女盗賊ムスクティール
ノゾムが王宮の入り口に着くとガーディガン騎士団長がソワソワしながら待っていた。
「ノゾム殿、急な呼び出し申し訳ない。どうぞこちらに」
ガーディガンはノゾムに会って早々に歩き始めた。ノゾムも休憩も無くついて行く。
「いったい何があったのですか?」
「女盗賊ムクスティールが王宮に侵入した痕跡があったのです」
女盗賊ムクスティール、各国を股に掛けて盗みを繰り返す神出鬼没の女盗賊である。各地の貴族の屋敷、王城、研究機関に侵入しては貴重な魔導書を盗む。そして盗んだ後は必ず挑発する為その姿を現す。マスクをしている為顔は分からないがその姿を見た者は数知れず、しかし未だ逮捕に至っていない。
「姿が分かっているのに何故捕まえられないのですか?」
「ムスクティールは変装の達人であり、給仕、使用人、令嬢、様々な身分に化けているのだ。いつも挑発する時初めて誰に変装していた事が分かるのだ」
「なるほど」
「そして今回遂に犯行を行う前にムスクティールの侵入に気付けたのだ」
「それはいったい何故?」
ガーディガンはニヤリと笑った。
「ムスクティールの侵入方法は出入りする業者の荷物に紛れ込むんだ。そしてその人を襲って変装する。襲った人間は自身が入っていた箱や樽に入れて隠しておくんだ。今回偶然にも樽に隠されていた商人の娘さんの発見が早くて直ぐに厳戒体勢をとったのだ」
「そして今もムスクティールは王宮の中にいると」
「その筈だ。なにしろ奴は盗みが成功すると必ずやその姿を見せつけて挑発するからな」
ガーディガンは必ずや捕まえてやると意気込んでおり気合いが入っている。二人は早足で王宮内を歩いていく。
「ちなみ今は何処に向かっているのですか?」
「王宮図書館だ。貴重な蔵書が多くあり、奴が狙うであろう魔導書も保管されている。だから今は図書館を封鎖して中にいた人達を出れない様にしている」
「まだ図書館に侵入していない可能性は?」
「樽が見つかった場所から図書館までの部屋は隈なく探した、それでも発見できなかった。それ以外の通路は兵士が立っており誰も通って無いと言うんだ」
「図書館にいる人間に変装して潜伏するしか選択肢がない」
「そうだ」
「それなら直ぐに見つかったのでは?」
「それがそうもいかないのだ」
二人は王宮図書館の前についた。そこには多くの兵士が入り口を固めていて中に入らない様に塞いでいた。
ガーディガンを見た兵士は敬礼し報告をした。
「どうぞお入り下さい。誰一人出しておりません」
二人は図書館に入った。そこには多くの女学生がいた。その他にも図書館を利用している人間もいた。
「ご覧の通りだ。王宮図書館は申請さえあれば利用できる。今日は三十人もの魔導女学院の学生が利用していたのだ」
「確かにこれでは誰がムスクティールか分かりませんね」
「他にも司書や清掃に来た使用人の女性もいて特定できないのだ」
「なるほどこれは骨が折れそうですね」
ノゾムは笑った。その笑みはこの状況を楽しんでいる様であった。
ノゾムはモノクルを外して綺麗に拭いた。これから調査の開始である。
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