How to Chess 4
7.リン・アーデン
ここで少し、チェスの歴史についてふれてみましょう。
チェスはもともと、二千年くらい前から西大陸を中心に発達したゲームです。
遠くいにしえ、西大陸では、一人の王が大陸の全ての国の盟主となった時代がありました。
彼はどの書物でもたいてい青年王と呼ばれています。
青年王を王位につかせて、王の偉業を支えたのは、紅目白髪の不老の魔術師でした。
かの者の名はリン・アーデンといい、“アルビノの魔術師”という呼び名で有名な、歴史上で最も強大な魔力を持った魔術師でした。
青年王が西大陸に均衡をもたらした時、リン・アーデンは、年に一度、西大陸に当時百五十あった城の王や領主たちが参加する、武術や魔法を使うゲーム形式の練習試合を作り上げました。
このゲームは、八×八の市松模様の盤と三十二の駒を使う、西大陸では古くからある一般的なボードゲームを元にしていました。
しかし盤上のゲームとは少し違って、プレイヤーは三十二人おり、参加者は自由に自分の冒険ができるのでした。
これが“チェス”です。
かの魔術師は、このゲームに、いくつか不思議な魔術を施しました。
その代表作は、“騎士も他国では桃尻になる”です。
ポーンは、誰にでもなれる職業です。
例えば、もともと騎士だった者も他国出身であれば、ポーンとしてチェスに参加できます。(ちなみに、ナイトになることができるのは、自国の騎士のみです)
今まで乗馬が得意だったそのポーンの騎士は、ゲームが始まると、どんなに心が通じあった愛馬であっても落馬してしまいます。
これは、アルビノの魔術師の編んだ魔術のためだといわれています。
もちろん、ゲームが終わるか、その騎士のクロスがなくなると、元通りになります。
不思議な魔術は、まだこの他にもたくさんあると言われていますが、全てゲーム自体を公平にするものか、もしくは何の害もありません。
チェスプレイヤーたちは、魔術師の施した魔術を探求し、それに遭遇することも、冒険心をくすぐる一つの楽しみとしています。
余談ですが、たいてい他国の騎士がポーンになった時は、その騎士はゲームの間ずっと愛馬とともに、徒歩で旅をするのがほとんどだそうです。
8.ゲームの終了
さてそれでは最後にゲームの決着についてお話しましょう。
プレイヤーが、相手側のキングのいる王の間に踏み入れることを、“チェック”と言いました。
この時、チェックをかけられた側のプレイヤーは、
1.王の間を守備していた他のプレイヤーがいる場合、その者がキングを守るために戦う。
2.キングが目覚めて“試合”をする。
という二つの選択肢があります。
どちらが有利かを判断するのは、今までゲーム全体を夢で見て、一番状況を把握しているキングです。
キングは、自分が戦うことを選ぶ時、自ら目覚めます。
王の間に入ったプレイヤーは、キングが目覚めた時に、相手の王に自分の得意な方法と、自由な人数で試合を挑む権利があります。
この時キングは、己のクロスを賭けて、挑戦を一人で受けて立ちます。
チェックをかけた側が、気を付けなければならないことは、「夜は移動も攻撃も試合もできない」という、チェスのルールです。
その日のうちに試合の決着がつかなかった場合、挑戦者は一度、王城から退去しなければなりません。
そうなると、チェックが外されたと見なされ、試合はやり直しとなります。
そういうわけですので、チェックをかける時は、王の間に他の守備プレイヤーがいないことと、できるだけその日のうちに、もしくは短期間で、試合の決着がつくように注意しなければなりません。
キングに勝つためには、必ず自分が勝てるという自信のある技を持つ者が王の間に入る方が、有利だということになります。
キングはこうなると、どうしてもチェックを抜け出すことができなくなります。
また、複数のプレイヤーに包囲されてしまっても、チェックを外せません。
そのように、キングが挑まれた試合に勝てない状態を“チェックメイト”といいます。
つまりチェスというのは、チェックメイトを目指すゲームなのです。
さてこれでチェスに必要なルールは紹介しました。
後は実践を積んで、その場その場のノウハウをつかむのが一番です。
では、チェスの世界をじっくり楽しんでみて下さい。
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