第11話 恋路


 タタラの言霊に魔力が重なり何もない空間に文字列が現れた。

 

 街を破壊しながら突き進むベヒモスに黒紫色の文字列が鎖のように絡みつく。

 

 ずしぃぃ……ん……



 超重力の鎖と化した言霊に縛られ、ベヒモスの動きが止まった。

 

 それでも地面に四本の足を踏ん張り、ベヒモスはギリギリと超重力に耐えている。

 

「ベヒモス!! 話を聞いてくれ!! この人は恋人なんかじゃない!!」

 

「そうですわ!! 将来を誓いあったフィアンセです!!」

 

バルバルゴラァぁあああああ何ですってぇえええええ!?」

 

「余計なこと言ってんじゃねぇええ!?」

 

「ふふふ……恋のライバルに情は無用なのです……」

 

「マジでこの世界の聖女どうなってんだよ!? 頭腐ってんのか!?」

 

「腐女子……確かにそう自認しておりますわ」

 

「ほーりーしぃぃぃぃっっと!! この世界に普通を期待した俺が馬鹿だった……!!」

 

BARUBARUBUHIHINNわたしというものがありながら!! HUGOOOOOO本当はそんな色白が!! PUGAAAAAAA好みだったのね!?」

 

 超重力の鎖を引き千切らん勢いでベヒモスが雄叫びをあげる。

 

 ちらりとそれを見たエルモアはプッっと吹き出し言った。

 

「あらあら紫の猪豚さんがお怒りですわ? プギプギ?」

 

「やめろ!! お煽るな!! 死にたいのか!?」

 

「タタラ様がいれば無問題ですわ!! 一度は勝って調伏してるんでしょう?」

 

 タタラは冷や汗を流して言った。

 

「いや……ベヒモスを倒したことは一度もない……」

 

「へ?」

 

「ベヒモスはヘルマントルの洞窟に住む特殊生物だ……本来なら超重力下でしか生存できない……キャサリンは育児放棄で洞窟の外に放り出されてた。それを俺が重力魔法で保護して育てた……」


「つまり……?」


「重力魔法はほとんど効果が無いってことだ……!!」



 バキンッ……!!

 

 甲高い金属音が響き二人が振り返ると、怒りの炎を身にまとったがニタァ…と笑みを浮かべていた。

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