第21話 聖なる液体
タタラはサンボを後ろに乗せてアジトに戻った。
到着するなり大声で言う。
「サンボがやられた!! 手を貸せ!!」
その声ですぐさま仲間が集まり、サンボを担架に乗せて洞窟の奥へと運ぶ。
「タタラさーん!!」
「なんだダリィ? サンボが負傷したんだ。しょうもない話だったらぶっ飛ばすぞ!?」
「嘘でしょ!? サンボさんが!? でもこっちもヤバそうですよ……?」
そう言ってダリィが差し出した新聞の見出しにはこうあった。
『二アレスト王に
「残党狩りか……想定内だ」
「その下ですよ!! ほら……」
ダリィが指で示す場所にはさらにこう続けられていた。
『志願兵に紛れた怪しい男が逃走。市民からの情報で男はタンタラス盗賊団の参謀と判明』
「なっ!? なんだこれ!?」
タタラが思わず声を漏らすと後ろからひょこりとエルモアが覗き込んで言った。
「あらあら……これは由々しき事態ですわ……タンタラス親衛隊が反乱軍に鞍替えした可能性があります……」
「タンタラス親衛隊!? かっけぇ……」
間抜けな声で言うダリィをタタラが殴って黙らせる。
「まさか……」
「当然ファンクラブですわ♪ サンボ様は人気No.2です!!」
エルモアのVサインとドヤ顔を見たタタラが頭を抱える。
「スミマセン……タタラさん……俺がしくじったせいで……ここに留まるのはマズイ……俺は大丈夫です。すぐに出発しましょう……」
ベッドからサンボの声がして、三人は振り返った。
「馬鹿野郎。いつも言ってるだろ。正義は足元からだ。仲間も大事に出来ないようじゃ、正義を広めるなんてのは夢のまた夢だ」
「お頭ぁ……」
「お頭って呼ぶんじゃねえよ」
二人の熱い友情を涎を垂らして見つめていたエルモアだったが、ふと何かを思い出したようにサンボの脇に駆け寄った。
「ちょっと失礼……」
そう言ってサンボの服をまくり上げる。
「おい!?」
「ぐへへぇ……No.2の逞しいシックスパック……じゃなかった。ペッペ!!」
エルモアはサンボの傷跡に唾液を吐くと天に両手を上げた。
皆の視線がエルモアの露わになった脇の下に集まる中、エルモアは朗々と祈りの文言を詠み上げた。
「癒やしの御手、わたしを見て、治癒の唇、ちゅうの唇、今高らかに宣言する!! 汝の傷は癒やされた!!」
掲げた両手をサンボの傷口に向けてエルモアが叫ぶ。
「
傷口が光に包まれ閉じていく。
サンボは驚愕の顔を浮かべて傷口に触れた。
ぬる……
そこには確かに聖女の唾液がついていた……
「すげえ……治ってる……!?」
「エルモア!! お前回復魔法が使えるのか!?」
タタラは思わずエルモアの両肩を掴んで叫んだ。
エルモアは頬を染めて目を逸らすと恥ずかしそうに呟いた。
「唾液ならこれくらいです……他の液ならもっとすごいんですよ……?」
「……聞いてねえよ……」
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