第68話 悪役令嬢VS主人公です?
カイルは俺から距離を取っている。
奴も警戒しているようだ。
俺がスライムの攻撃を防いだことじゃない。
俺のスキルの使い方に、面食らっているのだ。
「グロウ、貴様。そんな能力を隠し持っていたとは」
カイルは少し迷っているようだ。
手段を択ばない彼だが、それでも主人公だ。
そのプライドはある。
相手が本物の『悪人』ならば容赦なく殺害できる。
だが、そうでなければ、殺害での強奪は躊躇する。
それがカイルの生き方であり、プライドなのだ。
果たして、俺はどう判断されるか。
「本当に……今までの事は全て『テスト』だったのか?」
「いや、それは……」
勘違いです!
いつの間にか噂が変な方向へ広まってしまっただけです!
「だが、僕は貴様を許さない! 貴様が僕に何をしたのか、忘れたとは言わさんぞ!!!!」
だが、今のカイルには説明しても聞いてもらえないだろう。
『いまさら謝ってももう遅い』で頭を支配されてしまっている。
原作ではそこまで復讐に拘る性格じゃなかったのに。
もう既に彼は原作とはかけ離れた存在となってしまっているのかもしれない。
「ならば、今度は僕がテストしてやる! サラマンダー、ウンディーネ!」
カイルは更に2匹のモンスターを召喚した。
一匹は体全体が燃えている巨大な怪物。
全てを焼き尽くす神獣とも言えるレベルの魔人。
もう一匹は人型ではあるが、水色に染まった聖女だ。
その体中からは神秘の魔力が漏れている。
「精霊か」
最強の魔物使いのカイルは、神の眷属である精霊までもテイムすることができたのだ。
この2匹の強さはアビスちゃんさえ遥かに凌駕している。
ここからは『チート』の域に入るのだ。
「どうだ。この2匹の全力に耐えられるか?」
「それは…………無理だろうな」
「いい覚悟だ。では、後は祈るがいい」
流石のエクスカリバーでも、この二匹の全力を防ぐのは不可能だ。
「行け! サラマンダー、ウンディーネ」
両者の魔力量が最大まで上がっていく。放たれたらひとたまりもない。
やはり、ダメだったか。これが俺の運命か。
いまさら謝っても、もう……
「…………え?」
しかし次の瞬間、サラマンダーとウンディーネが放った魔力が掻き消えた。
「な、なんだと!?」
カイルからも動揺の声が聞こえてくる。
彼が止めたわけじゃない。
じゃあ、いったい誰がこんな事を?
いや、そんな事ができる人物は一人しかいない。
それにさっき打ち消した魔法は『ブラックホール・リゲイン』だ。
俺が知っている魔法だ。
まさか……
「まったく、騒がしいですわね」
優雅な声がその場に響く。
「ル、ルビア!?!?」
そこにいたのはちょっと優雅な雰囲気を出しているルビアであった。
「サラマンダーとウンディーネの魔力をキャンセルした? そんな馬鹿な。貴様、何者だ?」
「わたくしが何者か……ですって?」
そうしてルビアは口に手を当てて、高笑いするかのようにカイルの質問に答えた。
「わたくしは、ルビア。悪役令嬢でございます」
「な、なにぃぃぃぃぃ!?」
俺とカイルの声が重なる。
この悪役令嬢の乱入により、場は更に混乱を極めたのであった。
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