蚊の一生

一の八

蚊の一生



7月の夕暮れ

暑さがどんどん身体に沁みてくるこの季節


やつは現れた。


そう。それが「蚊」だ!


いつも如く静かに俺の腕に近づいた。


気づかれないと思っているかもしれないが、俺はしっかりと見てるぞ。


絶好のポイントを見つけたと、

腕の位置を確認して、いざ針を刺そうと試みるも刺さらない。


なぜなら、ずっと力入れてるからな。


ポイントを探す為に

何度も何度も場所を変えて、

試みるも針が刺さらない。


ずっと力を入れてるからな。


でも、その姿をずっと見ていたら何だか切なくなった。


前にテレビで見た話だと、

血を吸う蚊は、メスだけらしい。

なぜなら、その血を子供にあげる為だと


ものすごい健気ではないか。


しかし、わたしも痒いのが嫌なので

「パンっ」と静かに最後の別れをした。


なんだかこんな風に自分もあるかなと思うと、切なくなった。



網戸の向こうでは、スズムシの音が聞こえた。

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蚊の一生 一の八 @hanbag

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