君と僕の甘やかな日常

はる

第1話 スカート丈

 これは俺の個人的な所感なのだが、小柴綾音のスカート丈は少し短い。だからなんなのだと言われればそれまでなのだが、彼女のキャラクターとその短さに相関がないような気がする。なんというか……真面目な生徒なのになんでだろうという話だ。断じてそれがいいよな、なんていうつもりはない。あくまで疑問として……。

「けーんじ、おっは。何小柴さんのふとももジロジロ見てんの?」

「声が大きい! いや、不埒な理由からではない。なぜ彼女のスカート丈が短いのだろうと思っていただけだ」

「不埒だねぇ」

 クスクスと笑うコイツは友人の雨宮悠というちゃらんぽらんな人間だ。

「もしかして研二、小柴さんのこと好きなの?」

「は! いや、そんなはずは」

「まぁ、研二なら好きになりそう」

「なんだよそれ」

「人は自分にないものを求めるからね。小柴さんは成績優秀でおとなしい優等生」

「何が言いたい」

「なーんにも?」

 頭の後ろで手を組んでそっぽを向く雨宮。いつか千切りにしてやろうと思う。

「へー、ついに研二にも春が来たかぁ」

「よぉ! おはよさん」

 そこに現れたのは、元ガキ大将の板垣唯斗である。

「唯斗おはよー」

「なんだコソコソと。猥談か?」

「最初は猥談だったね〜」

「猥談じゃない。純情な話だ」

「へぇ! いつもの与太話じゃないなんて珍しいな」

「俺たちをなんだと思ってるんだ」

 ガハハと板垣が笑う。コイツは万事につけ笑ったらなんでも解決すると思っている。

「研二の春の話だよ」

「春? 恋か?」

「なんでそんなツーカーなんだよ」

「そうか、研二もついに……」

 くっと目頭を押さえる板垣。

「誰だよ、教えろよ」

「小柴さんだよ」

「おい」

「小柴……またこのクラスのエンジェルを……」

「確かに、小柴さんはエンジェルだねぇ」

 二人で頷き合っている。

「そうか?」

「派手な可愛さはないけど、純真で雰囲気がほわほわしててさ」

「賢いのにそれをひけらかさない謙虚さ」

「まさにエンジェル」

「なるほどな……」

「逆に研二は小柴さんのどこが好きなのさ」

「それは……たまに美術の授業で喋って、それで……」

「あの小柴さんと言葉を交わしているだと!?」

「落ち着け唯斗!」

 暴れ出す板垣とそれを押さえる雨宮。アホだ。心なしか、小柴さんのグループがこっちをじっと見つめている気がする。大方アホだと思われているのだろうが、俺はドキドキした。

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