その時、すべすべとした肌の木が私の指を捉えました。

その滑らかな表面は蛇の表皮のように冷たく、どくんどくんと音を立てて脈動しています。


嗚呼、私はついに見つけたのです。


私の木は祠から少し離れたところにありました。

山の斜面の際にある、なかば根がむき出しになっている木です。

私はその木に登りました。私の願いをできるだけ高い所、神に近い所に届けたかったのです。

木登りなんて子供の頃にもしたことがありません。ですが、必要なことならなんだってします。

つるつるの木には、低い場所に枝がなく、あっても手にした途端ポキリと折れてしまうような細い枝しかなかったので、幹にしがみつく自分の手足の力だけで体重を支えてよじ登っていかなくてはなりません。

難しいことでしたが、なんとかしました。


簡単に願いが叶うなんて思ってません。

私は痛みを引き受けます。


自分の体の重みで幹がたわむまで登り、もうこれ以上は無理そうだと思ってはじめて、ゼイゼイと息があがって苦しいことに気がつきました。

私はぴったり木にしがみついて息を整えました。

そうしているうちに私の呼吸と木の呼吸とが混ざり合い、練りあがって、闇に滴りました。


私は私の木に猫を固定しました。

猫は薬のせいでまだ気絶しています。

ぐったりと柔らかい体がずれ落ちたりしないようにしっかりとガムテープで張りました。

そして。

猫の左目に釘を構え、金槌を打ち下ろしました。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る