
そして、同じくドルゴン砂漠へ向かっているカイル。
ここから導き出される答えは一つだ。
「まさか、カイルがニーナさんを襲うってこと!?」
「ああ、ニーナが危ない!」
このままでは『原作通り』になってしまう。
俺は助かった。
その理由は別人だったからだ。
だが、ニーナは違う。
彼女は正真正銘、カイル追放の原因を作った『本人』なのだ。
前にカイルが言っていた。
『本当の復讐はまだ終わっていない』
それはニーナの事を言っていたのだ。
確かに最初にカイルを騙したのはニーナだ。
確か原作ではわざと転んで助けてもらったカイルに『襲われた』と叫んで悪者に仕立て上げて追放の原因を作った。
でも、それは前のクソ勇者のせいだ。
あいつの命令だったんだ。
それが分かっていてもカイルの怒りは止まらないのだろう。
『命』で代償を支払わせようとしている。
しかも、ニーナはそれを受け入れるつもりだ。
そんなのは、納得がいかない!
ニーナだって生き残るんだ!
二人で生き残る。
そう約束したんだよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます